予感的中?
四人が精霊王を召喚するために苦労して作った四属性の球は消え、光の粒となってキラキラと辺りを舞っている。
「なんで……どうして……」
体力の限界だった美玲はへなへなとその場にへたり込み、他の三人もまたぐったりとしてそれぞれの台座にへたり込んでいた。
力を使い果たしたためだろうか。いつの間にか水皇たちも姿を消してしまっている。
かれんの“嫌な予感”は的中した。儀式は失敗したのだ。もう一度、と求められても今の美玲には水皇を召喚できる気がしない。
どうして、とふつふつと美玲の中にトルトへの怒りが湧いてきて、思わず声を荒らげた。
「トルトさん!どうして、どうして壊したの?!」
「お静かに。これで良いのです。ご覧ください」
美玲の叫びに振り返ったトルトは唇を手に当ててそういうと、光の球があったところを指差した。
つられて見上げると、砕けた光の球の粒が何かの形を作り上げていっている。
「何……?」
それはだんだんと密集しそれと同時に、光柱の間に重苦しい空気が立ち込めた。
目に見えない何かが現れようとしている。ぞわりと空気が震え、その目に見えない重苦しさに美玲は恐ろしくなってぶるりと震えた。
「偉大なる精霊王よ、今こそ、ここへ!」
大きく円を描くようにトルトが杖を振るうと、雷のような轟音が鳴り響き、美玲は思わず耳を押さえた。
怖い、と恐怖を感じるのに目を閉じることができない。
まるで全て見届けろと何かに言われているような、自分の意思と反したことが体に起こっている。
やがて光を切り裂くようにして現れたのは、巨大な白銀の孔雀みたいな鳥だった。
孔雀みたいな、というのはそれが本当の孔雀よりもはるかに大きく、教室ひとつ分くらいの大きさだ。そして尾羽から伸びる飾り羽のようなものの数は孔雀のそれよりも少ない。
白く輝くその孔雀に似た大きな鳥は、所々に飾られた七色に光る長い尾羽を揺らしながら、光柱の間いっぱいに羽を広げ羽ばたいている。
その優雅な姿に誰もが目を、そして心を奪われた。
その鳥が出現する前に感じた恐怖は、美玲にはもうなく、ただみとれて眺めていた。
「精霊王よ、お出まし頂き感謝致します」
恭しく跪くトルトに頷き、精霊王がその白銀の翼を女王の檻に向けて伸ばした。
「その人に近付かないでもらおうか」
だが太陽のように眩しく輝くその翼が金木犀の檻に触れようとした時、制止する何者かの声が響いて“何か”が精霊王の翼を弾いた。