四:煉獄の炎 ―必罰の時―
そしてさらにエライジャはウォルフガングに追い打ちをかけた。
エライジャはカイラに向けて右手のひらをかざす。そして、解放の呪文を詠唱した。
「今こそ、我、エライジャ・ブラックウッドの名において、火精カイラの戒めを解く!」
カイラの首にはめられている戒めの力が光り輝き始めた。
「――外法――!」
そう叫ぶと、解放の呪文は効果を発揮してまるで割れたガラスのように砕け散ったのだ。
――パキィン!――
「あっ?! 戒めが!?」
「馬鹿な? 勝手に他人の精霊を解除するだと?」
驚愕するウォルフガングを無視してカイラは急いでその場を離れた。そして自分の娘と強く抱き合ったのだ。
「フレイア!」
「お母さん!」
身を守る術も、助けも、特別な力も無くしたウォルフガングは自分が絶体絶命の状況に追い込まれたことを悟った。
「は……ひ……」
蒼白の表情で立っているのがやっとだった。そんな彼にカイラは低い声で告げる。
「あなた、私の火精としての力のほどはよくご存知ですよね?」
顔中に汗をかいてウォルフガングは命乞いをする。
「ま、まて――、話し合おう――、お互い見逃そうじゃないか」
その言葉をカイラは無視した。
「今まで散々、殺したくないものを殺させられた、焼きたくないものを焼かされた、拒否すればゴミクズみたいに痛めつけられた!」
その言葉は長年にわたる恨みつらみを明確に表していた。
「今こそ、骨の髄まで燃え尽きろ!」
そう叫んでカイラは右手から巨大な火の玉をウォルフガングに投げ払った。
――ボォオオオンッ!――
火の玉は爆発となりウォルフガングの全身に燃え広がる。つま先から頭まで、指先に至るまで、余すところなく火で包まれ、ウォルフガングは生きながら焼かれたのである。
「ぎゃぁあああああああっ!」
凄まじい絶叫が響き渡る。地面を転げまわりのたうち回る。だが命は燃え尽きない。通常の炎ではない、精霊の力の魔法の炎だ。致命傷を与えないようにしながら、その肉体を隅々まで焼き尽くすのだ。まさにそれは生き地獄。
カイラはそれを無視して、エライジャの元に駆け寄ると頭を下げる。
「火精カイラにございます。お救いいただき心より感謝申し上げます」
「礼なら、あんたの娘さんに言ってやってくれ。ここまで来れたのはフレイアのおかげだからな」
その言葉にフレイアとカイラは笑みを浮かべて見つめあった。
そしてカイラは告げる。
「エライジャ様、契約を」
「おう」
そして左手を差し出すと、娘フレイアの聖餅痕に並ぶように、自分の聖餅を刻印する。
「これで契約はなりました。娘と共にあなたにお使えいたします」
そして3人うなずき合う。
「よし、それじゃ、丈之助の方に合流しようぜ」
「はい!」
「行こう! エライジャ!」
勝利をおさめてエライジャは歩き出す。その背後で骨まで焼き尽くされたウォルフガングがようやく絶命していたのだった。




