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にらみ合い
うねる炎はどんどん大きくなっていく。
あの大きくなった炎が放たれれば女王も騎士たちも、もちろん美玲たちもひとたまりもない。
「水皇小夜曲!」
守らなけば、と頭に思い浮かんだことばを叫ぶと、水皇は竪琴を取り出してゆっくりとかき鳴らした。
それはまるで、夜の海で月明かりの中人魚姫が歌うかのようである。
心地よい旋律があたりに響き、霧の水滴が、それぞれを守るように水の膜を作っていく。
そしてさらに水皇の周りを漂う水滴は他の水滴とくっつき、大きな水球となった。
うねる炎を纏った炎帝と巨大な水球を従えた水皇がにらみ合う。
互いに間合いを詰めつつ、魔法を放つ機会をうかがっているようだ。
上級精霊同士の戦いで、相手が弱点だとわかっているからこそ、慎重になるのだろう。
炎帝を傷つけたくない水皇と、弱点となる水で大ダメージを受けてしまうことを恐れる炎帝。
先ほどはすぐに放たれていた「炎帝円舞」もまだ放たれずにいる。
だが、いつまでもにらみ合っているわけにはいかない。
魔法は放たなければ消滅しないからだ。





