雷(かみなり)使い
火と水のキャットファイトの結末は…?、
水に体を消される痛みにのたうちまわっていた炎帝は、ようやく落ち着くと体のあちこちから蒸気を上げながらも水皇を鋭い眼差しで睨み、再び火球を作り出した。
炎帝が火球を放とうとし、水皇がそれを鉾で受けようと構えた、そのときだった。
「豪雷撃」
何者かの声とともに、突然激しい雷が雨のように降り注いできた。
「何だ?!」
「きゃっ!」
「ミレイ、ナイト!風防膜」
無差別に降り注いでくる雷撃から、駆け寄ってきたフレイズが二人を地面に倒し、その上に覆い被さってシルフの力で結界を張り、守ってくれた。
すぐそばに雷が落ち、その轟音と光に驚いた美玲は目をきつく閉じた。
やがて轟音が止み、恐る恐る周囲を見渡すと、炎帝は雷の鎖に囚われていた。
「何者だ!」
ベルナールとセレイルが武器を抜いてミレイたちの前に出て、鋭い声で問いただす。
彼らの視線の先、炎帝が囚われている近くの木の上には、黒い装束に目だけを出した、まるで忍者のような姿をした人物が居た。
その背にはところどころ青い模様のある、黒い蝶の羽が見える。
男性か女性か全くわからない、その黒い人物が指を鳴らすと、かれんと志田は気を失ってその場に倒れてしまい、召喚主を失った炎帝と地王は姿を消した。
「かれん!」
「志田!」
美玲たちがそれぞれに呼びかけても二人は力なく倒れたままで、黒い人物は、忍者のように木から飛び降りると二人を抱え上げ、そのまま木と木の間に消えていった。
まるでそこに扉があり、その向こうに空間があるように、忽然と姿を消したのである。
「かれん!!」
「志田ーーーっ!!」
二人は思わずその人物が消えた場所に駆け寄り、何もない空間に叫んだが返事はなく、黒い人物が再び現れることもなかった。
「かれん…」
美玲は煤けた大地と、炭と化した木々の間に呆然として膝をがくりと着いた。
黒くなった地に手をつき、ぐっと握ると、黒くなった砂が指先を汚した。





