壱:練兵場 ―エライジャたち外に出る―
一方で、下水路の突き当たり。T字型に分かれている箇所で、丈之助は左に、エライジャは右に曲がった。
砦の裏手の馬場や練兵場がある辺り、そこから流れている下水を受け止める水路だ。それゆえにこちらは排泄物より泥汚れの水の方が多い。
フレイアがため息をつきながら言う。
「やっと臭くなくなったね」
「さすがにあれはきつかったぜ」
「左に折れたセシリアたち、大丈夫かな?」
「さぁな。まぁ、諦めて引き返すということはねえだろうがな」
そう言ってる先に、目の前に梯子状のものが見えた。地上へと抜ける場所だ。
「見えたぜ出口」
「うん」
それまで冗談を言っていたフレイアは冷静な面持ちで気配を察していた。
「感じる――、お母さんの気配だ」
「ビンゴだな」
そう言いながらエライジャは腰に下げたコルドリボルバーを右手に持ちシリンダーを開ける。
「はい」
フレイアも絶妙なタイミングで、シリンダー弾倉に火弾を即座に詰め込んだ。
――チャッ!――
右手の返しでシリンダーを閉じると周囲の気配を警戒しながらはしご状の階段を上っていく。
「おそらく複数待ち構えてるはずだ。外に出たら一気に攻撃するぞ。弾切れさせるな」
「分かった」
セシリアも母親を取り戻せるかどうかの瀬戸際だ。真剣そのものだった。
フレイアはエライジャの背後にしっかりと張り付くと全てをエライジャの判断に委ねた。エライジャは右手に銃を握りながら器用に梯子を登ると、最上部の木製の扉に手をかける。
「行くぞ」
「うん」
呼吸を合わせて2人は扉の外へと一気に飛び出した。
マルクスの居城である砦は、上から見ると正方形に近い形をしている。アルヴィアの街に向けて威圧するようにその城壁を誇らしげにさせており、街から見て反対側の方には、砦の敷地とほぼ同じ広さの馬場を兼ねた練兵場が広がっており、その練兵場の周囲に城壁が張り巡らされている。練兵場内には兵営と馬をつなぐ厩舎と、さらには武器や装備を作る工廠が設けられていた。
ほぼ真四角い敷地の砦側から、敷地の中央に飛び出すように馬をつなぐ厩舎があり、下水との接続口はそこに開いていた。
扉から外に出てすぐに厩舎の中にも3人ほどの兵士がいた。
エライジャは引き金を握りしめると、撃鉄を左の手のひらで煽って、ファイアリングで3連射する。胴体と胸と眉間、正確に打ち抜いてその場で絶命させる。
他の敵に警戒しながらエライジャは練兵場の広場へと一気に駆け出す。
「やつはどこだ?」
攻撃対象であるウォルフガング、その姿を追えばやつは馬にまたがり練兵場の敷地の出口に繋がる城塞門へと向かおうとしていた。
「あれだ!」
フレイアの声と同時に、腰の後ろに備えたホールカービンを左手で引き抜いて薬室を開く。フレイアが阿吽の呼吸で薬室内に炎を仕込み即座に薬室を閉じた。
「誰が逃がすかよ!」
ホールカービンライフルを左手で構えて素早く狙いをつけると引き金を引く。
――ゴォオン!――
爆音が鳴り響き、火炎弾が火の粉をまき散らしながら飛んでいく。
――ドォオオオオッン!――
敷地の出口である城塞門ごと吹っ飛ばされて、練兵場からは外部に出ることはできなくなった。
「そうそう簡単に逃げられたら、こっちもメンツが立たないんでな!」




