四:女の恨みは恐ろしい ―地精ガイアナ、リカルドに惚れる―
「は?!」
グレゴールは何が起こったのかわからないまま巨大な水の刃に空竹割に左右に真っ二つにされた。この見にくく肥え太った悪党は土壇場で裏切られたのだ。
「いつまでも私が、お前のような人間のクズの言いなりになってると思ったか!」
ガイアナはそれまでのたまりにたまった鬱屈を晴らすかのように言い放った。無残な死体となったグレゴールを無視して、勝利者となったリカルドに歩んでいくと、俯き片膝をついて貞淑に言い放つ。
「地精ガイアナと申します。あなたのような方を長年お待ちもうしておりました」
目の前で起こった突然の裏切り劇に驚きつつも、リカルドはガイアナの言葉を優しく受け止める。
「長い年月、耐えに耐えてようやくってところか」
「はい、このような争いが起きる状況になったらいつでも裏切る覚悟でした」
そしてリカルドの背中にいつも寄り添っているマリネアは口元に笑みを浮かべて言い放つ。
「女の恨みってほんと怖いよね」
「ええ」
マリネアとガイアナ、2人は優しく笑いあった。そしてガイアナはリガルドに尋ねた。
「お願いがございます。あなたの精霊として契約していただけませんでしょうか? 前の主人は落命したことで契約は切れました」
リカルドは手にしていたカットラスを収めるとその言葉を優しく受け止める。
「ああ、大歓迎だぜ。その前に戒めを外してやらないとな」
「え?」
驚くガイアナにリカルドは右手を差し出し手のひらをかざしながら告げる。
「この俺、リカルド・モッシュの名において汝ガイアナの戒めを解く」
リカルドの手のひらから光が放たれ、ガイアナの首にまとわりついていた戒めが浮かび上がる。
「――外法!――」
――パキィン!――
戒めはガラスが砕けるように消え去った。驚くガイアナにリカルドは言う。
「この6年間、色々と準備してたからな。精霊を解放する魔法の呪文もちゃんと調べといたんだ」
「この人顔に似合わず小まめなのよ」
マリアナがにやりと笑う。
「さ、一緒に行こうぜ!」
そう告げるリカルドの言葉に、ガイアナは自由を得た喜びの中で目に涙を浮かべてリカルドに抱きついた。
「これからもご奉仕いたします!」
「おう!」
「よろしくね、ガイアナ」
「はい」
マリネアとガイアナ、自由を得た者同士、抱き合ったのだった。
そしてリカルドは、改めてエマを背負い、崖地を下って行った。
「さあ帰ろうぜ――みんなが待ってるからな」
こうしてエマは無事に、リガルドによって救い出されたのである。




