疑惑って奴です
まず感じたのは、地面の冷たさだった
「う・・・ぅ・・・」
気分が悪い
なんだか急激に酔った様な感覚、視界がグルグル回っていた
上体を起こし、頭に手を当てる
ひんやり気持ち良いが気分の悪さは治らない。
申し訳程度に目を細めて辺りを見渡せば、月明かりに照らされた廃墟が目に入った。
「・・・・・・此処、どこ?」
当然と言えば当然だが、全く知らない場所だった。
「ういしょ!うーーんっ!」
扉を押す、扉を押す、扉を押す
でも残念!扉は全く開く気配が無い!
「はぁっ・・はぁ・・・ふぅ」
息を整えて、壁に身を任せた
取り敢えず外に出れそうな扉を開こうと善戦したが、全くビクともしない
この扉錆びてんじゃないの?
「・・・・どーしよ」
辺りを見渡す・・・が、この扉以外に外へ通じる様な場所は無かった
壁に穴でも空いていればと思ったが、存外丈夫な物で古くはあれど脆くはない。
これは完全に閉じ込められたね!
と、開き直る始末であった。
一息吐いて、ちょっとした段差に腰を落ち着ける
月明かりが部屋の半分ほどを照らし、幻想的だなーなんて思考した
「さて、ここから出るには・・・」
テレポート的な魔法とかは・・・・うぅむ、有れば便利ですな
壁抜けとかは・・・・無いな
いっその事魔法で壁をぶち壊す!・・・のは、私を攫った犯人が気付くかも
「あ、そうだ、犯人!」
思考して初めて気付いた
おいおい、そうだよ、私を攫って来た犯人。何故私を攫ったのか。
しかも最後に見た影。
無駄に巨大だった気がするのは記憶の錯乱って奴だろうか?
「!・・・・まさか」
其処で私は最悪の想像に行き着いた
恐怖の余り体が震え、全身から血の気が引いた
「犯人は・・・・・・・・・・・・・ロリコン!?」
非常に残念な思考だとは言わないで欲しい。
しかし、だとすれば非常にマズイ!
もし犯人が私が起きたことを知れば、あーんな事やこーんな事をするかもしれない!
危ない!主に私の貞操が!
「は、早く逃げないと」
上下左右に隙なく視線を送る
必死で出口を探す中、ふと月明かりが目に飛び込んだ
見れば天井に大きな穴が空いているではないか。
キタコレ!
私は素早く魔法演唱した。
『白い翼』!!
瞬く間に私の背中に白い翼が現れた
羽が月明かりを反射して、神々しく羽ばたく
二度、地上で羽ばたいて一気に上昇した。
空気を切り裂き、建物の外へと勢いよく飛び出す
同時に冷たい風が私の頬撫でた。
「・・・兎に角、街の方に戻らないと」
少し行った所で速度を緩め辺りを見回し。ふと月明かりの眩しさに目を細めた。
そして同時に気付く。
「・・・・・・・・・・・・ぁ」
「お目覚めですか、姫よ」
ー それは、月を背にした竜の姿だった。
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さて、突然だが私はドラゴンと遭遇した時の対処方法を知らない
勇敢な勇者的な存在なら雄叫びと共に聖剣やら伝説的な何かで戦いを挑むのだろうが
生憎と私は魔法使いで尚且つ女だ。
そして私自身ドラゴンとは戦いたくない。いや、だって怖いし。
だって凄くデカイよ?もう300m級だよ?
デカすぎてビビるよマジで、と言う訳で雄叫びを上げながら戦いを挑むと言う選択肢は無い。
無いったら無い。
と言う訳で残された選択肢が私の行動だ。
「・・・・・・・・」
私はドラゴンの前で正座していた。
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
無言である。
瓦礫の散乱した廃墟の中央広場に、ドラゴン一匹と少女一人が向かい合って座っている
・・・・少女は正座で。
実にシュールな画だった。
静寂がやけに五月蝿く聞こえる。
(お、重い・・・)
そう、重い。何が重いって空気が重い
なんなんですかね人を攫っといて、あ、いや、まだこの人・・・じゃなかった
ドラゴンが私を攫ったっていう証拠は無いけれども!
なんか流れ的にこの人で間違いない気がする。
と言う訳で何か喋って下さい、いや、本当に、喋って、いやむしろ喋れ。
「・・・・・・姫」
きたぁぁぁぁぁぁッッ!!
という歓喜を上げたりはしない。
私は冷静に言葉を返した。
「・・・姫?」
はい、冷静じゃないですね。
というか姫って誰のことでしょう?私?貴方以外居るのは私ですもんね。
分かってるけど認めたくないの!馬鹿ーー!
「・・・姫は姫ですか?」
もうね、意味わかんない。
「・・・エルはエルですけど?」
私も意味わかんない。
「・・・・・・・・エル、と言う名なのですか」
「あ、エルは愛称です。本名はエルシアって言います」
目を細めて私を見るドラゴン
私の言葉の意味をゆっくりと噛み砕いているような印象だった。
(あれ・・・なんか、悪い人(竜)じゃない?)
そんな思考がふと浮かぶ
てっきり私を攫った奴なら、極悪非道のドラゴンとかそんなのを想像していた
村を焼いたり、殺戮を繰り返したり、街を無闇矢鱈に破壊したりと。
しかし言葉も丁寧だし、なによりこのドラゴンからは悪意を感じなかった
「あの・・・」
意を決して口を開く
「・・・何故、私は此処に居るのでしょう?」
取り敢えず最も根本的な事を聞いてみる事にした
「それは私がこの廃墟まで貴方を運んだからです」
実にあっさりと答えた
ああ、やはり貴方が私を攫ったんですね
「・・・・因みに、何故?」
そう、一番聞いたいのは何故私を攫ったのかだ
「姫」とやらに関係があるのか、という事でもある。
最も優先されるべき質問事項であり、コレを知らなければ始まるものも始まらない。
ドラゴンは大きく息を吸い、吐いた
口から少しだけ炎が漏れる。熱い、熱いて。
空を見上げると、ポツポツと話しだした。
「・・・1000年前、この世界は戦火に呑まれていました」
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戦争。
それは生物である以上、避けては通れない道なのかもしれない
この世界もその例に漏れず、1000年前に大規模な世界戦争が勃発したそうだ。
『魔族国家間戦争』
通常、魔族は種族ごとに国家を形成し生活している
その領地は種族別にバラバラで、決して交わることはない
故にこの戦争までは何の争いもなく、平和な日々を過ごしていたそうだ。
ー 切っ掛けは”欲 だった。
「妖精族」俗に言うエルフの種族が、とある魔術を完成させた
その魔術はこの世の禁忌とも言える所業
死者蘇生。
エルフの王はコレを封印、禁術とした
そして決して外に漏れることの無いよう、全エルフに釘を刺した。
それで終わりに見えた。
しかし、その情報は何処からか漏れる事になる。
あとはその情報が火の如く国家の間を飛び回るだけ
禁術を我が手にと各国がエルフの領域へと侵攻し、各国同士の乱戦が始まったのだ。
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「特に妖精族は一番の被害を被りました
嘗ては10万近く居た妖精族も、今はもうその半分を居らんでしょう」
「・・・・・戦争」
歴史書で戦争自体の事は知っている
唯、そんな理由がある事は知らなかった。
「しかし、其処に現れたのが貴方だ」
「・・・・え」
突然の名指し
私は驚き、顔を上げると・・・其処にはこちらをじっと見つめるドラゴンの瞳があった
灼熱の様に赤く、力強い瞳
ゆっくりと、だがその言葉は確実に私の心を震わせた。
ー 「貴方が天使なのだ。 エルシア」
最近勢いだけで書いてます
( ・_ゝ・)ツマンネ だったらスミマセヌ




