忘れ去られた四人
四人はそっと、それぞれの武器に力を込めた。
精霊石はひび割れているけれども、ないわけではない。少しのかけらでもすがりつきたい気持ちだった。
それぞれ呼びかけてみるが、やはり反応はない。
「フレイズ、どうした」
「何か見つけたのかい?」
「はい、隊長。ハネナシ四体です」
「ベルナールさん、セレイルさん……!」
四人が想像もしていなかった敵意と危機的状況に呆然としていると、フレイズの元に四元騎士団風部隊隊長のベルナールと水部隊隊長のセレイルが羽根を羽ばたかせながら飛んできた。
だがやはり再会を懐かしんでいるのは美玲たちだけで、二人の目は冷たい。
そう、まるで以前の妖精の国でアイーグを見つけた時の目と同じ。
ここにいてはいけない。四人はそう感じてじりじりと後退り、少しずつ目の前の二人から距離を取ろうとした。
「おっと、逃がしませんよ」
「ハネナシのお前たちをこのまま見逃すわけにはいかないからな」
「ジルビアさん……グリルさん……」
四人の背後から現れたのは土と火の部隊長の二人だ。美玲たちは四元騎士団の隊長たちに囲まれてしまった。
「どう……しよう……」
かれんが不安げに美玲に寄り添い、手を握る。
「本当に俺たちを覚えていないのか?」
「何を言っているのかわからないねぇ、アタシらにハネナシの知り合いなんているわけがないじゃないか」
「ハネナシ、常夜の国へ消え去るがいいです」
志田の言葉にセレイルが鼻で笑い、ジルビアが矢をつがえてキリキリと弦を引いた。
その切っ先が向いてる先はもちろん美玲たち四人だ。
「見たところまだ子どものようだが、ハネナシをこのまま妖精の国に置いとくわけにはいかないんでな。悪く思うなよ」
「ていうか、ハネナシハネナシってなんだよ!俺たちは妖精じゃない、人間だ!」
知っているだろう?と市原が叫んだ。
しかし。
「ニン……ゲン……だと?」
市原の言葉にフレイズと隊長たちの表情が青ざめ強張った。
先ほどよりも段違いな険しい顔に、市原は小さい悲鳴を上げて志田の背後に隠れた。
「俺、何かまずった?」
「……かもな」
市原のヒソヒソ声の質問に志田は唸るように短く答えた。