上級四大精霊
志田の頭の中に聞いたこともない言葉が思い浮かぶ。現れた風主を見ると、彼は弓矢を出して頷いた。
「風射撃!」
市原が鋭く唱えると、風主の放った矢が雨のように降り注ぎ、竜の土の鱗を剥いでいく。
やがてすべての鱗を奪われ、竜は土の塊になって崩れ去った。
「俺…やったのか…やった!やったんだな!」
「市原、すごい!」
市原は嬉しそうに美玲に向けて拳を突き上げた。
竜を失った志田だが、彼は無表情のまま、悔しそうにするわけでもなくかれんの元に移動した。
「おいで、炎帝…」
「来い、地王」
かれんと志田がそれぞれ唱えると、渦巻く炎の中からはアラビアンナイトに出てきそうな、踊り子の衣装をまとった赤い肌の女性の姿をした炎帝が、また地響きと土けむりの中からは茶色い鱗に覆われた巨大なイグアナの姿をした地王が姿を現した。
「上級精霊が揃い踏みだねぇ」
「だが、あんまりいい状況じゃないがな」
水皇は炎帝と、風主は地王と向き合い、にらみ合っている。
その光景を見て、騎士たちからは感嘆のため息が出る。
世界を構成する元素である彼らは、本来いがみ合うように存在するものではないが、今、かれんと志田は正気ではない。おそらく炎帝と地王もそうなのだろう。
上級精霊同士の戦いで、妖精騎士たちたちに出る幕はない。
「今のうちに木から陛下を下すんだよ!」
その凄まじい光景に誰もが惚けていたが、ハッとしてセレイルが檄を飛ばす。
かれんたちの注意が美玲たちに行っている今なら作業を進められる。
騎士たちは大急ぎで羽を動かし、作業を進めた。





