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女児誘拐事件と超能力

初投稿です。

登場人物それぞれの情報量を理解しながら読むとより楽しめるかもしれません。

更新は超スローペースですが、読んで頂けると幸いです。

どんなことも失敗しない完璧な主人公の話を、是非お楽しみください。

私には、出来ないことなんて無かった。

今まで、何かに苦労したことも無かった。

しかしそれは覆された。突拍子もない事件によって。

『完璧美少女』とまで言われた私が苦悩することになったのは、これが始まりだった。


『神隠し!?目撃者無しの行方不明事件』

朝刊に目を通し、私は朝食を済ませた。

学校に行く支度をし、友達の梨奈との待ち合わせ場所に向かう。

時間はピッタリ。しかし梨奈は時間より早く来ていたらしく、待たせてしまったようだ。

「ごめん梨奈、待った?」

「んー、ちょっとだけ。それより凛、今日のニュース見た?神隠しがどうのってやつ!」

今朝新聞で読んだ大見出しの内容だ。詳しくは見ていないが、大まかな事は覚えている。

「うん、見たよ。不思議だよね。」

「淡々としてるなあ…もっとわくわくしない?」

「神隠しなんて起きるわけないでしょ。ありえないことは小説の中だけで十分。」

「じゃあ、誰かがやったって言うの?」

「目撃証言は無いらしいけど、人為的なもので間違いないだろうね。」

「そっかー…うーん、オカルト研究部の私としては調べたいんだけどなー、今日は夜まで塾があるからなー。」

わざとらしいイントネーションと共に、チラッと目配せをしてくる。代わりに調べてくれという事なのだろう。

「…調べてくればいいんでしょ。」

「さすが我がオカ研のエース!気が利くねえ!」

放課後の暇つぶしが増えたんだから、ラッキーと思うべきか。

その後は他愛の無い話をしながら学校に向かった。


「最近神隠しがあったらしいから、お前ら気をつけろよー」

「どう気をつけるんですか先生ー」

学校の帰り。周りもこの話題で持ち切りのようだった。

梨奈は居残りのようで、私は一人で帰ることになった。一緒に帰る人がいないのは寂しいなあ。

そんなことを考えながら歩いていると、背の高い男子高校生が歩いているのを見つけた。

その高校生は一人の小さな女の子を連れ歩き、ニタニタと笑いながら私の横を通り過ぎる。考え事にでも夢中になっているのか、その目は私を捉えていなかった。

…何故だか私は、違和感を覚える。

高校生だとわかったのは近所の高校の制服を着ているからだ。しかし、見た感じ下校中なのに女の子を連れているのは何故なのだろうか。

仲の良い親戚に会ってついでに、と考えたが会話が無いみたいだ。そんな微妙な仲だと知っていて預けることは無いだろうから、この線は恐らく無い。

では赤の他人?面白かったとか信頼できるとか、物で釣られたとかいう理由で付いて行ってるのか?

いや、違う。その証拠に、女の子の表情に笑顔が無い。

脅されている可能性も考えてみたが、怯えているわけではなさそうだ。

なんというか、自分の意思で動いているわけではないような…そんな気がする。

少し付いて行ってみるか。

私はその怪しい高校生を追った。しばらくすると、安そうなアパートにたどり着いた。

高校生の一人暮らしは別に不思議ではないが…あ、今女の子を部屋に入れた。でも、無理やりでは無いから事件性は薄そうだ。

幼女と高校生が一緒に住んでいるだけ。ただ預かっているだけかもしれないし、もしかしたら家族と一緒に住んでいるのかもしれない。

私はこれが無駄足だったと信じ、家に帰ることにした。

次の日、その女の子は行方不明者の一人として新聞に載ることになった。


「ねえ凛!今朝のニュース見た!?また神隠しにあった人が出てきたって!」

「共通点は被害者が『幼女』ってことと、買い物中だったりメール中だったりで、親が子供に対しての意識が薄い状態の時。」

「つまり、この事件の犯人である『神様』はロリコン?」

「…当たらずとも遠からずってやつかな。『神の仕業』で片付くなら警察要らないし。」

梨奈の話からファンタジー要素を除けば、普通の女児誘拐事件なのだが。

犯人はロリコン…これに意味はあるんだろうか。いやそんなことより、どうやって幼女を部屋に連れ込んだのかが気になる。

それこそ神の仕業のようだが、ありえない。常識的に考えて不可能だ。

「うーん…あ、超能力はどうよ?超能力!オカルトっぽくない?」

安直な考えだ…と、いつもなら流すネタだが、今回はそうとしか思えなかった。

「そうかもしれない…」

「えっ、どうしたの凛。超常現象ネタはいつもすぐに流すのに。」

「いつもはありえないから流してるだけ。でも今回は状況が状況なの。」

「…なんか、私が持ってない情報を持ってるような口ぶりだね。」

しまった。つい口を滑らせた。

「この事件は確かに不思議だけど、凛がそこまで気になるようなものじゃない。何か不思議なことが起きた時は『ありえないことは起こらない』って言っていつも予想的中させるような凛が、そんなこと言うはずないもん。」

いつも度外視する可能性について考えているせいか、言葉まで注意が回らなかったようだ。

「凛。私にもその情報教えて?」


放課後、梨奈と一緒に昨日見たアパートまで行くことになってしまった。

「そんな怪しい人、すぐにでも引き止めたら良かったのに。お得意の武術でバシッと!」

「そういうわけにもいかないでしょ。正当防衛でもないし。」

「そんな当たり前のことくらいわかってるよ。声かけるくらいしなかったの?」

「女の子連れてるだけで声かけるやつも大概だと思うけどね…でも、あの被害者が行方不明になったってことは、恐らくあの高校生が犯人。間違いないと思うよ。」

「そういえば、あの女の子がいなくなってすぐ事件の内容が報道されたみたいだけど、普通そんなに早く報道されるの?」

「親がかなりの過保護で、門限過ぎてからツテを使って、テレビで報道させるように促したんだって。理由は『女児誘拐事件と関係があるから』らしいよ。」

その親と知り合いではないが、ブログやツイッターを見て情報を集めた。帰ってから色々調べていたが、次の日にはそれについて報道されるなんて思わなかった。

「うーん、公園かどこかで遊んでたら近づかれてって感じかな?」

「そんなところだろうね。GPSでもつけてればよかったのに、携帯を持たせると怖いって持たせなかったみたい。」

「過保護だけど娘が外に一人でも平気な親か…矛盾してるなあ。」

そんな会話をしてるうちに、例のアパートについた。

「ここがその神ロリコン高校生がいるところ?」

「変に繋げないの。それにまだ決まったわけじゃないし。」

「じゃあ、凛はどれくらい怪しいと思ってるの?」

「…90%ぐらい。」

「いつも自信満々なのに珍しいね。ますます犯人が気になるよ。」

私の90%は梨奈からしたら自信なさげに見えるようだ。

「あ、あの人が容疑者?」

アパートから昨日の高校生が出てきた。何の変哲もない、普通の人だ。

「とりあえず後をつけてみよう。また幼女を連れてたら声をかけるってことで。」

二人で隠れながら様子を伺っていると、その高校生は公園に入っていった。ただ眺めているだけなのか、それとも品定めをしているのか。辺りを見渡しながら奥のベンチに座った。

私達は公園の右側にあるベンチに座り、高校生が動き出すのを待つことにした。

「なんか、おじいちゃんみたいだね。」

…確かに、子供が元気に遊ぶ姿を見て昔を懐かしむ老人のように見えなくもない。失礼とはわかっているが、そう言われるとそうとしか見えなくなってくる。

「そんなことより公園で一人佇む高校生が怪しいってところを気にしてほしいんだけど。」

「凛だってちょっと面白いと思ったでしょ。」

「私は別に…あ、立ち上がった。」

その高校生は追いかけっこや砂場遊びをしている集団ではなく、一人でブランコに座っている女の子に近づいていった。年齢は見たところ6歳くらいだろうか。

そして双方とも口を開くことなく、二人で公園を出て行った。

「…ギリ不思議じゃないね。」

「でも一応声をかけてみよう。道がわからないふりでもすれば違和感無いでしょ。」

小走りでその二人に追いつき、私は声をかけた。

「あの、すいません。少しお時間よろしいですか?」

「あっ、はい。なんですか?」

その高校生は突然挙動不審になった。視線をあちこちに泳がせ、上ずった声で返事をした。

だが、こんなことくらいはよくあること。ダウナー系のコミュ障がよくする行動だ。

「道を訪ねたいんですが、この辺に飲食店はありますか?あんまり外出することがないので、詳しくなくて。」

「えっと、ここをまっすぐ行って、右に曲がってすぐのところにあると…思います。」

「ありがとうございます!…あ、その女の子可愛いですね。これからどこか行かれるんですか?」

その高校生は一瞬嫌そうな顔をした。会話するのが嫌なだけなのか、それとも…

「まあ、ちょっと用事が。では急いでいるので。」

このままでは行ってしまう。でも、そこまで不自然ではなかったし、気のせいで引き止めるのも…

その時、突然梨奈が口を開いた。

「あ、そういえばこの子、私の親戚に超似てるわ!いやー、やっと思い出したわー。」

高校生は驚いた表情になり、冷や汗が出てきている。

ビンゴだ。この高校生は何か隠している。

私も梨奈がかけたカマに合わせた。

「あ、本当だね!もしかして本人なんじゃない?」

「まっさかー!私この人に初めて会ったしー。」

その高校生の表情は、どんどん青ざめていく。

しかし高校生は何でもない風を装って口を開いた。

「勉強で忙しかったし、人と話すのが苦手でいつも親戚同士の集まりには参加してなくて…」

「あれ?私の親戚に高校生がいる家庭なんていたかなあ?みんな成人してた気がするんだけどなあ?」

完全に遊んでいる。自分のかけた罠に引っかかった獲物を見るのがとても楽しいようだ。

「ッ…、き、気のせいじゃないかな?俺はこの子とも仲良くて」

「え~?私この子と仲良いけど男の子とはほとんど遊ばないって言ってたよ~?」

作り話だからどうとでも言える。梨奈が笑いを必死に堪えているのが、私にだけはわかった。

でもどうして、この子はさっきから口を開かないのだろう?夕飯の事でも考えて、自分の事を話してると気付いてないのだろうか?

ずっと表情すら変えないその女の子は、まるで人形のようだった。

しかし、女の子は突然口を開く。作り物ではない、しっかりとした人間の声だった。

「私だって男の子と遊ぶよ?言ってなかったっけ?」

「「…ッ!?」」

私と梨奈は驚愕した。この作り話に合わせるように、話の重要人物である「親戚の少女」として入り込んできたのだから。

無論、梨奈が今まで話していたことは全部適当だ。私は嘘を見抜くなんて造作もないことだったし、間違えるなんてはずは無い…が、その女の子の心境はわからなかった。

心ここに在らずというか、何も考えず話しているというか…とにかく、この女の子は梨奈の知り合いらしい。

『偶然』どこかで会ったことがある人物だった?そんなわけない。だとしたら、仲の良い親戚の顔を忘れている梨奈は相当な阿呆だ。

「ほ、ほら。君の記憶違いだったんだよ。じゃ、僕はこれで…」

「待って。」

私はそそくさとこの場を離れようとする高校生の肩をむんずと掴み、呼び止めた。

「ま、まだ何か?」

「あの子が言ってたの作り話なの。なんでその女の子、話を合わせられたの?」

「…ッ!」

高校生は女の子を置いて逃げ出した。しかし、逃げられるはずがない。

私はあらゆることで相手に負けたことがない。とあるアスリートの世界記録ですら、とある学者が専攻する学問の知識ですら、私はそれを凌駕している。

公表して『あらゆる分野で世界最強』と認知されても、なんら不思議ではない。それが嫌で隠しているのだが。

よって、その逃げ出した高校生が逃げられるわけがなかった。

私は高校生を取り押さえ、身動きを封じた。すると、何かに気付いたように表情を変え、彼は突然叫んだ。

「能力者でも無いやつに負けてゲームオーバーかよぉ!?」

直後、全てを諦めたように深いため息をつき、一切の抵抗をやめた。完全に脱力し、立ち上がる気力すら無いように思えるほど落ち込んでいた。

「…能力者って何?」

「ん、ああ…一昨日、自宅に手紙が届いたんだよ。『エンハンススキルゲームの始まりだ』って。各々が何をしてもいいって書いてあったけど…」

「それで、超能力を使って誘拐…か。」

私は拘束を解き、ありえないと思いながらも、彼の話を信じることした。

「どうせバレないしと思って、つい魔が差しちゃったっていうか…」

「それで?自分の欲しい能力を書いたらそれが実現した?」

もはや検証不可能な事件の真相や犯人の動機なんてどうでもいい。『超能力』というファンタジーな単語に、私は興味をそそられた。

「選択制で、単語がたくさん並んで『欲しいものを選べ』って。」

「その手紙はどんな基準で配られるの?」

「わからない。他に書いてあったことといえば、『能力者同士は必ず面識を持つことになる』ってことぐらい。」

「…そう。」

私は彼を『女の子全員を帰すこと』を条件に、警察には突き出さないことにした。梨奈も、それで納得してくれた。

どのみち警察には信用してもらえないだろうし、同じだろうけど。

私達二人は家路につく。私は今さっき起こった事を、あの高校生が言ったことを思い出していた。

『能力者』『手紙』『エンハンススキルゲーム』『選択制の超能力』『能力者同士は必ず面識を持つ』

どれも気になるが、とりあえず私には関係ないし、今日の事は夢だったと思って早く寝てしまおう。

家に帰ると、お母さんが出迎えてくれた。

「おかえりなさい。遊びに行ったはずなのに、いつもより随分早いわね。どうしたの?」

「梨奈が部活関連で用事あるみたいで、早めに帰っちゃっただけだよ。」

「そうだったの。あ、そういえば凛宛の手紙が届いてたんだった。はい、これ。」

そう言ってお母さんに渡されたのは、何の変哲もない一通の封筒だった。

「ありがとう。携帯持ってない友達からの連絡かも。」

私はそう言って自室に入り、鍵を閉めた。

私の知り合いで、わざわざ家に手紙を出すような人はいない。全員、メールかラインで意思疎通を済ませられるからだ。

ついさっきの話を思い出す。

『自宅に手紙が届いたんだよ』

封筒を丁寧に開封すると、中には一枚の手紙。そこには、こう書かれていた。

「エンハンススキルゲームの途中参戦を許可する 八百万の神より」

読んでいただきありがとうございます。


追記1:最後の辺りとあらすじを修正しました。

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