過激?な作戦
精霊王が消えてしまい、光柱の間は闇に包まれている。残された光はわずかに弱々しい光を放っている精霊王が残した羽だけだ。
「光滴」
トルトが唱えると、その手のひらに光の粒が集まり、それは女王ユンリルが眠る檻を優しく照らした。
「女王陛下……」
「まて!その人に触れるな!」
ユンリルに呼びかけていたトルトは、バライダルの鋭い声に制止されて心底うんざり、というように振り返った。
「しつこいですねぇ……!強風嵐」
苛立ったように身を低くしたトルトが間合いを一気に詰め、バライダルとジャニファの間近で杖をないだ。
すると小さな風の刃がいくつも発生してバライダルとジャニファに襲いかかった。小さなものだが殺傷能力は高いようで、素早くジャニを背後にかばったバライダルの肌を切り刻んでいく。
「我が主人っ!」
「案ずるな。大事ない」
腕や腹に傷を受けながらも月船を振るって風の刃を消し去っていく。
「邪魔ですよ。虹鎖」
「っなに?!」
風の刃は囮だったのか、間髪を入れず唱えられたトルトの呪文に応じて床から虹色に輝く蔦が伸びてきた。それはどんどん葉を茂らせ、バライダルとジャニファに巻きつくと、あっという間に二人の自由を奪ってしまった。
蔓に猿轡をされた状態で顔だけをのぞかせている二人を鼻で笑うと、トルトは踵を返してまだ目覚めない妖精の女王ユンリルの壊れた檻へ向かって行った。
バライダルの後を追って来た美玲たちは突然目の前に現れた二つの蔦の茂みに驚いて立ち止まった。よく見ると葉の間からはバライダルとジャニファの目が見えて、四人は思わず悲鳴をあげそうになった。
「一体どうしたんですか?! 」
驚き過ぎたためか、かれんが声を裏返らせながらたずねたのだが、猿轡をされて喋ることができない二人は、モゾモゾとうごめき葉が擦れる音を立てる事しかできずにいた。
「あの、燃やしましょうか? 」
「ちょ、かれん、さすがにそれは危ないよ」
かれんがバトンを構えるのを見て慌てて美玲が止めた。バライダルとジャニファもそれはやめてくれと頭を勢いよく振っている。
確かに火で蔦を燃やせば脱出は楽にできそうだが、確実に二人とも丸焦げになってしまう。
「俺の風で切り裂くってのは?」
「いやそれも危ないでしょ」
いいこと思いついた!とでもいう風に手を叩いた市原に志田が首を振った。
「ぬぬぬ………フンッ!」
四人はああだこうだと救出作戦を相談していたのたが、しびれを切らしたのか、ジャニファは体を拘束する蔦を内側から力ずくで切り裂いた。ちぎれて床に落ちた蔦にはまだ雷の残骸がまとわりついている。ジャニファは肩で息をしながら髪をかきあげた。
「お前たちは陛下のもとへ行ってくれ。我が主人を助けたら私もすぐに向かう」
バライダルの蔦を短剣で切りながらそういうジャニファに頷き、四人は壊れた金木犀の檻を覗き込んでいるトルトの元へ急いだ。