クリスタルの花
何度消しても消えずにまた現れる炎と、下から突き上げる揺れはどちらも収まる気配はない。
「ミレイ、ナイト!!」
透明な羽を羽ばたかせながらフレイズが修練場に到着した。
床の裂け目から時々飛び出す炎を避けて美玲と市原の元にたどり着いた。
「ナイト、怪我してるのか。待ってて」
そう言ってフレイズは市原の傷口に手をかざした。
「う……」
淡い緑の光が市原の火傷の部分にまとわりつきながら消えていく。美玲がこちらに来たばかりの時、アイーグにつけられた傷を治してくれた時と同じ魔法だ。
「何事ですか、これは……!」
騒ぎを聞きつけたのか、トルトまで各部隊長を率いてやってきた。
修練場の惨状を目の当たりにしたその表情は険しく、困惑しているのが見て取れた。
「セレイルさん、ベルナールさん……!」
「大丈夫かい、ミレイちゃん」
セレイルの問いかけに押さえつけていた不安が心を押し上げて、少し涙がこぼれたが、それを手首で拭って大丈夫だと頷いた。
「さあ、みなさん、いきますよ!」
トルトが杖を振り上げ、気を取り直すかのように声を張り上げた。四元騎士団の隊長たちもトルトに倣い自分たちの武器を掲げた。
「全ての元素を一つに!鎮めよ!虹牢獄氷床!」
トルトが唱えると、杖に飾られた濃いピンク色の宝珠が輝きを増していく。
隊長たちの武器もそれに共鳴するように光り、どこからか強い風もまきおこってきた。
割れた石の床から這い出てきた蕾が開き、透き通った花びらを広げる。
虹色に光る、大輪のクリスタルの花だ。
そしてその花はちょうど向かってきた炎をパクリと捕まえ、閉じるとその花の中に閉じ込めてしまった。
それから花の根元からもクリスタルが蔦のように伸びて、ひび割れた大地はすべてクリスタルの蔦に覆われ、炎が吹き上がることも、石の床が割れることもなくなった。修練場にようやく静けさが戻った。
だが花の中に捉えられた炎は、まるで生き物のようにここから出せと暴れている。
「さすが炎帝の炎。荒々しく、力強い。ですが……!」
トルトが手のひらを花に向け、握るような仕草をした途端、クリスタルの花は砕け散り、中に入っていた炎も消滅した。
「志田、火はもう消えたよ。大丈夫だ」
座り込んで震えている志田に、市原が声をかけたが、志田はまだおびえた表情で、恐る恐る震えたままたちあがった。
「さて、改めてお聞きしますが……、これはどういうことすか?何があったのです」
トルトが子ども達に向き直り、困惑した顔で問いかけた。





