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夏休みに妖精の世界を救うことになりました!  作者: 小日向星海
風天(ヴェンティ)の招待
152/215

憧れのひと

「ジャニファさーん!ネフティさーん!どこですかー?」


「おーい!」


 冷たくゴツゴツした岩壁に触れながら、四人はゆっくりと足場の悪い一本道を進んでいた。


 薄暗い洞窟にネフティたちへ呼びかける志田たちの声が響くが返事はなく、聞こえてくるのは時折吹く不気味な風の音だけだ。


「あームカつく!言っちゃ悪いけど、かれんは何であんなのが好きなわけ?」


「え……?」


「お調子者だし、市原のどこがいいの?」


 先頭を歩く男子2人の背を見ながら、まだ気持ちがおさまらない美玲はかれんにたずねた。


「そ、そうだね、市原くんは勉強もできて、運動もできて……あとカッコいいよ」


 きゃっと頬を赤らめて言うかれんに、美玲は首をかしげた。


「でもそれなら志田だって同じようなもんじゃん?ていうか、志田の方が落ち着いてるし!大人っぽいし」


「もしかして、美玲は志田くんのことが好きなの?」


 美玲が言うと、ハッとしたようにかれんが手をポンと叩いた。


「は?いやいやそんなわけないでしょ。大体志田も市原もファンクラブの目が怖いし、ないない」


 美玲と恋バナが出来るかも、と目を輝かせて言うかれんに、美玲はもげそうなくらい手と首を横に振った。


「えーちがうの?」


「無いって、絶対!!」


 残念そうに言うかれんに美玲は強く否定した。


「でも……そっか、美玲はフレイズさんがすきだもんね」


「すっ?!」


 思いがけないかれんの言葉に美玲が固まる。


「それもちがうの?」


「ん……?」


「私はずっと美玲とフレイズさんがラブラブだと思っていたよ」


「ら、らぶらぶ……?」


 美玲はかれんが言っている意味がわからずに首をかしげた。


「ブレスレットももらったんでしょ?」


「あ、あれはお守りというか、なんと言うか……」


「男の人は、なんとも思わない相手にアクセサリーを贈ったりしないってドラマで見たよ」


 しどろもどろになる美玲に、かれんは犯人を推理する名探偵のように言い切った。


「でもほんと、そう言うのじゃなくて……フレイズはうちが小さい時から遊んでいた公園の松の妖精だし……お兄ちゃんがいたらこんなかんじなのかなーって……思うくらいで、それに、好きとか恋とかよくわからないし……」  


 人差し指を突き合わせながらゴニョゴニョと早口で言ってから、美玲は熱くなるほおに手をあててうつむいた。


 正直、美玲は恋とかまだよくわからないと思っている。

 フレイズにちょっとドキドキしたことはあるけど、驚いてドキドキしたと思っていただけで、恋だとか好きだからだとか考えたこともなかった。


「おい女子もおしゃべりばかりしていないで、ネフティさんたちに呼びかけてみろよ〜」


「うるっさいな市原!こっちはいまかれんと大事な話してんの!」


 前を向け、と美玲が市原に手で合図すると、彼は面白くなさそうにフンと鼻を鳴らして、向きを戻した。


 心なしか強く言い返されて落ち込んでいるようにも見え、志田が慰めるように市原の肩を叩いている。


「私、美玲が羨ましい」


 かれんがポツリと呟いた。


「へ?なんで?」


「市原君とそんなふうにやりとりができて」


 かれんの呟きに美玲はハッとして、手を合わせて謝った。


「ごめん、かれんの気持ち知ってるのに……あたし、これからあまり市原とは話さないようにするね」


「ちがうの、本当にただ羨ましいだけなの。私にもうちょっと勇気があったら、美玲みたいに自然な感じで市原君と話せるのにって」


 美玲の言葉にかれんが慌てて言う。


「でもかれん、こっちきてから結構話せてない?」


 妖精の国に来る前までは市原を遠巻きに見て、話しかけられたら答えるくらいしか出来なかったかれんだが、妖精の国では何度か市原に意見したりすることもあったはずだ、と美玲は思い出しながら首を傾げた。


「全然だよ。市原くんだけじゃなくて、志田くんと話す時も緊張するよ。あまり男子と話したことなんてないからさ。でも緊張していたら妖精の国は救えないからね」


「かれん……」


「だからね、私ジャニファさんみたいに強い気持ちでいられたら、多分ドキドキしたりしないで市原君たちとお話しできるのかなって……」

 

 だから最近かれんはお手本にしようとジャニファにべったりなのか、と美玲は納得した。


「でもジャニファさんて本当、カッコいいよね。強くて、ハッキリと自分の意見も言えてキリッとしていて。……私、ジャニファさんみたいになりたいんだ」


 うっとりと言うかれんが、ジャニファみたいに話すところはなかなか想像できないと美玲は思ったけれど。


「かれん、うち、応援するね!がんばって!」


「うん!」


 えへへと二人で笑っていると、志田が声をかけてきた。


「二人とも、話は終わったか?」


「終わった終わった。いや〜呼びかけ任せちゃってごめんね?」


 美玲が謝ると、志田は首を振って笑った。


「よかった。市原が永倉に言い返されてスネちゃってさ〜」


「は?スネてねぇし!てかさ、お前ら女子って俺らに『ちゃんとしなよ〜』とか言うわりにお前らもぜんっぜんちゃんとしねえよな!」


 志田の言葉に聞き捨てならない、と市原がぶりっ子しながら美玲の声真似をして言う。 


「は?市原もっぺん言ってみ?」


 美玲がイラッとして、低い声で聞き返すと、市原はしゅんとして志田の背に隠れた。


「しゅみません……」


「まあまあ、気を取り直して、四人でジャニファさんとネフティさんに呼びかけよ、ね?」


「いや俺ムリだわ。もう喉カラカラだから。今度は女子二人でやれよ」


 明るく言うかれんの言葉に「しゅん……」からすぐ立ち直った市原が嫌味っぽく返した。


 その市原の態度と言葉に傷ついたかれんの表情をみて、美玲はとても腹が立った。


「へー、そんなに喉が渇いているならお水、あげるわよ、たっぷりと、ね……!」


 美玲の言葉に応じて、水の精霊石が強い力を放ち始めた。


アクアエフィー……」


「わー冗談、冗談冗談だから!!久瀬、冗談だからな!俺も呼びます呼びますって!てか止めろよ、志田も!」


「いやいや、このままいったら永倉もどこまでやるのかなーって思って」


 あははと笑う志田に、市原はがっくしと肩を落とした。


「美玲すごい……私もそれくらい言い返せるように頑張らなきゃね」


「いや、もう久瀬まで怖くならないで……」


 ガッツポーズをしながら決意表明したかれんに、市原が悲しそうにお願いポーズをして言う。


「は?何よ、市原はあたしが怖いって言うの?……やっぱり、お水がたくさんほしいみたいね」


「ほらそういうとこ、永倉のそういうところが怖いの!お水は結構でーす!!」


「待ちなさーい!!」


 逃げる市原を追いかけて、美玲も走り出す。


「こら、二人とも待て!勝手に行くのはダメだぞ!」


 今度こそはぐれたらどうする、と志田の声が洞窟に響くが、美玲と市原は聞こえているのかいないのか、足を止める様子はない。


「ほら、久瀬も行くぞ。置いていかれちまう」


「あ、うん。二人とも待って〜!」


 志田に促され、かれんも二人を追いかけるために走り出した。

「もっぺん」って方言かな…?会話文なのでそのままのせましたが「もう一回」の意味です。言ってみ?もっぺん言ってみ?とかいわないかな…いわないかな…後で直すかも。

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