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夏休みに妖精の世界を救うことになりました!  作者: 小日向星海
風天(ヴェンティ)の招待
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人魂の正体

 美玲の言葉に間近に迫る光に気づき、かれんはゆっくり後退り、美玲はかれんを守るようにそばに向かった。


「呪文が全然……効いてない?!」


 ウソでしょ、とかれんが呟き、どうしたらいいの、と頭を抱えた。


「とにかく、みんなで呪文を唱え続けてみよう……なむあみだぶつなむあみだぶつ……!」


「アーメンアーメンアーメン!」


りんぴょうとうしゃかいじんれつざいぜん!」


かんざいさつぎょうじんはんにゃ……ってあああ全然無理、効果ないよ!ヒトダマがどんどん近づいてくる!!」


 志田の提案に四人はそれぞれ呪文を唱えるが、人魂は消えるどころかどんどん近づいてきて、大きくなっている。


「久瀬、何かないのか?悪霊退散的なやつ!」


「わかんない、私ももう、わかんない!ジャニファさん!ジャニファさーん!!!」


 市原に聞かれたが、緊張する余裕すら無くしていたかれんは、ジャニファの名前を叫んだ。


 その間にも人魂光はどんどん大きくなって、もうだめだ、と今更ながらの覚悟を四人が決めたときだった。


「どうした、お前たち何を騒いでいる」


 少し呆れたような声で宙に浮く光の球体を伴ったジャニファがネフティと共に現れた。


「なんだ……ジャニファさんたちだったのか」


 迫り来る人魂の正体に、四人はどっと疲れが出て、その場にへたへたと座り込んだ。


「会えてよかった。君たちは反対側に居たんだね」


 ネフティによると、ジャニファとネフティは美玲たちが居た場所の反対側で気がつき、4人を探してここまで歩いてきたと言う。


「ジャニファさんもネフティさんも、見つかって良かった……」


 はは、と乾いた笑いを浮かべて志田が深く息を吐いた。


「この暗い洞窟で四人ともよく頑張ったな、怖くなかったか?」


 ジャニファからかけられた労わりの言葉に、一番怖かったのはあなたの持つその光です、とは誰一人言えなかったので、四人は無言で頷いた。


「どうやらここは風精霊シルフ洞穴ケイブと呼ばれる場所のようだ」


「書物で読んだことはあったけど、ここにきたのはわたしも初めてだよ。ここは風精霊シルフ以外は入れないと言われている場所なんだ」


 ネフティは興奮しているのか、目を輝かせて言う。


「みてごらん、この歩きづらい岩場。当たり前だよね、だれも歩かないからね、道ができないの。それから壁にある風晶石シルフィストーンの純度!この色!透明感!もう最ッ高だよ!!」


 ネフティはうっとりとした表情で岩壁に所々輝いている黄緑色の石を撫でる。


「こんなに純度が高ければ力の強いチャームや武器や防具を作ることも……ああ、何を作ろうかな〜!楽しみだよ!」


「あ、そうだ、あの、ブレスレットは?」


 興奮するネフティに少し引きながらも、期待を込めて美玲は二人に聞いた。


 美玲達が倒れていた場所にはなかったから、ネフティ達の場所にあったのかと思ったからだ。


「残念だけど見つからなかったよ。ここを曲がって進めばもしかしたらあるかもしれないね」


「そう……ですか」


 ネフティの答えに美玲はガッカリとして肩を落とした。


「とにかく、無事合流できたし、よかったよね」


 美玲の落ち込んだ気持ちを切り替えようとしてくれているのか、かれんが明るい声で言った。


「いや久瀬、そうともいえないぞ」


「ちょっと、志田君」


 空気を変えようとしたのに、とかれんは志田に目をつりあげた。


「ああ、なんか、この鳥肌が立つピリピリした空気……やばい気がする」


「市原君まで……」


 両腕をさすりながら言う市原と志田は美玲とかれんの背後を指さした。


 二人が不思議に思って振り返ると、男子たちがなぜあんなことを言ったのかをようやく理解した。


 そこには怒った表情をした風精霊シルフたちがいたのだ。


 数はざっと数えただけでも20はいるだろう。


「怒っているの……?」


 ぐるりと周りを囲む風精霊シルフたちは、問答無用とばかりに問いかけた美玲たちに向けて風の刃を放ってきた。

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