笹木優子
笹木優子。
健二の友人兼悠一の後輩ちゃん。
見た目めっちゃ可愛い女の子。周りは彼女を無垢純粋だと思っている。
先輩に興味を持ったのは高校に入学した次の日の放課後。
その日、くじ引きで隣の席になった白井健二と何気ない会話を楽しんでいた。
話してみて分かった。健二は周りに関心がない。自己紹介の際もぶっきらぼうな態度で入学2日目にしてクラスメイト達に距離を置かれている状況。
私にはとても都合が良かった。
健二は少し長い髪と眼鏡で見にくいがなかなか綺麗な顔をしている。
今まで手に入れたモノの中に似たのがあるが可愛いモノや綺麗なモノはいくらあっても困らないし、目の保養になる。愛でる対象は多ければ多いほど良い。
彼も磨いて飾れば今以上に綺麗になるだろう。
想像して笑いが溢れそうになる。
あぁっ!!早く彼を飾りたい!!
興奮し震える心臓に歓喜を覚えながら健二に触ろうと手を伸ばした。すると。
「あっ。見つけた。」
柔らかい声を耳が拾う。
声の聞こえた方に目を向ける。
目を見開き心臓が大きく音をたてた。
教室の入口には1人の青年がいた。
ネクタイの色からして3年生なのだろう。彼は笑みを浮かべたまま私達の方に近付いてくる。
この学校に私の知り合いは1人もいない。だとすれば健二の知り合いなのだろう。健二も心なしかさっきより雰囲気が柔らかい気がした。
でも今はそんな事どうでもいい。
「は、初めまして!!健二君のお知り合いですか?」
今まで染めた事がないのだろう自然で綺麗な黒くサラサラの髪。少し長い襟足は首筋にかかり外側に可愛らしく跳ねている。黒目部分が多いのか大きく見えるアーモンド形の目元。柔らかそうな頬は色白で女子が嫉妬しそうな滑らかな肌質だ。
彼が欲しい。そう思った。
「初めまして。君は健二の友達かな?健二の兄、白井悠一です。」
「お兄さんなんですか!!私、健二君の隣の席の笹木優子っていいます。」
彼は突然しゃしゃり出た私に嫌な顔をせず笑顔で接してくれた。
嬉しかった。これは運命なのだと確信した。
彼と私は出会い結ばれる運命。
あぁっ!!胸が張り裂けそう!!!
* * * * * * * * * * * * * * * * * *
「見ぃ~つけた。」
委員会の後、先輩と約束を取りつけ部室で準備をして待っていたのだが先輩がなかなか来ない。
先輩は少しのんびりな性格をしている。そういう所も嫌いではないが今日はあまり時間がない。
仕方なく迎えに行くと階段の下でぼぉっと立っていた。目が虚ろで小さく何かを呟いていた。
その姿は迷子になり泣くに泣けない子供みたいで。
「先輩、どうかしたんですか?」
「...ゆう..こちゃん?」
「はい。優子です。」
先輩の声は震えていた。
顔色もいつもより白くとても美しい。
健二も真っ白になってくれたがやはり白は先輩の色だ。穢れを知らない白。早く彼を愛でたい。
「早く部室に行きましょう。先輩に私の作品、見てほしいんです。」
先輩の手を握り部室の方角へ足を進める。
最初はただ引っ張られていただけだが少しすると握った手を弱い力で握り返してきた。
チラっと様子を伺うと先程より顔色が良くなっていた。
残念だ。
「優子ちゃんの作品って事は縫いぐるみ系?」
「人形ですよ。とても可愛く綺麗な人形達。」
初めての人形は白い兎だった。
「そっか。女の子は人形好きだよね。」
次は当時の自分と同じ大きさの犬。
「この学校の手芸部は私だけですからなんでもできるんですよ。」
中学に上がる頃には完璧な人形を作れる様になった。
可愛い可愛い人形。
部室に着く頃にはいつもと同じ先輩に戻っていた。
白さが足りない肌は残念だが私の好きな笑顔を見せてくれているので良しとしよう。
扉を開き先に先輩を入れる。
先輩は初めて入る部室に興味が湧くのか首をキョロキョロ動かしている。
あまり動かれると困ってしまうが問題ではない。
ポケットから黄色い液体の入った注射器を取り出し、背後から勢い良く先輩の首に突き刺した。
液体を注入した瞬間、先輩は何も出来ずに床に倒れ込む。できれば傷はつけたくないが身長差があるのでキャッチは出来ない。まぁ、大丈夫だろう。
「..あっ...なん..。」
床に倒れた先輩は状況が理解できていない。震える口で必死に喋ろうとするがうまく喋れていない。
当然だ。注射器の液体は神経麻痺を引き起こす毒花の液体。通常の3倍の濃さに調合してある物だ。
心臓の弱い人なら数分で死にいたる危険な物。
「先輩苦しいですか?ごめんなさい。でも大丈夫ですよ。苦しさが無くなる頃には私がいっぱい愛してあげますから!!」
考えただけで笑いが止まらない。
ついに先輩が私のモノになる!!!私だけの可愛い可愛い人形さんに!!!
初めはどうしようか。磨いて飾って綺麗にして。飾るだけなんて勿体ない。あぁっ、なんて贅沢な悩みなのだろう!!
そこで、フッと思い出した。
先輩の前に手に入れた人形を先輩にも見せてあげよう。
そうすれば先輩も寂しくないよね。
「先輩先輩見てください!!」
部室の一部を隠す様に掛けてあるカーテンを開ける。
カーテンの内側には椅子に座った人形。
少し長い黒髪に細めの眼鏡。ブルーのネクタイは1年生の色。
長い手足がだらんと力なく肌は生き物ではあり得ないほど白い。
椅子に座った人形はピクリとも動かない。
「あぁ...ぁ...っ。」
「ほら先輩...。」
弟と一緒なら寂しくないでしょ?
* * * * * * * * * * * * * * * * * *
小さい頃、一匹のハムスターを飼っていた。
いつも一緒に遊んでいた。
私はその子が大好きだった。
だからずっと一緒にいられると思っていた。
でも何の前触れもなくハムスターは死んだ。
理由は分からなかったし分かりたくなかった。
動かないその子を手離せず何日も何週間も一緒いた。
するとその子の肉体は腐り始めた。
可愛かった姿は醜く変化し腐った部分から異臭が広がる。
その姿に恐怖し親に泣きついた。
《アレ》は《あの子》じゃない。《あの子》は何処に行ったのと。
親は困りながら教えてくれた。
生き物は命が尽きると肉体を離れてしまい残された肉体は役目を終えてしまうのだと。
小さい私はそんなわけない。あんな可愛かった子があんな姿になる筈ないと泣き叫んだ。
その出来事がきっかけで生き物が近くにいると体が拒否反応を示す様になってしまった。
親は私の将来を心配していろいろ試した。
でも全部駄目だった。
そんな時、親の仕事仲間から1体の人形を貰った。
灰色が綺麗な猫の人形。それはまるで今にも動きそうなほどリアルな猫だった。
人形をくれた人曰く、この猫は元生きていた猫だが処理と手順をふんで人形になったのだと言う。
鳴いたり動いたりしないが代わりに一生一緒にいてくれる。可愛い人形だ。
私は、人形を抱き締めた。
最初の頃は上手く人形を作れなかった。
素材を傷つけたり処理が甘く《出来損ない》にしてしまったりした。
でも数をこなす内に1人で上手く作れる迄に上達した。
部屋の中は人形でいっぱいになり幸せだった。
ある日。
小学校も卒業間近になり町を目的もなく散歩していると近所の公園で泣いている子供を見つけた。
金髪の髪に緑色の瞳。とても可愛らしい男の子だ。
男の子は片言の日本語で親とはぐれたのだと必死に説明してくれた。
私は男の子を慰める裏側で男の子を欲していた。
どうすれば手に入るだろう。
そんな事を考えていた。
男の子を説得し家に連れ帰る。
家に着くと男の子は泣き疲れたのか寝てしまった。
私は嬉しくて堪らなかった。
何日かして警察が家に来た。
「小さな外人の男の子を知らないかい?」
「知らないよ。」
私は笑顔で答えた。
警察が帰った後私は自室に戻った。
部屋には沢山の可愛い可愛い人形達。
可愛くて綺麗でずっと一緒にいられる私の人形さん達。
小柄な子達は台や棚の上。中くらいの子達はカーペットやベットの上。
「君はどうしようか?」
その子を抱き上げ抱き締める。
可愛い可愛い金髪のお人形さん。
あぁっ。なんてなんて可愛いのだろう。
気持ちが満たされ、なんとも言えない感覚が全身を甘く痺れさす。
上機嫌にキスを贈る。
あぁっ。なんて幸せなのだろうか...。
後輩end《 少女と人形遊戯 》
唯一の女子、優子ちゃん。ある意味ヒロインみたいなポジションの子ですw
周りの大人が全員医療又は薬関係の研究等やってるので小さい頃からそっち関係に強いパイプ持ち。
野端の薬草を定期的に狩りに行って使う毒のストックを作るのが日課。
優子ちゃんは面食いというより綺麗・可愛い系を愛してターゲットを絞ってます。
因みに、健二は完全に愛でるだけの対象。悠一の事はラブです。一目惚れしちゃったw
でも正しい愛し方を知らない子なもんで愛し方も優子ちゃん流になっちまいました。
この後は大好きな人形に囲まれて悠一と一緒にラブラブ同居をしながら人生をランデブー(笑)する事でしょう。
もし健二が生存だった場合は優子ちゃん死亡フラグでした。危なかったねw