救いの雷鳴
フレイズと隊長たちの見たこともないくらい厳しい視線に晒されて美玲たちは泣きたくなった。あんなに親しく接してくれていたのに、どうして、と。
「あなた方がニンゲンなら、なおさらこの国にいてはならないのです!かつてこの国を襲った“ミアラの悲劇”を繰り返すわけにはいきません、土塊射撃!」
ジルビアが放った矢が地面にあたり、活性化された地精霊により土塊が大きな塊となって四人に襲いかかってきた。
「まずい、逃げろ!」
志田の声に弾かれたように四人は駆け出した。
大きな爪のように襲いかかってくる土塊から逃れようと隊長たちの隙間を縫って四方に散らばる。
ここからは全校鬼ごっこで鍛えた小学生の脚を見せる時だ。そう思って四人は思いっきり手足を動かす。
ところが。
「おっと、逃すものか!火炎壁」
「きゃっ?!」
炎が足元を這い、グラウンドに描かれたトラックの円のように描いていく。やがてそれは四人の背の高さを大きく超えて目の前に立ちはだかった。
「風精霊鎖!」
「マジかよ!」
足を止めた四人を、ベルナールが召喚した風精霊が鎖でしばりあげる。
肌に食い込むほどキツく縛られ、四人は冷たさと痛みに歯を食いしばった。
「消えてもらうよ!水精霊乱舞!」
セレイルが複数の水精霊を召喚し、四人の頭上に大きな水球を作り出していく。
あれをぶつけられたらもう終わりだと、そう覚悟して目をキツく瞑った。
その時だった。
「豪雷撃!」
勇ましく低い声とともに、雨のように降り注ぐ雷撃が水球を打ち砕いた。
打ち砕かれた水球は雨のように周囲に降り注ぎ、炎の壁も消えさり、草原には焼け焦げた円だけが残っている。
「何者だ!」
ベルナールの問いを無視して、銀の髪をした黒い蝶の羽を持った妖精が、短剣で四人を縛る風の鎖を切っていく。
「まったく、いきなり消えたと思ったら何をしているお前たち!なぜここに……っ!」
「じゃ、ジャニファさんんんんんっ!!」
風の鎖から解放されたかれんが黒い羽根の妖精ジャニファに抱きついた。少しよろけながらジャニファはかれんを受け止めた。
「私たちのこと覚えてるんですね?! 」
自分たちのことを覚えている人がいる、それだけでものすごく嬉しかったし、安心できた。
「今ここはお前たちの知っている場所じゃなくなったんだ。詳しくは後で……」
「誰だか知りませんが、余所見をしていると危ないのですよ!毒射撃!」
「くっ!」
「ジャニファさん……!!」
不意をついて放たれた矢は防御体制を取ったジャニファの腕を掠めた。