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家族って奴です

このぐらいの量が丁度良いのですかね?

「お嬢様~、朝ですよ~」


蛇のメイドさん・・・もとい、ミラさんがドアを開け部屋へと入ってきた

見れば朝日が顔を出していた。

なんだ、もう朝なのか。


「おはよう ござ、います」


たどたどしく挨拶をする。


「おはようございます。

 お嬢様、今日は如何なさいますか?」


寝癖で彼方此方ぴょこぴょこと跳ねた髪をブラシで整えながら、今日の予定を聞かれた。

さてどうしようか。

正直本を読みたい所だが・・・・。


「お散歩・・したい、です」


「お散歩ですね! わかりました。」


そう言って意気揚々と髪を整えたブラシを置き、タンスを漁り始めた。

中からゴスロリ服みたいなのが大量に出てくる。


「お嬢様!折角の外ですから、少しおめかししちゃいましょう!」


「え・・・・」


さあさあ、と催促される僕

まぁ正直薄手のワンピースを着用している時点で男の尊厳とかそーいう大事なモノは色々置いてきてしまった気もするが・・


「・・・・はい」


今の僕には抵抗する術が無かった。









「しかし、お嬢様は聡明ですね」


ミラさんの腕に抱かれ、僕は屋敷の中庭で景色を眺めていた。

ゴスロリチックな服装で多少目立つが、ミラさんが近くに居る事がわかると

「あ、ミラさんのチョイスか」 みたいな感じで直ぐ興味を無くす。

・・・・そんなんでいいのか、お付きのメイド。


「そう、でしょうか?」


「はい。おまけに勤勉で・・・・普通お嬢様位の年で話せる子供などそうはおりません。」


それは僕が異常だと言いたいのかこのやろー


「流石はラーグ家のご息女です」


や、ぶっちゃけ血筋とかあんまり関係ないと思うんですがね。

僕は曖昧に笑って誤魔化した。

しかし、分かってはいたが・・・この屋敷はデカイ

内装からして豪華だったがこんなに大きいとは予測していなかった。


(エライ所に生まれてきてしまった・・・)


「散歩の後は如何なさいましょう?」


思考を遮る様にミラさんが話しかけてきた。

この後か・・・・・どうしよう


「・・・・まじゅつを、つかってみたいです。」


「魔術・・・ですか」


ミラさんが難しい顔をした。

まぁそれもそうだろう、普通魔術を習い始めるのは10を過ぎた辺りからだと本に書いてあった。

一応暴発とか、制御出来ずに自爆しない様にする為だとか


「そうですねぇ・・・正直、私の一存では決め兼ねます。

 後でケイズ様の所に聞きに行ってみましょう」


ケイズ様と言うのは僕の父様だ。ちなみに本名は「ラーグ=ケイズ」


「わかり、ました」


そう言ってミラさんの腕に抱かれ、屋敷の中に入って行った。












僕がある程度文字を理解出来るようになって、初めに手を付けたのが「魔術」だ。

この技術は前世に存在していなかった。

人間というのは好奇心を捨てきれないのだろう、僕は貪欲に知識を吸収して行った。

子供の記憶力も相成って、その成長速度は確かに不気味だっただろう。


(ふぅむ、魔力と魔術の関係・・・・魔法にも色々制約とかがあるんだなぁ)


正直面倒なので、詳しい説明は省くが・・・つまりはこういう事だ。


魔力を貯める→イメージを与える→範囲指定→発動! 


ね、簡単でしょ?


範囲指定は主に付属魔法や広範囲に効果のある魔法の際に使用する

単発なら然程必要な技術とは言えないだろう。


(あとは生まれながらにしての魔法の才能、魔力の量と言う所か)


その辺は問題無いと踏んでいる。

と言うのも・・・・・。



「お嬢様はあの御2人のご息女ですからね!

 魔法の才は勿論、魔力量だって並みの魔族じゃ比較になりません!」



というミラさんの助言を貰っているからだ。

ならば試さない理由は無いだろう、僕は新しい玩具を与えられる様な高揚感を得ながらミラさんの腕の中でうずうずしていた。


「お嬢様、そんなに楽しみですか?」


ふと顔を上げると、ミラさんが微笑ましいモノを見るような目で僕を見ていた

顔に出ていただろうか


「ごめんなさい・・つい、うれしくて」


「いえいえ、何も悪いことは有りません。

 でもお嬢様はいつも大人びていましたから・・・年相応の顔が見れて嬉しいのです」


ちょっと照れくさくなって笑みを零した。


「ではお父様の書斎に行ってみましょうか、もしかしたら許可を下さるかもしれません。」


「はい」


2人で長い廊下を進む

無駄に大きいだけあって、移動には時間が掛かった。


「お嬢様、おはようございます」


「おはよう、ございます」


屋敷内のメイドさんが挨拶してくれたので、たどたどしく返事を返す。

帰ってくるのは笑顔で、それには可愛いものを愛でるような視線が混じっていた。

・・・・何かもうどうでも良くなっていた。男とか・・・女とか。

階段を上り、何度か角を曲がる。

屋敷3階の奥、其処に父様の書斎が有った。


ミラさんが僕を地面に下ろす。

その後、こんこん、と木製の扉を叩いた。


「誰だ?」


中から低い男性の声が響いた。


「ミラです。」


そう言うと扉が自然と開いて行く。

木製特有の鈍い音を立てて、その部屋の全貌が見渡せるようになった。

見渡す限りの本、本、本

その中央に鎮座する鉄製の豪華なデスクが何とも不格好に見えた。


が、肝心の父様の姿が見えない。


「・・・・・? ケイズ様?」


ミラさんが書斎を見渡す。

だが何処にも見当たらず、首を傾げたところで。




 一陣の一風が僕を襲った。




「はぶッ・・・」


物凄い勢いで体を縛り付けられ、身動きが取れなくなる。

四方八方から迫り来る圧力、その正体は父様だった。


「おぉぉぉぉぉぉぉ!!! エルウゥゥゥ!!」


もんのっすごい力で抱きしめられる。

正直苦しい、ぎぶ、ぎぶ、しんじゃうて。


「とおさま・・・くる、しい」


「おお、ごめんよエル!!余りの嬉しさについ・・・」


ふっと力が弱まる。

しかし一向に離れる気配はない。


「あぁ、嬉しいなぁ!エルが父様の部屋に来てくれるなんて!!

 もう嬉しすぎて泣いちゃいそう!!」


いや、父様実際泣いてますよ貴方・・てか、何をそんなに号泣してるんですか。


「よぉし!こうなったら仕事なんて放置してエルと一杯遊ん....」


「ケイズ・・・?」


先程まで血の涙を流していた父様がぴたりと動きを止めた。

後ろを見ると、紅いドレスを纏った女性が居る。

何時の間に・・・・。


「テ・・・テルエ?」


父様が恐る恐る、といった感じに振り返る。

その顔は絶望に染まった様に見えた。


「ケイズ・・・魔王様への報告書は出来上がったのかしら?」


よく見ると若干魔力が溢れ出しているのか、女性の周りだけ空間が歪んで見えた。


「い、いや、も・・勿論今作ろうとして居たところでね・・?」


「今私の耳にはエルと一杯遊んじゃうぞー、的な発言が聞こえたんだけど?」


女性の怒気が一層激しくなった。

父様の冷や汗がヤバイ、マジヤバイ


「いやいやいやいあいあやいあ、あれは”仕事なんて放置してエルと一杯遊んじゃいたいけど私は仮にも領地を収める最上流貴族としての仕事に誇りを持っているからまた今度遊ぼうねエル と言おうとしただけだよ!いやホント!」


物凄い早口で言い訳をした。

父様の冷や汗は最早足元に水溜りを作る程である。


「・・・・・そう」


女性は冷ややかな視線を父様に向けたあと、父様の腕の中に居る僕をそっと抱き上げた。

そして突然頬ずりをした。


「ん~、エルの頬は柔らかくて気持ちいいわ~・・・」


「あ、ずるい!!」


父様が抗議の声を上げる。

しかし女性・・・もとい、母様はそんなこと知らんとばかりに頬ずりを止めなかった。


「エル~エル~、あぁなんて可愛らしいのかしら」


「か、かーさま」


抗議の声を上げようとするが恐らく無駄だろう。

僕は助けを求める視線をミラに送ったが、苦笑を返された。ミラ酷い。


「テ、テルエ・・・わ、私にも頬ずりを・・・」


「ケイズ、貴方に上げるエル成分は無いわ」


エル成分ってなんぞ


かくして父様の書斎は、僕の呻き声と、母様の嬉しそうな声と、父様の絶望の絶叫と、ミラノ苦笑で満ちていた。










それで、当初の目的はどこに行った。


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