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妖精の羽

 しん、とリビングが静まり返る。


 ネフティから語られた、原因はわからないが、姉妹の壮絶な喧嘩が、あの穏やかなトルトがやったことだとは美玲には信じられなかった。


 フレイズと市原を見ると、二人も信じられないという表情をしている。


 美玲も妹と喧嘩をするが、口論で勝てない妹が泣きながらポカポカ叩いてくるくらいだし、痛くもないし自分からは決して手を出さないようにしている。


 だがネフティから語られたトルトとジャニファの喧嘩は、美玲達が普段しているような姉妹喧嘩よりも残酷で、激しく、ショックだった。


「あのあと、わたしの家でジャニファを看ていたんだけど、食事を作っている間にどこかに行ってしまったんだ」


 傷だらけの身体で、羽も失ったジャニファはどんな気持ちで森をさまよっていたのだろう。


 ネフティはそんなジャニファを探して、採掘の仕事がてらあちこちを転々としていたのだという。


「わたし達妖精にとって羽はとても大事なものなんだ。大抵、わたしやフレイズ君の背にあるような透明な羽を持っているが、今、ジャニファが持っているものは見たとおり黒い羽…夜の国の羽だ」


 その言葉に美玲は銀の鱗粉を振りまきながら黒い蝶の羽で飛んでいたジャニファを思い出した。


「いまは夜の羽を持っているが、彼女もわたしたちと同じ、透明な美しい蝶の羽を持っていた」


 それはトルトに燃やされてしまったけれど、とネフティは苦笑した。


「無事でいてくれたことは嬉しいけど、夜の住人になっているなんて思いもしなかった……」


「ネフティさん……」


 悔しそうに拳を握るネフティに、美玲はなんと声をかけたらいいかわからず、かれんと顔を見合わせた。


「二人の喧嘩の原因ってわからないんですか?」


「うん。あのあと、トルトはいつの間にか姿を消していたし、しばらく後には記録官になったから、聞く機会もなかったよ」


 フレイズの問いかけにネフティは頷いて答えた。


「あ、ごめんね、なんかまた暗くなっちゃったね」


 空気を変えるように手を叩いて明るく言って立ち上がった。


「さて、昔話はここまでにして。お腹いっぱいになったから、早速調整しようか。二人とも、武器をちょっと借りるね」


「あ、はい……」


 バライダルたちに操られていた時は、精霊石の力を金環で制御できるようにてされていた二人の武器は、自分の意思を取り戻したかれんと志田には邪魔な機能だ。


 ネフティはそれを取り去る作業のために二人の武器を持って地下の作業場に降りて行った。


 木の扉を閉め、ネフティはかれんと志田から預かった武器を作業台の上に並べた。


 どちらも繊細な細工が施されている。

 それはカタバミの花と葉をかたどったもので、これこそ武器の制御を行っていた部分である。


「こんなに綺麗でもったいないけど、取らないとね……」


 そう呟き、カタバミの金細工を丁寧に取り去る作業を始めた。


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