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騎士団の修練場

騎士団の許可を得たポワンに連れられ、美玲たちは城の離れにある騎士団の修練場に来ていた。


そこの広さは学校のグラウンドほどあり、土壁には訓練用の剣や弓、隅には何に使うのかわからないが様々な道具が置かれているそこは、まるで体育用具室のような匂いがある場所だ。


いい匂いではないが学校の体育用具室を思い出し、四人の中で帰りたい気持ちが強くなる。


「では私はこれで。また終わる頃お呼びください」


修練場の当番をしている妖精騎士にそう言い、別の仕事があるからとポワンは栗色の髪を揺らしながら修練場を出て行った。


ポワンを見送り、美玲たちは辺りを興味深げに見渡しながら中央にある台にゆっくりと上がった。


体育館のステージより低い、三段しかない小さな階段を上ったところの白い大理石で作られた床には、騎士たちの修練の跡だろうか。傷が所々についている。


「転んだら痛そうだな」


床の硬さを確認するように、志田がつま先でトントンと床を叩く。


「魔法の練習なんだから、転ばないだろ」


走るわけでもないし、と市原が入っていると、ガラガラと騎士が木の板で作られた人形の様なものを引いてやってきた。


「的が必要でしたら、こちらをお使いください」


少し不気味なその板を、お礼を言って受け取ると美玲と市原が先生役になり、魔法の授業が始まった。


「集中するとね、頭の中に言葉が浮かんでくるの。その言葉を言えばいいんだよ。見てて」


美玲は目を閉じて深呼吸した。つま先からシュワシュワとサイダーの泡が昇るような、少しくすぐったい感覚が昇ってくる。


周囲の水の元素が反応して、泡がはじける感覚に包まれる。


それと同時に水色の精霊石が光り始めた。


光はだんだんと強くなり、眩しくなる。



水激流アクアエ・フェローチェ!」


美玲が唱えると、バケツをひっくり返したような水が的に向けて天井から降り注いだ。


「次は俺が。見てろよ〜、風射撃ヴェントス・シュート!」


市原も唱えると、リストバンドの精霊石が輝き、風の矢が的に命中する。騎士団の持ち物を壊したらどうしようかという不安があったが、的の木の人形は無事だった。


そもそも室内で派手な魔法は使わないほうがいいだろう。


「集中……」


志田とかれんは目を閉じ、集中し始めた。


志田のグローブに飾られた精霊石と、かれんのバトンの先端にある精霊石が光り始めた。


「言葉……これか!地王ランド!」


「え??」


「は?」


美玲と市原が驚く間もなく、地王ランドが現れた。


「なんだこれ!でかいトカゲ!!カッケー!!」


攻撃魔法でなく、上級精霊ハイクラス・スピリットが出てくるとは二人も想像しなかった。


淡く黄色に輝く巨体の地王は優しげな瞳で志田を見つめている。そして光の粒子を残し、姿を消した。


「何あれ?なんなん?」


「志田の力、地の力を司る地王ランドだよ」


興奮気味に市原の肩を揺さぶる志田に、されるがままになっている市原が説明をした。


今までジャニファの力に操られていた志田が自分の意思で地王ランドを召喚できるようになった。

それにより地王ランドも自由になり、志田との意思の疎通もできるようになったのが地王ランド自身も嬉しかったのだろう。


地王ランド!スゲー!!なんかじいちゃんみたいな声でよろしくって言ってた!!俺魔法使っちゃったよ!!」


まだ興奮が冷めない様子の志田は市原に任せ、美玲はかれんの様子がおかしいことに気がついた。


「なに、これ……頭の中に、女の人の声が、言葉が……」


「どうしたの?かれん、大丈夫?落ち着いて」


かれんは青ざめた顔をして美玲を振り返る。

女の人というのは、おそらく炎帝イフリートだろうと見当がついた。彼女も地王ランドのようにかれんの力で現れたいのだろう。


「変だよ、美玲、こんなの変!私の口、勝手に……、口が勝手に動こうとしてるの」


口を押さえてかれんは首を振る。


「大丈夫だよ。その通りに言ってみて」


美玲はかれんの取り乱し様に驚いたが、肩を掴んで何とか落ち着かせようとする。


「久瀬、どうしたんだ?大丈夫か?」


市原も様子が同じいことに気づいて駆け寄ってきた。彼の奥にはまだ「地王カッケー」と興奮している志田が見える。


「やだよ、こんなの変だよ…!怖い…こわいこわいこわい、怖い!やだ…!」


「かれん、落ち着いて、大丈夫だから」


「嫌だ、いやあっ気持ち悪いっ!」


だが美玲の手をはねのけ、ついにかれんは耳まで塞いでしゃがみ込んでしまった。

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