作戦会議
光柱の間には刃のぶつかり合う激しい金属音と、魔法がぶつかり合う破裂音が響いている。
しかもその破裂音はジャニファもトルトも雷の魔法を使うため、薄暗い光柱の間は花火が弾ける音のようだし、精霊王とバライダルが切り結ぶ武器の音は大きな和太鼓を叩いた時のような、腹の底に響く音だ。
美玲たちはそんな大人たちの激しい戦いを目の当たりにしてどうしたらいいかわからず、オロオロしていた。
「とにかく落ち着こう、落ち着こう」
志田が自分自身を落ち着かせるようにそう言いながら手のひらを下に向けて上下させながらしゃがみ、他の三人も同じように背を低くした。
白の台座を囲む柵よりも低い姿勢のため、万が一ジャニファとトルトの魔法が飛んできても直撃はしないはずだ。
「あのさ、確認するけどこの儀式の目的って、なんだっけ」
「えーと、確か女王様を檻から出して目覚めさせること、だよな」
志田と市原の会話に、美玲とかれんも同意のためにうなずいた。
バライダルとジャニファに女王を奪われ、常夜国へと去られたら、女王は目覚めずもう元の世界には帰れなくなるだろう。
何もしないでこのまま見ていることはしたくないが、あの激しい戦いの中に精霊王の召喚で疲れ切った状態で飛び込むのは、流石に危険だと子どもの自分たちにもわかる。
チラリと四人は中腰になって台座の柵の向こうを伺うが、あいかわらず目の前で繰り広げられている激しい戦いに、疲れ切った四人が入り込む隙はない。
四人は無言で再び柵の影に隠れるようにしゃがんだ。
「もっと力を使えたらあの戦いを止めて女王様を起こせるのにな」
根拠のない自信は子どもゆえだろうか。市原が手首についている精霊石に触れて悔しそうに呟く。
あと一歩で元の世界に帰られるのに、このままではそれも叶わない。
おそらく精霊王さえ女王の檻に近づけることができれば女王を解放できるはずだ。バライダルが現れる直前まで精霊王はその翼で檻に触れようとしていた。
「とにかく精霊王を女王様の檻の近くに連れていけばいいんだよね。でもあの戦いをどうしたらいいんだろう……」
何もできない無力感と悔しさに、美玲が拳を握ったその時だった。左手首につけているブレスレットが淡い緑色の光を放ち始めたのだ。
「何?風精霊石が……」
「あれ?そのブレスレットどうしたの美玲」
光に気づいたかれんに美玲は困惑して首を振った。
「昨日の夜にフレイズからもらったの。でも、なんだろう、あたしにもわからないよ……」
「へぇ……フレイズから、ね」
市原が不機嫌そうに自分の前髪を吹き上げた。美玲だけがもらったと知ったらいい気はしないだろう。
美玲は市原に何か言わなければと思ったが、なんて言えばいいのか思いつかず、そうしているうちに精霊石から出る光がだんだんと大きくなって四人を包み込んだ。
「なんだろう……疲れが取れていくみたいだ」
花の香りを運ぶ春風のような暖かさに包まれ、四人は身体中に力が満ちているのを感じた。
「これならいけそう……!」
それぞれの精霊石にも輝きが戻り、ずっと握って来たものだから感覚でわかる。
四人は白の台座の陰から飛び出すと、激しい戦闘が繰り広げられている只中へと駆け出した。