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見覚えのある場所

 ようやく勢いよく崩れていた岩の崩落が収まり、グリルを先頭にして天井から岩が落ちて来ないかを確認しながら、壁の向こうに慎重にすすんだ。


「んん?この岩たち、あちこち焦げていますね。なにがあったのでしょうか」


 通路の中に転がる赤味がかった岩には、所々黒く燻んでいる部分が見て取れた。


「しばらく来ていなかったからなぁ。今回ここに来ることができて良かったかもな」


「ですね」


 短いトンネルを抜けたそこには、社会の資料集で見たことがある、ギリシャの神殿のような白い円柱が左右に3本ずつ建っていた。そしてその根元には〈炎帝イフリートの微笑み〉の細やかな花の彫刻が施されて居る。


「うわぁ……なにあれ」


「スゲェ……!」


 白い柱の周りには、〈炎帝イフリートの微笑み〉が咲き乱れている。あまりにも綺麗なその光景に、二人は驚きの声をあげた。


「綺麗だろ?元々ここは火部隊と地部隊の入隊式に使っているところなんだ」


「火と土の元素がたくさんありますから、魔法の鍛練にももってこいなのです」


 焦げ跡が有る岩の状態を調べていたグリルとジルビアが追いつき、自慢げに胸を張って言った。


「向こうには何があるのかな……」


「行ってみようぜ!」


「端まで行くと危ないからな、気をつけろよ」


 駆け出した二人にグリルが注意をする。大して広くもない場所だし、奥は岩の壁がある。何が危険だというのだと二人は思ったが、すぐにその理由がわかった。


「ちょっと、待ってこれ……」


 岩壁があると思ったそこには壁と床が無かった。それに気づいた二人は慌てて足を止めた。


 そしておそるおそるその先に進んで下を見てみると、ボコボコと音を立てながら、明々と輝くドロドロに溶けたマグマが流れている光景が目に入ってきた。

 マグマを見ているだけでも顔面が焼けるように熱い。かれんと志田はここがなぜこんなに熱いのかを瞬時に理解した。


 しかもここには柵なんていうものはついていないため、うっかり足をすべせたら一巻の終わりだ。二人はおそおそる後ずさり、花畑で待つグリルたちの元へと戻った。


「すげ、マグマなんて俺初めて見たよ!」


「私もだよ……」


 マグマを近くで見たことがある小学生は中々いないんじゃないだろうか、むしろ自分たちしかいないだろう、とかれんは唸った。


 ここに来るまでは、こんなに危険な場所だなんて知らなかったし、知らされてもいない。


 だけど、こんな危険な場所だけど、どこか初めてではない、むしろ懐かしい感覚がかれんの中に渦巻いていた。


「でも私、ここ知っている気がする」


「俺も……なんでだろ……」


「志田くんも?!」


 予想外の志田の答えにかれんは弾かれるように彼を見た。


「うん……でも……」


 志田もかれんの方を見てそれから地面、横にある壁、天井の岩に視線を移した。かれんもその視線を追うと、所々に先ほど抜けてきた通路と同じような焦げた跡が残る岩が目に入った。

 よく見ると白い柱にも黒い跡が波線のようについている。

 塞がれていた場所にあった岩といい、周囲の岩壁、柱と天井にも有る焦げた跡。

何かが走り抜けたような跡だ。


「なんだか、俺、ここに長く居たくない」


 眉間にしわを寄せて両腕をさすりながら志田が首を振った。

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