参:フレイア、大人になる ―抗う母、カイラ―
エライジャに認められたという事実がフレイアの心に自信と誇りをもうたらそうとしていた。
「今度こそ、エライジャの力になってみせる! そしてお母さんを取り戻すんだ!」
地面に自らの足でしっかりと立ったフレイア、右手の指鉄砲でしっかりと狙いを定めたその時だった。
――キュィィィィ――
かすかな音がしてフレイアの体は急速に輝き始める。
「おいどうした?」
驚きエライジャが振り返れば、光り輝くフレイアの体は急速に成長し始めた。
「何が起こってる?」
手足が伸びて、背丈が伸び、胸や腰回りの大きさも成長を見せた。髪もさらに輝きボリュームを増し、ウエストのくびれもセシリアやマリネアにも負けないくらいの魅力を見せる。腰回りにまとった炎の布地も巻きスカートのように広がり、今までとは違う大人びだシルエットを見せていた。
「まさか〝大人になった〟のか?」
そのまさかだった。怖がり怯えながらエライジャについてくるだけだった火精の少女は、その能力の成長に連動するかのように危機的状況下で成長を果たしたのだ。
「これなら! エライジャと一緒に戦える!」
そう言いながらも指鉄砲から火弾を2発3発と次々に打ち放つ。威力も飛距離も従来以上であり十分に敵を倒しうるものだ。
「急に、いい女になりやがって! だが、それだけできれば十分だ!」
「うんっ! 任せて」
「よし! こっちから攻める! ついて来い!」
「はいっ!」
エライジャとフレイア、2人は肩を並べてウォルフガングの元へと一直線に向かう。2人を囲んでいた守備兵は、ホールカービンから大きめの火弾をぶっ放して吹き飛ばした。そしてついにウォルフガングをその目の前まで追い詰めたのである。
「どこへ逃げるつもりだ! ウォルフガング!」
「貴様、丈之助と一緒にいた拳銃使い」
「おう、エライジャってんだ。覚えておけ」
「ほざけ! いちいち覚えていられるか!」
そして、ウォルフガングも精霊を召喚する。
「出てこい! カイラ!」
ウォルフガングの背中から、姿を現したのは、フレイアの母親であるカイラだった。ウォルフガングによる長年の酷使によって、その姿は明らかにやつれていた。
「やれ! 超特大の火球で一気に吹き飛ばせ!」
いつものように命令を下して、邪魔者を排除する。何年も何年も繰り返し続けられたやり方だった。だが――
「嫌です」
明確な一言が響き渡る。
「貴様、奴隷の分際で」
「あなたが何と言おうが、目の前にいるのは私の娘です! 例えあなたにこの身が消されようとも娘を攻撃することはできません!」
「おのれ! 精霊の分際で!」
ウォルフガングは怒りに我を忘れて反逆を開始したカイラを責め立てるように、戒めの力を発動させる。絞殺具で首を絞められたようにカイラは苦しみ始めた。
「ぎゃっ! かっ……はっ……」
首を押さえてのたうち回るカイラ、だがその間にもエライジャとフレイアは瞬く間に肉博してきた。
「おめえ、いつまでそんなことやってるつもりだ!」
「取り巻きの兵隊さんたちは、全部片付けたよ。ここに残っているのはあんた1人だ」
ウォルフガングがハッとして周囲を見回すが、支援攻撃をしている守備兵の姿はほぼなかった。無断で撤退したのである。
「いない? 勝手に引き上げた?」
「どうやらそのようだな」
そう言いながら、ホールカービンを準備してそれをウォルフガングに向けて突きつけた。
「お前のような身勝手極まりない指揮官に、いつまでもついてくるほど暇じゃねえんだよ」
見放された、退路はない、精霊の力は拒否された、それがウォルフガングの現状だった。




