魔王様のお呼び出しって奴です
評価してくれた方、とても嬉しいです。
時間を見つけてちょくちょく書いていきます。
結論から言うと、魔術の許可は呆気なく下りた。
「お嬢様、準備が出来ました」
「ありがとう」
ミラさんが入れてくれた紅茶を飲む。
いい香りと、彼女特有のさっぱりとした味が口の中に広がった。
「今日のご予定は如何なさいますか?」
「何時も通りです。
庭で魔術訓練をした後に読書をしようかと思っています。」
「分かりました。」
そう言って私の後ろに佇む彼女。
顔には少しばかり笑みが見て取れた。
「・・・・どうかしましたか? ミラさん」
ちょっと不思議になって聞いてみた。
「いえ、魔術使用許可が下りて以来お嬢様が笑顔を見せる機会が増えたので・・・」
そう言って柔かに微笑む
むぅ、確かに魔術の訓練は楽しいけど・・・そんなに無邪気だったかな
「早いもので、お嬢様も6歳ですか」
すとんと、イスから降りる
身長もまだまだで、110cmにこの間届いたばっかりだ。
ミラさんの趣味に感化されたのか・・・あれ以来ゴスロリ服を日常の様に着ている。ワケでない。
ちゃんと普通の服を着てるよ!
「まだ6歳ですよミラさん、それより早く訓練に行きましょう」
ミラさんの手を取ってズンズン歩く
昨日発明して試したい魔術が山ほど有るのだ、時間は有限である!
その後ろに困った様な、嬉しい様な顔をしたミラさんが居た。
メイドさんの日常
「う~ん・・・・」
「どうしたのミラ?」
「イル・・・」
「何か悩み事?」
「うん、まぁ・・・そんな所ですかね」
「もしかしなくてもエル様の事でしょ」
「・・・・・・。」
「図星ね、貴方の悩みはそればっかり」
「イルにお嬢様の悩みを聞いてもらった事って前にありましたか?」
「してなくても後輩が言ってるわよ?
エル様お付きのミラさんが色々聞きに来るって」
「それは・・・・申し訳無い」
「で、今度はどうしたの?」
「・・・・・イル、つかの事お聞きしますが」
「うん」
「・・・・・・・・・魔道書を読んだ事は有りますか?」
「・・・・え?」
「魔道書です」
「魔道書って、あの・・・分厚い奴?」
「はい、あの分厚い奴です」
「確か 上之上・上之中・上之下 って感じで全9冊の本よね?」
「はい、その本です」
「・・・読むと思う?」
「・・・読まないと思います」
「じゃあ聞かないでよ」
「うぅむ・・・・・」
「はぁ、結局貴方の悩みは何なの?」
「それが~・・・」
「うん」
「お嬢様が魔術の訓練をしているのですが・・・」
「あー、庭先でやってるアレね
結構噂になってるわよ」
「訓練中あの本をずっと読んでいるのです」
「・・・・・・・・・・は?」
「ふと顔を上げたと思うと2つの魔術をいきなり合わせ始めたり・・・良くわからない事をブツブツ呟いたり・・・」
「えっと・・・」
「挙句の果てには見たことも無い魔術を使ったり・・・」
「・・・・もしかしなくても”初源魔術?」
「はい、初源魔法です」
「・・・・・・・・・それって確か、ケイズ様やテルエ様でも無理って言われてた奴じゃ・・・」
「はぁ~、あの年齢で読む本が魔道書ですか・・・どうしましょう」
「え!? 悩むところソコ!?」
「お嬢様は聡明ですから、幼い外見に反して使用人にも気を使ってくれます」
「あぁ・・うん、それは凄い感じてる」
「我儘も全然言いませんし・・・」
「凄く手の掛からない良い子よねー」
「・・・・・其れに魔道書」
「結局戻ってくるのね!?」
「こう・・・お嬢様はとても美しいのですから、着飾ったり、お化粧したり、もっと・・・こう女の子らしさと言いますか、そういうのを追求して欲しいです!」
「いや、でもまぁ・・・本人の趣味なんじゃないの?」
「・・・魔道書が?」
「魔術が!」
「しかし・・・いや、でも・・」
「はぁ、貴方が可愛いもの好きなのは知ってるけど・・・重症ね」
こうしてメイド達の日常は続いていく......
「エル、少し良いかしら?」
とある日、何時も通り魔術の訓練をしていると母様に声を掛けられた。
いつも忙しくて仕事に追われている母様・・・なんだろう?
「その前にちょっと待ってね?」
「ぇ・・・ふぎゅっ!」
「ん~、エル成分補給中~・・・」
母様が万力の如き力で抱きついてきた。
母様、苦しい、マジ苦しい
「うん、ありがとう。 お母さん全快よ」
もう少しで私の体が全壊でした。
「えっとね、実は陛下からお呼び出しが有ったの」
「・・・陛下?」
もしかして魔王様って奴だろうか
「魔王様って言ったほうが分かり易いかしら?」
どうやら当たったらしい。
「えっと、魔王様が私に何か御用なんでしょうか?」
私自身何かやった覚えがない。
あ、でも知らない内になにかやらかしていた・・・なんて事だったら怖いかも・・・。
「そんな怖がらなくてもいいわ。
エル、半年前位に魔術の試験に行ったわよね?」
魔術の試験・・・・ああ、あれか。
半年前に受けた魔族云々ナンタラ試験、まったく名前を思い出せないのはご愛嬌。
小さな魔力球を浮かべる事を始め、上級魔術まで扱う試験だ。
「はい、確かに受験しましたが・・・」
「あれの結果が昨日届いたのよ」
そうだったのかー。
と、他人事な私。
「えっと・・・それで何故魔王様から?」
「その結果が、ね?」
少し顔が綻んでいる母様、こんな母様滅多に・・・・見れるか。
私に抱きついている時の母様は常時顔が蕩けている。
「なんと魔術第2級クラス! 上位魔族階級並だったの!!」
バーン!と後ろで爆発が起きた。
つうか庭が爆ぜた、地面が抉れてクレーターが出来てる。
母様・・・ミラさんが泣きそうになってます。
後片付けの事考えてください。
「・・・そうなんですか」
対する私はなんというか、無反応に近かった。
魔族2級というのがどれ位凄いのか分からなかったから、と言うのも有るが特に興味が無かったのだ。
私は階級とかそう言う肩書きに対して執着しないタイプなのです。
インパクト付ける為に庭を犠牲にしたのにごめんなさい。
「あら、あんまり嬉しそうじゃないわね」
母様が意外そうな声を上げた。
「いえ、嬉しくない訳じゃないんですが・・・・。
どれ程凄いのか実感出来なくて・・・」
そう私が言った時。
ー ならばッ! 私が説明しようッ!!
酷く聞きなれた声が真上から聞こえた。
なんとなく予想できる結末を口に出さず、上を見上げる
其処には黒い物体が高速で落下する光景だけが広がっていた。
「エエエェェェェェェェェェルウウウゥゥゥゥゥゥ!!!!」
父様が音速で落ちてきた。
「こぉぉぉのぉぉぉおおお私のぉおおお抱擁ぉぉぉぉおおお受け取ってッ」
「去ね、この馬鹿当主」
突然目の前から消えた母様が、落ちてきた父様の顔面に飛び蹴りをかました。
ゴキリと嫌な音が響き、父様がもの凄い勢いで吹き飛んだ。
あ、首が変な方向に曲がってる・・・・。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁ......」
音速より速い速度で屋敷の壁を突き破り、平原に消えていく父様
地面と水平に飛んでいく様はちょっとシュールだった。
つか母様の筋力こえぇ~・・・。
石造りの強化壁が3つ大穴を空けている、その光景に少しゾッとした。
対してミラさんは更に泣きそうになっていた。