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魔力の共鳴

かれんの混乱に影響されているのか、バトンの先端から飛び出した炎は修練場内を舞い踊り、馳け廻っている。


幸いなことに修練場の壁や床は石でできているため、火事になることは無いだろう。だが早く消してしまわないと危険だ。


水の魔法で打ち消そうにもものすごい速さで動き回る炎の球に狙いを定めるのは難しい。


「かれん、落ち着いて、大丈夫だから」


だから術者であるかれんを落ち着かせれば炎も落ち着くだろう、と美玲は考えた。


「永倉!」


うずくまったかれんの背中をさすって落ち着かせながら声をかけていると、市原の悲鳴にも近い呼び声がした。


驚いて振り向くと壁に反射した炎の球が美玲とかれんに向かってきていた。


予想外の早さで向かってくる炎の球に、魔法を使う暇も、水皇セイレーンを呼び出す間もない。


美玲はかれんを守るようにきつく抱きしめた。


「市原君!」


「市原!」


肩越しにかれんの悲鳴と志田の怒鳴り声が重なる。炎の熱と衝撃が来ると構えていた美玲は恐る恐る振り返った。


「ごめんなさい、市原くん、私……っ!」


そこには床にうずくまっている市原の姿があり、その代わりに部屋を駆け回っていた炎の球が消えていた。


「市………原………?」


驚いた美玲の腕から抜け出たかれんを追い、二人揃って震えながら市原の元にたどり着き、その傷口に言葉を失った。


両腕をクロスし、風の精霊石の力で炎を防御しようとしたのだろう。炎が当たった両腕は火傷を負い、皮が赤くなって水ぶくれができていた。


「市原……!」


「市原君、ごめんなさい………!ごめんなさい!!」


「久瀬、俺は平気だから 」


何度も頭を下げて謝るかれんにそう言いつつも、痛みに眉をしかめる。


「ごめんなさ……ごめんなさい……っ!」


かれんの周りから火の粉が次々に舞い、それらは合わさって大きな火球に変化していくのが見えた。


「かれん、落ち着いて!」


「本当に私、こんなことになるなんて………」


周りを囲む揺らめく熱気に、騎士団の的の人形から煙が上がり、あっという間に火の手が上がった。

美玲と市原は焦げ臭い匂いに眉をしかめ、鼻と口を袖で覆った。


「……っ、火………?!」


「志田?!」


「うわァアああああっ!!!」


それを見た途端、志田が突然混乱したようにわめきだし、頭をかきむしり始めた。


志田の混乱に地属性の力も乱れ始め、彼を中心にメキメキと音を立てて周囲の床がひび割れていく。


「ああ………、熱い、熱い熱い熱いっ!」


「志田君……っ、ごめんなさい………!!」


ズシン、ズシンと重たい揺れが何度も発生し、壁にも亀裂を作っていく。

美玲は立っていられず、よろめいて尻餅をついた。

そしてその間を炎が埋め、あたりは火の海となった。


「うわぁあああああ火がっ!怖い、怖い!!」


志田の尋常でない火を怖がるか様子と、かれんの怯えように美玲も市原もなすすべがなかった。


水皇セイレーン!」


とにかく火を消そうと召喚し、水皇セイレーンが鉾を掲げて雨を降らせる。

床の裂け目から噴き出していた炎は消され、一安心したのもつかの間だった。

消えたと思った炎はすぐに元気を取り戻し、裂け目から吹き上がってきたのだ。


何度消し去っても炎は再び姿を現し、きりがない。


「なんで………?!」


「ごめんなさい………」


炎から身を守る水の膜をそれぞれに張るのが精一杯で、水皇セイレーンも途方に暮れているように見える。


美玲は混乱するかれんと志田、それから修練場の惨状にどうしたらいいかわからず、ただ荒れ狂う火と砕ける石の床に呆然として動けずにいた。


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