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精霊召喚

美玲にも一目でわかる通り、妖精の騎士たちは苦戦していた。


風部隊は志田の作り出す土の壁に力及ばず、水部隊もまた、かれんの炎を相殺しきれずに逃げ惑う。


森の木々に火がつき、あちこちを燃やしている。

さらにアイーグも大群で押し寄せている。

アイーグは単体の強さはそれほどではないが、かれんと志田の魔法を避けながらでは消耗戦のように彼らの体力と力を奪っていく。


「俺も…!」


苦戦する騎士たちに市原が自信満々と手のひらを前にむけた。


「シルフ!」


だが何も起こらず、現れない。


「なんでだよ!さっきは来たじゃないか!!シルフ!シルフ!!」


何度も叫んでも、風の精霊は姿を現さない。市原は悔しそうに手を強く握りしめた。


「二人を近づけさせるな!あの子たちに合体魔法を使われたら厄介だよ」


セレイルの怒号に騎士たちも応じて二人を近づけさせないように戦うが、


溶岩乱舞ダンシング・ラーヴァ


志田が地面を打ち、現れた岩の塊に、離れているはずのかれんの放った炎の玉がまとわりつき、大きな溶岩の塊となって天から降り注いだ。


「くそっ!なんてこったい」


二人は離れていても合体魔法が使えるようで、セレイルは予想外のことに唸った。


「とにかく、女王陛下を降ろす作業を急ぐんだよ!終わり次第、ここから風精霊の移動術で撤退する!!」


降り注ぐ溶岩を避けながらセレイルが叫ぶ。


「皆、子どもたちとは戦うな!とにかく陛下を移動するための時間を稼いでおくれ!!!」


その言葉にピクリと反応したかれんが、バトンを構えてユンリルの檻の方を向いた。


そして、バトンをくるくると回し、その先端をまるで照準を合わせるようにユンリルへと向けた。


チリチリと火の粉が現れたと思ったら、やがてそれらは大きな塊となった。


「……っ!」


バトンを思い切り振ると、渦巻く炎の塊が先端から鞭のようにしなって飛び出していく。


そしてそれはユンリルの眠る檻へと向かう。


「あれは…炎帝円舞イフリート・ワルツだと?」


「くそ、防げない!」


炎は水部隊たちが出した、何重にも重なった水の盾を破りながら進んでくる。


炎は水を消滅させながら進んでいるというのに全く威力が衰えているようには見えない。


「だ、だめっ!」


「永倉!」


ユンリルを守らなければ元の世界には帰られない。


美玲はおもわずユンリルの檻がある木の前にたち、炎から檻を守ろうとした。


熱気が迫ってくる。


大きな火の塊は、正面から見るとまるで図鑑で見た太陽のようだ。


熱い、溶ける…。


「馬鹿!」


「ナイト!」


市原も炎の前に飛びだし、美玲をかばうように立った。


「女王さまは、必ず守るんだから!


迫ってくる炎がやけにゆっくりに見えた。


「おねがい、来て、ウンディーネ!!」


だが何も起こらない。


「どうして、さっきはよべたのに!ウンディーネ!!」


(助けて!!)


「永倉!」


美玲を炎から遠ざけようと引く市原の手を振り払う。


「ミレイ、ナイト!!」


フレイズが前に出て、二人を守るように抱きしめたその時だった。


眼の前に薄い膜が現れ、炎の波を防いだ。蒸気がもうもうとあたりに立ちこめる。


《セイレーン……よ…ん…で…》


「せい…れーん…?」


頭の中に響く声が、その名を叫べと言っている。


「セイレーン!!」


美玲がその名を叫ぶと、大きな水流が巻き起こり、そこに再びあの人魚の姿をした上級ハイクラス精霊スピリットが姿を表したのである。

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