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精霊王の過ち

 五つの瞳の視線からユンリルを隠そうとしてか、バライダルはその身でかばうように前へ出た。

 ユンリルを助けるために武器である月船を投げ捨てたため彼は丸腰だ。


「精霊王の過ちって……?」


 かれんのつぶやきに四天が反応して素早くバライダルたちから向きを変えた。


 その動きも不気味だが、五つの金の瞳が怖すぎて小さく悲鳴をあげたかれんは美玲の陰に隠れた。


 美玲もかれんを背後にかばいつつ無意識にフレイズからもらったブレスレットに震える手を沿わせた。


 そんな二人の前に市原と志田が前に出た。四人の中でも一番背の高い志田のおかげで四天の姿が見えなくなり、美玲とかれんは少しだけほっとして顔を見合わせた。


「いいでしょう、教えて差し上げます。その昔、妖精の国、精霊の国、人の国は繋がった一つの世界でした。それぞれの世界の人々は互いに協力し、それぞれの世界の秩序を守って生活していました。 ところがある日、精霊王が人である水の巫女と結ばれようとしたのです。挿絵(By みてみん)


 異種族同士が結ばれるなどあってはならないこと。異世界間の秩序が乱れてしまいます。


 我々四天は精霊王を諌めましたが聞き入れられず、巫女を奪われたことに怒った水天が二人を引き裂き、争いとなりました。


 結果水の巫女は封じられ人の世界との自由な行き来も禁じ、同じ間違いが二度と起こらないように人間の国と精霊界も隔てました。


 精霊王との戦いで消耗した我々も、彼の呼び出した人の子によって封じられていたのです」


「俺たちみたいなのが昔にもいたのか……」


 志田のつぶやきに四天は頷いて言葉を続けた。


「人の子の力は強大でした。 我々にとって、それが知れただけでも幸運と思いました。 なぜならこうしてあなた方を呼び出すことは思いつかなかったでしょうからね。 女王の髪を手に入れようとした時、女王は自らを強固な檻に閉じ込めました。 封印から目覚めたばかりの我々にはそれを破ることは容易でなかった…… 」


 だから四天は自分たちを封印するほどの力を発揮する、別世界となった人間の世界から美玲たちを召喚することにしたのだ。


「問う。四天よ、お前は本当に四天か?四天とは火天フィア、水天アクア、地天アルス、風天ヴェンティの総称だ。だがお前は一体ではないか。残り三天はどこにいる」


「全て、ここにおりますよ」


 四天はとん、と翼で自身の胸を叩いた。


「この身に四体入っております」


 だから四天の声はたくさんの声が混じっていたのか。


 美玲は四つの魂がひしめき合っている様子を想像して胃のむかつきを覚えた。


「ふ……っ、ふざけるな……っ、お姉様の体を……お姉様を返せぇええーー!!!」


「ジャニファさん!」


「お黙りなさい!」


 かれんの制止も間に合わず、雷をまとった大剣を振り上げて飛びかかったジャニファを四天は素早く羽で薙いだ。


 まるでバドミントンのシャトルを打ち返すような軽やかな振りだったが、凄い勢いで弾かれたジャニファはあっという間に壁に体を打ち付け、床に力なく崩れ落ちるとうめき声をあげた。

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