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ドクダミパニック

何とか吐き出そうとペッペとしている男子と、この世の終わりのような顔をした女子。

和やかに進みそうだったティータイムは一気に雰囲気が変わってしまった。


「皆様落ち着いてください、ドクダミという名前ですが、毒はありませんよ」


トルトが苦笑して訂正するが、信じていいのかわからず、美玲は半泣きの顔で壁際に立つフレイズの方を見た。


彼は美玲の近くに来ると、安心させるように微笑み、頭を撫でてから美玲が飲み残したティーカップのお茶を飲んで見せた。


「あっ!」


それを見て男子たちが声を上げた。


「大丈夫だよ。ドクダミはお薬にもなるお茶なんだ」


そしてそういうと、またカップを傾け一気に飲み干した。


しばらく様子を伺っていたが、何も起こる気配もない。飲んでしまった美玲たちも具合が悪くなる様子はなかった。


「なんだ、大丈夫なやつなんだ……」


「すみません、カップをもう一つ」


そしてフレイズは給仕をしていたポワンに頼み、自分のカップをワゴンに戻し、壁際に戻った。


すぐに美玲の元に新しいお茶が運ばれてきた。


「見た?」


「見た」


「何なの」


志田と市原が興奮したように美玲を見てこそこそと話している。

イラっとして聞くと、赤い顔でかれんがボソッとつぶやいた。


「間接キス……したね」


「は?!え?あ!!!」


指摘されて初めて気がつき、ほっぺがかあっと熱くなった。


「ていうか、そんなんじゃないと思うし、やめてよ!!」


男子たちは面白がっているし、かれんはうっとりとしたかおで、少し羨ましそうに美玲を見つめてくる。


ただ一番端に座っていた美玲が壁際のフレイズから一番近かっただけだから、彼は美玲のカップを使ったのだとおもうのに。


「もー、やめてったら!!」


周りにあまり言われると、フレイズのことを変に意識してしまいそうになるから、大声を出してやめるように言う。


だが他の三人はニヤニヤとした顔を崩さない。


「それで……武器はどうなりましたか?」


空気を変えるように咳払いを一つしてからトルトが問うと、子どもたちは自分たちの手に入れたものを差し出した。

それをみて、トルトは満足気に頷いた。

そのうち二つはジャニファが作ったものだが、気づいていないようだ。


「それで、他にネフティは何か?」


探るようなトルトの視線に、美玲たちは慌ててちぎれんばかりに首を振った。


「トルト様に宜しくお伝えするように、と」


「そうですか」


助け舟のようににこやかに壁際のフレイズが言うと、トルトもまた微笑んで頷いた。だがそのやりとりが怖い気がして、美玲は鳥肌がたった腕をさすった。


「長旅でお疲れでしょう。まずは休息を取ってください」


「え?でも、すぐに女王様を起こさないといけないんじゃないのか?」


クッキーを頬張りながら市原が尋ねる。


「陛下のことをご心配して下さりありがとうございます。ですが、月がまだ完全に隠れていませんので目覚めの儀式ができないのです」


「あの、……それができるのはあとどれくらいなんですか?」


おずおずと尋ねたかれんの言葉に、トルトは即答した。


「五日です」


「五日?!」


すぐに女王を起こして元の世界に帰る気でいた美玲たちはがっかりした。


中でもコンビニのアイスを楽しみにしていた市原はあからさまにがっかりし、テーブルに突っ伏している。


「五日も何したらいいんだよ〜」


「そんなに落ち込むなよ市原ぁ。クッキーうまいぞ」


志田に励まされてもアイスのショックから市原は容易に立ち直れそうにもない。


「そっか、あと五日も市原くんと一緒に……!」


かれんは少し嬉しそうでもある。よく考えたら、かれんにとって学校にいた頃には考えられないくらいのラッキーな状況なのだ。


「今はゆっくり休んでください。ポワン、皆様のお食事が終わったら、お部屋にご案内して下さい」


「はい、トルト様。仰せのままに」


給仕をしていたポワンがその場でかしこまり、お辞儀を返した。


「フレイズは私と共に。あなたには記録室で詳細な報告をしていただきます」


その言葉に少し不安になり、フレイズを見ると、彼は大丈夫だよというふうに手を振り、トルトともに退出していった。


「あらー」


「あらー?」


二人のやりとりを見て市原と志田がニヤニヤと声をあげたが、美玲が一睨みするとふたりともよそを向いてクッキーに手を伸ばした。


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