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休憩タイム

 二日後、四元騎士団の編成が終わり、美玲と市原の二人はシラギリの森に入っていた。


 シラギリというのは、白い霧のことで、森にはうっすらと霧がかかっている。


 混合部隊の指揮をとるのは四元騎士団水部隊隊長のセレイルという名の女性だ。



 銀色の髪に、黒に近い紫の瞳を持つ、愛嬌のある顔立ちの女性で、年はベルナールと同じくらいに見える。


 ベルナールは副指揮官になったといっていた。


  妖精たちのように飛行する能力を持たない美玲たちは、部隊長たちの愛騎のお世話になることになった。


  市原はベルナールの愛騎、巨大なシマリスのレイブンに、美玲はセレイルの愛騎、巨大なツバメのグレッグだ。


 グレッグが滑空してベルナールの脇を通ると、ベルナールが片手を上げてセレイルに休憩の合図をした。


「お嬢ちゃん、空の旅はどうだった?」


  グレッグが滑空しながら着陸すると、すぐそばで休憩していたベルナールがレイブンの背を撫でて言った。

 

  レイブンは二本の手で器用に巨大なクルミを持ち、食べている、


 市原はといえば乗り物酔いをしたのか、青い顔をして水を飲み、レイブンに寄りかかっていた。


 セレイルに手を借り、美玲はグレッグの背から降りた。


 数時間前に休憩したきりの、久しぶりの地面の感触が懐かしい。


「とても楽しかったです」


「まあ、私のグレッグの乗り心地は満点だろうね、どこかの誰かさんのとは違って」


「なんだよ」


 ムッとしていうベルナールを無視して、セレイルは腕組みをして何かを考え込んでいるようだ。


 やがて顔を上げると、


「坊や、辛そうだね。ちょっと薬になるものとってくるから、ベル、二人を頼んだよ」


「あいよ。セレー、気をつけろよ」


  ベルナールの心配する声に片手を上げてセレイルは森の奥へと消えていった。


「そうそう、お前さんたちに紹介しとくな。お嬢ちゃんはもう知っているだろうけど、坊主はまだ知らんからな」


 そう、豪快に笑ってぐったりとしている市原のぐしゃぐしゃと髪をなでた。


 迷惑そうに顔をしかめる市原に笑いかけ、見回りの任務についていたフレイズに声をかけた。


  隊長からの急な呼び出しに何事かあったのかと表情をこわばらせて振り返ったフレイズは、美玲達の姿を見ると何の用事かをすぐに悟ったようであった。

 

  フレイズに軽く微笑まれ、なんだかくすぐったい気持ちになった。


「こいつが、お前さん達の専属護衛を務めるフレイズだ。よろしくな」


「はじめまして、フレイズです。よろしくお願いします。」


「あ…イケメン…よろしく……」


 爽やかに握手を求められた市原は、ぐったりしつつも差し出された手を力なく握り返した。


 そして挨拶が済むとすぐにまた、グレックに寄りかかって目をじてしまった、


「ミレイ、その服とても似合っているよ」


「そう?ありがとう」


  フレイズに褒められて、照れくさくて頰を掻いた。


  美玲たちの服はシラギリの森に行く前に、新しい服に替えた。


 

 それは、妖精の国の一流の職人が織った布で作られた衣装だ。


 美玲は白地に青いラインで縁取られたジャケットに、かぼちゃパンツと膝丈のブーツ。


 市原は白地に黄緑色のラインが入ったジャケットと、膝丈のズボンだ。


 ラインの色はそれぞれの属性を表す色らしい。

 水の力を持つ美玲は青、風の力を持つ市原は黄緑だ。


  騎士たちがまとう鎧と同じくらいの魔力を秘めた生地が、見た目は軽装だがアイーグたちの攻撃から身を守ってくれる強力なものだという。


「ミレイ、怪我はもう大丈夫?」


「うん、フレイズのおかげでもうこんなだよ」


 ミレイは怪我をしていた部分をフレイズにみせた。


「今度こそ、ミレイやナイトにアイーグを近づけさせない。必ず、俺が守るよ」


「フレイズ…」


  「よろしくお願いします…」


  フレイズはにっこりと笑った。美玲はその笑顔にほっとして、頷く。


「ほら、坊や、これをお飲み」


  戻ってきたセレイルが、彼女の手の平よりも少し大きい赤い花を手渡した。


「サルビアだよ。この蜜の吸い方は…」


「知ってる!こうでしょう?」


 花を摘み、後ろの方を吸うと甘い蜜が口の中を潤した。


「今時の人間の子は花の蜜の吸い方なんか知らないと思っていたけど、意外だねえ」


「学校でよくすっていたもん。ね、市原」


  感心したように言うセレイルに美玲が胸を張ってこたえた。


「ああ…そうだな、休み時間に…」


  動けない市原に、サルビアを摘んで渡す。


「ん、なんだこれ、すっげぇあんまい!」


「おや、元気になったみたいだね」


  セレイルが市原をみて目を細めた。


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