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流星人魚  作者: ルチル
第一章 ひとつめの海
1/1

星々のたくらみ

 ―――――――――夜―――――――――


 月明りの下、暗い海の上に突き出た小さな岩、涙落の岩。

 その上で泣いている、ひとりの人魚。


 空には、残りわずかになった星たち。

 昔は、あんなにたくさんの星が輝いていたのに……。


 その人魚の頬から、涙がキラリと一粒、流れて海へと落ちた。

 それとともに、夜空から星がひとつ、スーッと尾を引いて流れて消えた。

 ……またひとつ、星が死んだのだ。



 天上の星帝界から下界へ向けて、長老オリキスが弓を引いていた。

 矢を放つと、それは真紅の光となって、岩場の人魚の胸を一発で貫いた。

 人魚は、体をビクンとのけぞらせると、そのまま暗い海の中へ静かに沈んでいった。



「……仕留めたのか?」

 年若くして星帝王の座に就いたライラオントが、オリキスの後ろから歩み寄ってきた。

「むろんじゃ、お主もそこで見ていたのじゃろう? 」

 オリキスは声の方に振り向きもせず、悲し気に目を伏せた。

「ああ、確かに貴様の矢は、流星人魚の左胸を射抜いた」

 ライラオントは足を進めてオリキスの横に並ぶと、下界の海へと目を向けた。

「さすがはオリキスだ、我々星の神々の中で、弓の名手として最高位の称号を得ているだけのことはある。……だが」

 ライラオントは、オリキスの肩に手を置いた。

「星帝界一の弓の名手オリキスとて、寄る年波には勝てまい……」

 冷笑を含みながら、ライラオントはその場を立ち去って行った。


 オリキスは目を開けると、再び涙落の岩を見下ろした。

 ――死ぬでないぞ、サリア。お主はこの星にとって、最後の望みなのじゃからな――

 心の中で祈ると、オリキスは弓を引いた。

 矢をあてがわなくても、つると弓の間にすでに青白い光の筋が走っている。


 ――これからお主は、望む望まないにかかわらず、修羅の道を歩むことになる。そのときに、何かの役に立つかもしれん。わしからの贈り物だ、受け取るのじゃ――

 オリキスは下界に向けて、青白い光の矢を放った。

 その光は砂浜に突き刺さったまま、主を求めてその名を呼び続けるのだった。






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