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駆け上がれ!

 だが予想外にランドラゴン・マグ二の鉄球は重い音を立てたものの美玲たちにあたることはなかった。


 かわりにパラパラと細かな土塊が頭上からいくつか降ってくる。


「ごめんね、遅くなって」


「……全くだ」


 ほっとした声を返したジャニファの腕が解け、美玲とかれんは何が起きたのだろうと見上げた。


 そこにはランドラゴン・マグ二の尾を大きな口で掴んだ、ティラノサウルスに似た土のドラゴン、ランドラゴン・REXが居た。


 そしてその足元にはランドラゴン・REXの召喚主であるネフティが申し訳なさそうな笑みを浮かべ振り返り立っている。


 相変わらず精霊石の採掘などで汚れてヨレヨレの作業着を着ていたが、その力強い眼差しは以前の気弱な彼とはどこか違うと感じさせられた。


「ネフティさん! 」


「やあ君たち、久しぶりだね。 さ、ここは私に任せて、今のうちに扉へ行くんだ」


 美玲とかれんの重なり合った声にそう言うと、ネフティは素早く地精霊ノームに命じてジャニファの毒を消し、美玲の足を癒した。


「ランドラゴン・REXの使い手……あなたがランドラゴンマスターのネフティですね。 まさかここで会えるとは」


 ジルビアは険しい表情でネフティを見ている。


「あなたもハネナシの仲間なのですか? 四元騎士団の一隊を担う私を阻むというのなら、手加減はしませんよ」


 ジルビアが背負った矢筒に手をかけながらネフティに言った。


 けれどもネフティは以前地精霊谷ノーム・バレーで出会ったと時の気弱な様子は全く見せず、彼女に動じることはなかった。


「私はただ、大切な人たちを守りたいだけだよ。 君が彼らを傷つけるというのなら、私は全力で守るだけだ」


「フレイズ、あなたは手出し無用です。 ランドラゴンの使い手としてランドラゴンマスターと勝負できるのはまたとない機会なのです……! 」


「ですが、ジルビア隊長……! 」


「下がりなさい、これは隊長命令なのです! 」


 ジルビアが厳しい口調でフレイズを下がらせているあいだにネフティは淡々と詠唱を始めていた。


「命吹き込まれし疾風の走者よ、大地より来たれ! ランドラゴン・ディノ! 」


 ネフティが呼び出したのは鋭い鉤爪が特徴的な、ランドラゴン・REXの四分の一ほどの大きさのランドラゴンだ。


「さ、ここは任せて、君たちはこの子に乗って。 ディノ、屈むんだ」


 ネフティの言うことを素直に聞きディノは身を屈めた。 四人が少し青みがかったゴツゴツとしたその背にのると、ディノはゆっくりと身を起こした。


「後は頼んだぞ、ネフティ」


 ジャニファの言葉にネフティは力強く頷いた。 ディノも鋭い鳴き声をあげ、走り出す。


「では、俺はニンゲンたちを追います! 」


「そうはさせないよ。 彼らの邪魔はさせない。おいで、ランドラゴン・ラプトル」


 ネフティが指を鳴らすと今度は大地から小型のドラゴンが三体現れ、フレイズを威嚇をするように甲高く咆哮した。


「三種のランドラゴンを同時に呼び出し使役するとは、やはりランドラゴンマスターは格が違いますね……」


「おや、さっきまでの威勢はどうしたのかな? ランドラゴン使いとしての君の力、私に見せるんだろう?」


「……っ! 」


その挑発するような物言いにジルビアが悔しそうに唇をかんだ。


 ランドラゴン・マグニはランドラゴン・REXに動きを封じられ、土でできている体のそこかしこにヒビが走り始めている。


「向こうで待ってて。 私もすぐに行くから」


 ジルビアから目をそらさず、振り返らないままで言うネフティにジャニファは頷くと四人を乗せて駆け出したディノの後を追った。


ーーー


 身を揺らしながら走るディノの乗り心地は良いものではないが、風を切ってあっという間に丘の上の松の元にたどり着いた。


 四人を下ろし役目を終えたディノは砂礫されきとなり、大地へと還っていく。


「ここから常夜の国へ行ける」


 四人に追いついたジャニファが示した一本松の根元近くのそこには、黒い夜空のような色をした渦巻く空間が口を広げている。


「ここを通れば常夜の国に……」


 どんな場所だろうか、と美玲はその渦巻く場所を眺めた。


 常夜の国へ続くその扉は、まるで図書館にある宇宙の図鑑で見た星雲のように美しくも見える。


「時間がない、いくぞ」


 ジャニファの言葉に四人は順に扉をくぐっていく。


 志田、市原、かれん。



 そして。


(フレイズ……)


 美玲は丘の下を振り返り、小さなランドラゴンと戦うフレイズの姿を一目見てから3人の後を追って扉に入った。

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