変わらないふたり
「それでもわたしは、君を止める!」
「……バカ、危な……っ!」
ネフティはランドラゴンの背から飛び、ジャニファへと掴みかかった。
バランスを崩した二人は真っ逆さまに地面へと落ちていく。
「ネフティ……っ!」
ジャニファが歯ぎしりをして睨みつけてくる。
そんなジャニファに、ネフティは思わせぶりに微笑んだ。
「来たれ、地の果実……!」
「きゃっ!」
再び硬い地面に激突することを覚悟したジャニファだったが、背中に柔らかいものが当たり、痛みを避けられたことに少し安堵した。
だが柔らかなキノコの笠の上で、ネフティに押さえつけられ身動きが取れない。
「離せ!」
「いやだね」
「離せったら、この馬鹿力!」
「これでも鉱物採取で鍛えられてるからね」
じたばたと身を捩るジャニファを余裕で押さえつけ、ネフティは言った。
「人の子は守らなくてもいいのか?」
「フレイズ君がいるから大丈夫さ」
「……っ」
「そもそも、ミレイ君たちを連れて行くのが目的ならば、彼らに危害を加えないはずだ。あれは単なる脅しだろう?」
ネフティの言葉に、ジャニファは口を閉ざし、答えなかった。
「君は人の子を傷つけたりはしない。君は優しいから」
ネフティの言葉に眉間にしわを寄せたジャニファは口を閉ざしたままだ。
ジャニファは図星をつかれるといつも黙る癖があるのを、ネフティは思い出した。
やはり彼女は優しい、と安堵したネフティだったのだが。
「雷撃」
「っわ!」
ジャニファは小さな雷撃を喚び、ネフティの手に当てた。
ジャニファを掴んでいた手が離れ、するりと間を抜けて空へと逃れた。
「ジャニファ!」
「やっぱりお前は変わらないな……相変わらず詰めが甘いんだよ」
そう吐き捨てるように言うと巨大アイーグの元へと飛んで行ってしまった。
「詰めが甘い、か……全く本当だ」
ネフティは悔しそうに先ほどまでジャニファを捉えていた手を丸めて拳を握り、情けない笑みを浮かべた。
「これで二度目か……君を救えなかったのは……」
苦々しい思いでそう呟くと、夕日の沈む紺色の向こう、光線を出すアイーグの傍に戻ったジャニファを見つめた。
「変わっていないのは、やっぱり君もだよ……ジャニファ」
そしてジャニファから視線を外すと、自分もまたキノコの笠から降り、ランドラゴンの背にまたがって美玲たちの元へ急いだ。





