戦場でみたもの
水皇に抱えられ、美玲はあっという間に戦場となっている丘に辿りついた。
波のように押し寄せる黒い影を、妖精たちは精霊魔法や武器を使って消し去っている。
だが数が多いためか、騎士団の中にも負傷者が多く、前線からは次々と怪我人が運ばれてくる。
体のあちこちから血を流して呻く騎士たちを見ていられず、美玲は顔を覆った。
「水皇…」
彼らの怪我をどうにかならないのか、と見上げると、水皇は竪琴を出した。
それと同時に精霊石も青く光りだす。
驚いて精霊石を見つめると、呪文が頭の中に浮かんできた、
「水癒唄…」
つぶやくように唱えると、水皇が竪琴を鳴らす。弦を弾くと、青い光をまとった音符が舞い、怪我をした騎士たちに触れて、まるでシャボン玉のように弾けた。
七色の光が傷口に癒しを施していく。
「これは…あぁ、もしや君は、あの例の人の子か…?」
痛みに呻いていた騎士にうなずくと、騎士は安心したように目を閉じた。
「えっ?大丈夫ですか?」
心配は必要なかった。騎士は安らかな寝息を立て始めていたからだ。
「ミレイ!」
フレイズが上級精霊魔法をつかう美玲に気づき、まとわりつこうと迫るアイーグを細い剣で斬りながら駆け寄ってきた。
「フレイズさん、大丈夫ですか?」
「ミレイこそ、こんなところに来て…!」
責めるような言葉とは違い、視線には心配の色が見て取れる。怒られているわけではない、心配してくれているのだとわかり、美玲は微笑んだ。
「でも市原が戦ってるんだもん。私も戦わなきゃ。それに…もしかしたら…」
かれんたちも来ているかもしれない、と思ったのだ。
するととつぜん、背後で爆発音がした。
音に驚いて見ると炎を纏った竜巻が起きて、アイーグを飲み込んでいくのが見えた。
合体魔法だ。





