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次の行き先は……

 ジャニファとネフティが連れ立って退室するのを見送ると、バライダルは四人に視線を戻した。


「それで、そなたたちはこれからどうするのだ?」


「どうするって……もう一度妖精の国に行って四天を封印……? するしかないだろ……なあ?」


 市原の答えに美玲たちも頷く。ユンリルやポワンを救うためにはそれしかない。だが……。


「正直、このまま行っても……あいつらとまともに戦えるかどうかはわからないよな」


 相手は美玲たちの力になってくれている上級精霊以上の存在だ。精霊王もあちらの味方だし、四人が勝てる見込みは今のところ無いだろう。


 光柱ルクス・カラムの間で元の世界に送り返されたことが思い出され、悔しさを押し流すように美玲は月霜花茶を飲み干した。


「そこだ。 四天と精霊王がつるんでいることが我には解せぬ。 あやつらは敵対しておったからな」


 志田のつぶやきに返したバライダルのその言葉に、美玲は夢のことを思い出した。バライダルなら何か知っているかもしれない。


「あの、聞きたいことが……」


「何だ、そのようにかしこまってどうした水の娘よ。 よい、遠慮なく申してみよ」


「あたし、夢を見たの。 あっちに戻った時」


 そして美玲はバライダルに精霊王サシェとミアラの結婚式の夢の話をした。


 かれんには登校するときに話していたが、市原と志田には言っていなかったので二人とも興味深げに聞いている。


「サシェ……確かにそれは精霊王の名だ。 氷に封じられたと言う話も聞いているが……シラギリの森の奥の、四季の庭か……たしかにミアラはそこで水天に氷漬けにされたのだな」


「あたしが見た夢の中では。 でも、四天は精霊王に呼ばれた子どもに封印されたんだから、ミアラも助かっていたと思ったんだけど……そうじゃなかったのかな」


 美玲の疑問にバライダルは「ううむ……」と唸った。その時何かを思いついたようにかれんが手を打った。


「四天は封印できたけどその……ミアラの氷は溶かせなかったとか、水天が封じられて救えなかったとかかな」


 四天が復活したことで、精霊王サシェはミアラを人質にされ、言うことを聞くように迫られているのかもしれない。


「もしそうならば四季の庭でミアラを見つけ救い出せたのだとしたら、精霊王が四天に従う理由は無くなるはずだ」


 精霊王と四天が組んでいる状態よりも少しは戦いやすくなるはずだ。


 それもまだ予想でしかないが、あちらの戦力を削れる可能性があるなら試してみて損はないだろう。


「もしかしたらワンチャンあるってことか」


「仮の話そうであれば、だ。 風の少年よ。 精霊王の戦力分は削ることができるだろう。 あれがいないだけでも相当違うはずだ」


 ユンリルやここで眠る妖精たちを守るために今はバライダルを戦力として期待することはできない。


「決まったね。 じゃあまず、四季の庭にミアラさんを探しに行ってみよう」


 かれんの言葉に美玲たちは頷いた。


「部屋は用意してある。夜の子らの準備が整うまでこの館でゆっくり過ごすと良い」


 そしてバライダルは四人にそう告げると、ユンリルの元へ戻ると言い、退室した。


 美玲は手元のカップの中で揺れる月霜花茶をぼんやりと眺め、ため息を漏らした。


 夢で見た内容が本当に起きたことかもしれない。そう思うとなんとなく氷漬けになったミアラを見るのが怖い気がした。


「美玲、どうしたの?」


「ううん、なんでもない……大丈夫」


 だから行き先が決まったもののなんだか気分が重くて、かれんの心配に美玲は笑ってごまかした。


「永倉、久瀬、食わないなら俺らが全部クッキー食べちゃうぞ」


「あたしはもうお腹いっぱいだからいいや。 ……ちょっと歩いてくる」


 市原にそう返すと、美玲は席を立った。


「それなら私も一緒に……」


「ひとりで大丈夫。かれんは座ってゆっくりしてて」


 心配するかれんに首を振り、美玲はそのまま部屋を出た。少し風に当たりたい。そんな気分だった。

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