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おまけ2。設定裏話&小話

感想、ブクマ、ポイント評価をありがとうございます!

嬉しさのあまり、おまけを追加しました。

裏という程のことは無いのです。自分一人で楽しいだけかもしれないのですが、好きな人はいる!そんな感じで加えました。

小話は後半です。そちらだけ読んで下さっても全く問題ありません!楽しんでいただければ幸いです( ´ ▽ ` )


~登場人物について~


騎士。。ライザーダーナット(25)

。。。。強面騎士。支部団第三隊長。剣も拳も強い。戦場では鬼。裏社会に精通し過ぎて左遷される。性格は基本、気さくで穏やか。姉には勝てないと刷り込まれている。

もっと裏社会とのアレコレを描きたかったのですが、筆者に想像&構想力が足りなかった為、中途半端な無双野郎で終わってしまいました。おかしいな、もっと知的な筈だったのに。まあ、ファニーへの溺愛ぶりは良かった気がします。



魔女。。ファニー(20)

。。。。森に住む薬師。孤児。乳児の時の全身火傷と貧乏生活で、細身体型。高値で買い取ってもらえるキューティクルな金髪持ち。楽天的で素直。

予定よりだいぶ小動物的になってしまいました。それが可愛いと評価いただいたので結果オーライです。最後はあんな美人に仕上がる予定ではなかったのですが、まあ、王道大好きなので(笑)



婆。。エリスシア・マクマウス(?)

。。。。コミュ障により、隠遁生活を送っていた凄腕薬師。ファニーを拾ったため、街の住人との交流が濃くなる。10才になったファニーがろくでなしで有名な商人に襲われたのを目撃し、逆上してえげつない報復をした結果、街人に山姥といわれるようになる。故人。

もっとグッサリ、滅多刺しな台詞を言わせたかったです。ツンデレ婆さんです(笑)  ファニーがグレなかったのは、彼女がいつも側にいて、言葉と態度を惜しまずに接したからだと思います。



騎士の姉。。ミリエア・ダーナット(27)

。。。。弟を使い、裏社会を牛耳っていた女傑。旦那と弟と二人がかりで抑えていたのが、弟の左遷によりのびのびと動き始めた。表の家業も活躍中。一児の母。

もっと破天荒な人だったのですが、ただの強引なお姉さんになってしまいました。むう。でも彼女が大活躍だとほのぼの系には戻れなくなりそう(笑)



姉の旦那。。シード・ダーナット(27)

。。。。奴隷商からミリエアが助けた孤児で、ライザーの幼なじみ。娘のリリィ(3)が可愛いが最愛はミリエア。

名前の出る予定の無かった人です(笑)

名前が無かったので性格も決めてませんでした。「草」として育てられていたけど、芸術系に優れてしまい、ピアノも弾けるし、表で活躍することになり、それでミリエアとの結婚も許されたという設定を追加。ファニーのドレスも縫いました。字も綺麗な腕っぷしも強いオールマイティーな男。地味~に一番設定が増えてます(笑)



マルス(26)

存在すらなかった最下剋上キャラです(笑)。書いていて楽しかったです。もちろん彼もドレスを縫ってます。本当、「草」って忍者的なものの筈だったのに。ダーナット商会仕様ですな。



アロルト・ダーナット(32)

彼も下剋上キャラ。商人らしく、家族身内第一の腹黒兄です。眼鏡はありません(笑) 最近、なろうで嫁最高!な男達がいっぱい出る話を楽しく読んでるので、彼も嫁には弱いです(笑) 



ガイス(65)

下剋上キャラ。最初はライザーについて左遷先で色々する感じでしたが、やっぱり彼が活躍するとほのぼの系ではなくなるので存在をカット(泣) ライザーに付いてきてた場合、年齢的に偵察が主な仕事で気が向いたら暗殺、みたいな。そしてたまに坊っちゃんイジリ(笑) あ、現在の「草」のリーダーです。ライザーはついでに鍛えられました。



イリア・ダーナット(50)

彼女も下剋上キャラです。ダーナットの女性はこんな感じ、ということで急きょ王都から来てもらいました(笑)

ほんわか腹黒です(笑) 強敵は彼女でした。まあ、姑だし(笑)



***



~目次について~


その1。

騎士、魔女と会う。

魔女の家、壊れる。

騎士、魔女を囲う。▷▷▷騎士、山姥の謂れを聞く。  

騎士と魔女、婚姻を結ぶ。▷▷▷騎士と魔女は。


その2。

騎士、姉に怯える。▷▷▷嵐再び。

魔女、義姉に捕まる。▷▷▷捕獲。

結婚式。パレードともいう。▷▷▷強敵。

騎士と魔女、お互いを想う。(完)▷▷▷騎士と魔女は再び。(完)



なんか違うな~とサブタイトルを変更したりしましたが、そのままでも良かったかな、と思ったり。

最初は最終話までライザーとファニーはくっつきませんでした。最終話で初めて「愛してる」となる予定が、どうしてか前倒しになってしまい、4話で完結にしようかとも思いました。

が、ミリエアを出したかったし、ライザーの「誰?」もやりたかったので、どうにかしてる内に人物がどんどん増えてしまったのでした。

会話のやり取りが会話だけのやり取りになってしまい、誰がどんな動きをしているか、すっかり読者様の想像力に丸投げするという・・・(((^^;)

きっと筆者が説明するより素晴らしい場面になってる筈!



***



初めて感想をいただいた時は、だいぶテンパりました(笑) 

 ゜ ゜ ( Д  ) ←こんな感じでした。まさか感想いただけるとは、これっぽちも想像してなかったので、嬉しくて頭真っ白でした・・・

返信が一言という具合でしたので(!)、送信してから、これで続きを読んでもらえなくなるかも、とビクビクしておりました。ブクマの件数をチェックして、減ってない!とホッとしたり、読んでくれる人がいる!と感動したり。


投稿して良かったです(#^.^#)


お読みいただきありがとうございましたm(_ _)m





 ~~結婚式前日~~


 夜中。ライザーが夜勤に励み、ファニーが寝入った頃。

 出来上がったファニーのウェディングドレスを、製作者の四人が眺めていた。

「自分で作ってなんだけど、良いものが出来たわ!」

「本当に!久しぶりのいい仕事だわねぇ」

「は~、やれやれだ。ミリエアが型をとってただけでも早く出来たな」

「このレース、模様はいいんすけど、こんな風に加工する時は切り口の始末が面倒ですね」

「そうねぇ。使い方が限られるわね。あなた達が居たから期限内に出来たわぁ。お疲れさま!」

「本当にありがと!シード!マルス!」

「どういたしまして。まあ、これを着たファニーを見たライザーがどうなるか見ものだな!」

「そうっスね! がっつり固まるんじゃないスか?」

「私は、ベールを上げた時に何て言うか楽しみだわ」

「仮化粧した時はびっくりしたわぁ。火傷痕が消えるだけでもう可愛いんだもの!」

「そうそう驚いたわ~。母さんがあっという間にフードを取った時にも驚いたけど! やっぱり前より食べるようになったんじゃないの? ちょっとだけ体つきがふっくらした気がしたのよ。ふっふっふ、腕が鳴るわ~。明日はあんた達もびっくりするわよ~!」

「へえ!それは楽しみだな。真っ赤になって言葉も出なかったら酒の肴にしてやるか」

「さすがに、「綺麗だ」くらいは言うでしょ~!」

「ライザーよぉ? どもりながら「可愛い」じゃなぁい?」

「大女将と姐さんの様子から、俺は「誰?」って言うと思いますね!」

「うわっ!最悪っ!」

「だって坊っちゃん、ファニーさんの顔を見たこと無いんでしょ? 男はガリガリ娘が美人とはあんまり思わないっス。俺はそこに賭けましょう!」

「お!勝負にでたな~。じゃあ俺は「赤面で綺麗だ」にするかな」

「ライザーの赤い顔も珍しくて良いわねぇ」

「私はやっぱり「綺麗だ」って言うと思うわ! あのライザーがデレッデレだもの! 照れもせずにスルッと言う!」

「じゃあ私は「はにかんで綺麗だ」にしようかしらぁ。うふふ」

「うわっ! はにかむ坊っちゃんも気持ち悪いですね!」

「で? 何を賭けるの?三人は「綺麗だ」にしてるけど、マルスはいいの?」

「いいですよ、その方が面白いですからね!」

「じゃ、私は、ファニー謹製の化粧水にするわ!」

「えらい自信だな。俺は酒だな、酒!」

「俺は肉っス! あの食堂の串焼き!」

「じゃあ私は一ヶ月の長期休暇を賭けるわ! 勝ってしばらくこっちにいるのも楽しそうだしぃ」

「「おお~!太っ腹~!」」

「明日の勝負の為にもう寝ましょう。私達がひどい顔をしてる方が笑われちゃうわぁ」

「それは嫌だわ! じゃあ解散! 皆お休みなさい!」

「「お休みなさい」」

 

 そうしてすぐにそれぞれのベッドに入り、あっという間に眠りにつく四人。


 そして、結婚式に続く……




******




 ~~遠征後の若隊員たち~~



 怒涛の結婚式から数日後、いつもの巡回の住人との世間話。いまだに語られる隊長夫妻の麗しさが一段落し、八百屋の親父が言いにくそうに聞いてきた。


「隊長さんは王都出身だって?新婚旅行は長く行くのかい?」

「ご実家に行くのが旅行代わりになるそうだよ。いつになるかはまだ決めていないようだけど」

「行って帰って一ヶ月半くらいじゃないかな?」

「そうか。……アンタらも護衛に付いて行くのかい?」

「いやあ!流石に隊長だってそれは嫌だろう!俺は嫌だ!」

「確かに!目の毒だ!独り身には更に無理!」

「じゃあ、アンタらは残ってくれるんだな?ああ、良かった」

「ん?何で?」


 親父が少し声をひそめる。

「こないだ、アンタらが皆で遠征に行った時に第一隊員が代わりにこっちに来てたろう? あの時に来た連中って、ヤクザ隊長が来る前まで第三隊にいた奴らなんだ」

「あ、だから、留守番を言い出したのか~」

「本当なら一緒に行く筈で、こっちも留守番を頼まなくて済んだのに。こっちに来るのも面倒くさいだろうにな?」

「そりゃ、昔はさんざん好き勝手してたんだ。またそうしに来たんだろうよ」

 

 不穏な言葉が出た。

「え。好き勝手って、どんな?」

「無銭飲食は当たり前。歩く邪魔をすれば子供だって蹴飛ばすし、こそ泥からアガリを取ってお咎め無しなんてこともしてたな。さすがに山姥と黒魔女と七日下剤のお陰で、そこらの娘を手込めにすることはなかったがな。尻を撫でたり、乳を揉んだりと何人も、未婚既婚関係なくやられてたんだ」

 若隊員達の顔が怒りで引きつる。話が聞こえたのか、八百屋の隣の雑貨屋の親父も出てきた。

「昔うちの娘も撫でられてな。しばらくは俺を見ても震えてたんだよ。あれには参った」

「奴らの稼ぎは全部博打だとよ。寮があるから部屋代も要らないし、隊服も支給されるからって、たまに賭博屋に遊びに行くと自慢されたよ。もうただのチンピラだったな」


 騎士団にかかる物は税金から賄われている。騎士学校で、国への忠誠を示すと同時にまず唱えることだ。

「そんな……」

 怒りで言葉が出てこない。


 こちらに赴任が決まり、新隊長に連れられて巡回した時の街の人たちの怯えた様子は、隊長だけのせいでは無かったのか。

 確かに寮だってやたらと煙草臭かったし、部屋に煙草の焼け跡もあった。隊員総出で何日も休みを潰して一部屋ずつ掃除をして、やっと落ち着いた。それを見て寮長が泣いていたのが不思議だったが、そういう訳だったか。


「まあさ、五日で帰って来てくれて良かったよ。めぼしい娘たちは皆家から出なかったし、子供たちも親との手を離さなかったし、無銭飲食程度で済んだからな。食材をまけてやる事しかできなかったが、誰も怪我せずに済んで良かったんだ」

「そうだな。俺も酒を控えたよ。酒屋にとっちゃ大したこと無かったろうが、少しでも多く店に置いておかんとな~。母ちゃんにはいつもそうしてくれと言われちまったが、一日の楽しみだもんな~、やめられんよ、はっはっは!」

「最初は大変な男が来るって皆で夜逃げするかなんて言ってたが、治安が良くなったし、アンタらは真面目だし、隊長は実は男前だったし、嫁さんは美人だったし、街も綺麗になった気がするよ!」

「言われればそんな気もするな!はっはっは!」

 長居してすみませんと二人の親父に断り、巡回に戻る。


「……隊長は、この事を知っていたのかな?」

「どうだろう……知っていたから、ずっと街に出ていたんじゃないか?」

そうか、そうだな。と言いながら、もっと話を聞くべく、酒屋と食堂にも寄るのだった。



「と、いうことがあった」

「クッソ!あいつらぶっ飛ばしてやれば良かった!!」

「落ち着けよ」

「そんな落ち着いてなんかいられるか!」「そうだよ俺らの街で何してくれてんだ!」「遠征帰ってきてからなんか変だと思ってた、そういう事か!」「あの半端野郎どもが!」


「落ち着いて!奴らを!ぶっ飛ばす方法を!考えるんだよ!」


「「「……お、おおお……そうだな……」」」


 酒屋では高価な物から順に持ち出し、それを持って食堂でバカ騒ぎ。どんな理由か、暴れだしてテーブルと椅子を破損。壊れた事に文句を言い、弁償もしない。ついでと言わんばかりに酒瓶も割って帰ったらしい。洗浄して繰り返し使える瓶なのに。

 雑貨屋や家具屋、八百屋に肉屋から色々と融通してもらって営業しているが、奴らがいると他の客が入らない。少し静かにと頼みに行くと、自分らは騎士だから、お前ら平民は自分らに貢いで当たり前とのたまった。


「……いやもう、聞けば聞くほど、煮えくりかえる……」

「まだあるぞ」

「「まだ!?」」


 スラム街の補強を申請していた建物を崩していったそうだ。全部ではなく、ギリギリ雨を防げる程度に残して。これは近くの住民に聞いた。壊された家の人々は前からこういう事を奴らにされていたという。社会のゴミを掃除に来たんだと笑いながら破壊行為や暴力行為をしていくと。

 可哀想だが助ければ次は自分だ。とても恐ろしくて何もできなかった。最近がとても平和で、スラムの連中とも少しずつ交流できてきたのに、また見捨ててしまった。そう泣きながらも、奴らが去った後に怪我人を診療所に連れて行ったのは近くに住む人々だ。

 ごめん、ごめんと泣きながら運んでくれたとスラムの住人は言った。我らの日常だから気にするなとも伝えたと言う。


「「そんな日常あってたまるかぁ!!」」

 何人かが机を叩いて立ち上がる。

「スラムの子供が言ってたそうだ」

 お兄ちゃんたちと、もう遊べないのかな?

 子供たちと遊んだことがある全員がギリギリと歯を食い縛り、爪が食い込む程に拳を握る。

「こんな、俺、こんなに腹が立った事無い……」

「今すぐ行って、ただただぶっ飛ばしたい」

「……その方法を考える。そしてその準備をする。行くのはそれからだ」

 全員が頷いた。


 結局、隊員たちは隊長に話した。動機と作戦を。

 隊長に頼ろうが、自分らで勝手にやろうが、責任を取ることになるのは隊長だということは決まっていて、どうにもならないのだ。普通は。


 前第三隊長は何をしていたのか。調べれば、やはり似たような事をするろくでなしだった。


 騎士とは何なのか。


 自分らが子供の頃、多かれ少なかれろくでもない騎士はいたのだろう。だが子供には英雄のようにしか見えないのだ。男児の憧れなのだ。それが。それが。


「良く調べてある。これなら、どこからも文句は出ないだろう。よく一ヶ月でまとめたな」

 そう言って、我らが英雄様はニヤリと笑う。

「……お気づきでしたか」

「そりゃあな。この一ヶ月、全員が毎日おっかない顔して仕事してるんだ。非番の筈の奴らも何だか聞き込みしてるし、何か有ると思うだろう? いいぞ。好きにやれ。後は俺がいる。っていうか付いて行きたいわ~!」

「隊長は駄目っスよ!こっちが緊張するじゃないですか!」

「隠れてソッとさ、」

「余計に気になりますって!」

「……しょうがない。どれ、俺の判が必要なのを全部出せ」

「え。あの、今更ですけど、いいんですか? あ!隊長には脅されて判を押したって感じでお願いしたいんです」

 それを聞くと隊長はささやかに微笑んだ。


「世の中は好き勝手に生きられる職業なんざ無い。それをやるのは金を持ってる年寄りか、よっぽどの馬鹿だけだ。いつまでも騎士団に居すわる年寄りは困りものだが、馬鹿が騎士なのは害だ。クソの役にも立たん。俺らは国に絶対の忠誠を誓う。その「国」を勘違いするヤツは結構多いが、間違いは正さなければならん。今回は人数が多いし悪質だからな、徹底的にやれ。俺の命令だ」

「「「「 !! 」」」」

「もしも、うちの奥さんに触れていたなら、存在全てを消すところだ。お前らの案は俺がやるより人道的だ。俺のシマを荒らして行ったのは過去の事だろうが許さん。毟れるものは全て毟ってこい!」

「「「「 はい!! 」」」」


 そうして隊長を残し、全第三隊で移動。合同訓練と称して、元第三隊の第一隊員を、こちらはその三分の一の人数でぼっこぼこにし、慌てて出てきた親戚の貴族に街で壊した物への補償要請書を突き出す。金額を見て目が飛び出る親族。


 五日の滞在でこんな額になるわけ無い! そう叫ぶ馬鹿共に、冷静に返す。

「五日の内で何かを壊した事は認めたな。言質取りました~!」


 物損補償は、遡って十年請求出来ると法務に確認を取った。貴族ならば十五年前まで。街中に聞き込んで細かく明細を作った。その書類に法務の判がある。ということは強制である。親族が青ざめた。

 それから、と今度は暴行罪とそれに対する賠償要請書。騎士団からの名誉毀損への損害賠償要請書。税金滞納への支払い命令書。騎士学校卒業証剥奪。それによる降格又は永久減俸。


 どんどんと積み上げられる書類に親族たちは蒼白になっていく。一人がとうとう叫んだ。

「お前とは縁を切る!二度とうちの敷居を跨ぐな!」


 本人に支払い能力が無ければ身内に支払い義務が回ってくる。とてもではないが額が大きすぎて仮払いもできない。馬鹿でも道理は解っていると思っていたのに、こんなに外堀を埋められた馬鹿を息子と呼ぶのも恥ずかしい。


 もう関係ないとばかりに親族たちは帰っていく。その際にこの件には関わらないと血判を押してもらう。これで馬鹿共の支払いは、確実に己だけでしなければならなくなった。

「今回は元第三隊のみの処置ですが、これが前例になります。これからは態度を改めた方がいいですよ」

 その事を示す書類を掲げる。その一枚の書類の下の方に、支部団長のサインと判、現第三隊長のサインと判が連名で書かれていた。


 第一隊長は蒼白を越えて白くなった。今の第一隊もけして素行がいいとは言えない。その事までもしっかり調べられている。自身も貴族の端くれということを盾に色々とやってきたのだ。それが罪であるという御墨付きが目の前にヒラヒラとしている。


 ライザー・ダーナット。


 王から緊急時の判断を任されている男。戦場を駈け、凱旋を果たした男は、その権利を賞与として賜った。即ち、彼の決定は王の言葉とほぼ同じ。支部団長のサインはオマケだ。

 第一隊は詰んだ。


 晴れ晴れとした顔で帰ってきた隊員をライザーは労った。まったく、こんなに末恐ろしく成長するとは頼もしい限りだ。

 留守番は一日だけだった。


 補償金はダーナット商会で立て替えた。もちろん有無を言わせず元隊長含む元第三隊全員を商会で一番過酷な現場に放り込んだ。危険な採掘現場だが危険手当も付いてなかなかの給料になるはずだ。三十年も毎日働けばその他の滞納分も返せるだろう。


「今回も隊長の凄さを思い知って終わったな~」

「「確かに」」

「その隊長に誉められてスゲエ嬉しい……」

「「確かに!」」

「一番心配だったスラムがどうにかなりそうで良かったし!」

「「確かに!」」

「お前の啖呵、隊長っぽかったな!」

「「確かに!」」

「お前のボコり方は隊長に似てる!」

「「確かに!」」

「お前の腹黒さに、隊長感心してたぞ」

「「確かに!」」

「確かにってなんだよ!? まあ、地元じゃないけどさ、ここに愛着があるって自覚はしたよ。もしもの時は非情な手だって使うことにした」

「だな」

「これからも、こうやって守って行こう」


 全員で拳を掲げた。




******



 ~~結婚式の夜~~


「あれ?戻ってる!」


 祝いの宴もお開きになり、制作組の四人が早々に寝床に引き揚げ、風呂を済ませたライザーがソファでボーッとしていた。軽く寝ていたのだろう、「ライザーさん?」という声で目を開けたら、黒魔女がいた。


「やっぱり落ち着きます。素っぴんが恥ずかしいし」

「はは!俺も自分で傷の無い顔が微妙だったわ」

 そう言いながら両手を伸ばすと、大人しく腕の中に入ってくる。


「まだ恥ずかしいの?」

「ちょっとだけですよ。とって下さい」

 気持ちゆっくりフードをとれば、少し火傷痕が残る真っ赤な顔があった。つい、吹いてしまった。

「もう」

「だって真っ赤だよ。ああ、ごめん」

 両手をファニーの頬にあてる。

「化粧をしてなくても普通に可愛い」

「フフ。褒めてます?」

「痕も含めて可愛く見えんの」


 口づける。軽く。深く。


 再び真っ赤になったファニーが聞く。

「……今夜は、どうしますか?」

 ちょっと間があいた。

「……あれから、まだ3㎏増えてないだろ?」

「わかりますか?」

「わかるよ。それまでキスで我慢する。時間はまだいくらでもあるから特に焦ってない。それに、」

「それに?」

「奴らがいるうちはしたくない!」

 と、ライザーが階段の方を見ると、


「あ、バレた」

「だから、それ以上乗り出すとバレるって教えたろう」

「フフフ。ファニー、可愛いってぇ、良かったわねぇ!」

「あまり女神に無体な事はしないで下さいよ」

「そんじゃ、バレたから大人しく寝るわ。おやすみ~!」

「邪魔して悪かったな、おやすみ」

「さすがに眠いわぁ、おやすみ~」

「女神が叫んだら邪魔しに来ます!おやすみなさい!」

 そして、それぞれの扉の閉まる音がする。


 その音で我にかえるファニー。ライザーを見つめる。

「な?」

「……そう、ですね……だいぶ、恥ずかしいです……」

 真っ赤に俯く。


 表情がなにもかにも新鮮だ。

 想像していた通りのような、それ以上のような。

 見つめ合えてると分かることが嬉しい。

 そして、飽きもせずにまた言うのだ。


「愛しているよ」


 これからは、キスと一緒に。








小話とは、何文字まででしょうか・・・?(笑)


若隊員達の奮闘、いかがだったでしょうか?やはりの、こんな筈では無かったというくらい長くなりました・・・彼らの頑張りは、もっとダイジェストになる予定でしたが・・・まあ、いっか。彼らの名前は考える気も起きませんでした(笑) メンバーが何人かもよくわかっていません(笑) これからも頑張って欲しいです。


ダーナット家の人々は楽しいです。ファニーが割り込めるようになるのはいつですかね~。


***


先程もかきましたが、本当に、読んでくださって、評価してくださってありがとうございます!

小踊りしてます。ニマニマしながら小踊りです。変態です。

次回作もお会いできれば幸いです。

ありがとうございましたヾ(*>∇<*)ノ



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― 新着の感想 ―
[一言] 部下たちはいい意味で腹黒く逞しく成長しましたね。ライザーさんの教育も良かったのでしょうが、彼らも上司の期待に応える努力ができる優秀な子たちなんでしょうね。
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