転生って奴です
はじめです
目の前は暗い。
閉ざされた視界の中で唯一考えることと言えば
(僕、死んだのかな?)位の事である。
体は不思議な感覚で覆われ、視覚は勿論、聴覚、嗅覚も反応しない。
直前の事は覚えている、僕はトラックに轢かれそうな少年を助け・・・代わりに死んだのだ。
実に呆気なく。
(死・・・・死、かぁ)
あまり実感出来ない。
それもこの不思議な浮遊感を伴う感覚の為か、あまり死んだと言う実感を持てずにいた。
特に痛みも無く、悲壮感もなく、肉体はともかく精神的にはなんら落ち着いてる
(・・・・もう少し体を鍛えておけば良かったかな)
本の虫であった自分を少しだけ恥じる。
しかし其れが後の祭りであることも知っている。
僕は溜息を吐いたつもりで流れに身を委ねた。 その時。
「-----------------------!」
(!?)
死んだ後の体には少々響く声が聞こえた。
「-------------------!!」
「----!?」
「--------!!」
次々に聞こえてくる声とも呼べない声。
それに僕は堪らず耳を抑えようとする、しかしその動作は何者かに拒まれたように阻止された。
(なに、これッ・・)
頭がガンガンする。
唯永遠に響く声、なんとも言えない不快感が込み上げてくる中で一向に藻掻く。
やめてくれ、その声を止めてくれ、と
しかしそんな思いが届く筈もなく、声はどんどんと大きさを増して行った。
(やめっ・・て)
頭が痛い、割る、割られる。
声が反響し、まるで生き物の様に頭の中を駆け巡った。
ズンズンと重みが増してくる痛み。 それに遂に耐えられなくなった僕は
(もうッ!無理!!)
今は無き口を動かした。
「おぎゃぁぁぁああぁあぁぁああああああ!!!」
(へ?)
存外近くから聞こえた声、透き通るような声、けど酷く幼稚だ。
ソレを確かめるべく目を開く。 まず光が溢れ、視界が真っ白に埋まった。
徐々に光に目が慣れた先にあったのは
酷く歪んだ顔ぶれだった。