参:水精と地精 ―攻撃の刃と防御の土塁―
リカルドは己の〝はじまり〟を思い出すように気合を入れるようにカットラスを空振りする。
――ブォッ!――
「海でやりたい放題している間に俺の魂は腐っちまった! だから死んだ! それでも運命ってやつが、もう一度、性根を入れ替えてやり直せと言っている! そしてそれが今この時だ! グレゴール! 悪党のお前の命! もらうぞ!」
その言葉にグレゴールは歯を食いしばる。
「なめるなよ! 海のごろつき風情が!」
そう言ってグレゴールは右手を振り上げた。そして奴の背中から精霊が一体姿を現したのだった。
「ガイアナ! 仕事だ!」
グレゴールに名前を呼ばれて姿を現したのは、濃い色の肌の豊満な肉体の緑色の髪の女性だった。胸元や腰回りには黒曜石のような岩が局部を隠していた。
その表情は固く黙々とグレゴールに従っているのがよくわかる。
「はい、旦那様――」
グレゴールが指示を出す。
「土を盛り上げて盾を作れ、地震で奴の足元を揺らし足場を崩せ、そして大穴を開けてやつを閉じ込めろ!」
「はい」
だがリカルドはグレゴールの思惑を分かっているとばかりに先手をかけて水の刃を連射してくる。
ガイアナはそれから自らの主人を守るように土の盾を何枚も立ち上げた。
「土魔法、土塁障壁――」
――ゴッ! ゴォッ!――
絶妙なタイミングでリカルドが放つ水の刃を一つ一つ弾いていく。状況はリカルド側の猛攻にガイアナが土塁障壁を立ち上げるので精一杯だった。
「何をしている間抜けが! さっさとやつを始末しろ!」
グレゴールの罵倒をガイアナは無言で受け流した。リカルドから攻撃に対応するので精一杯と傍目から見てもわかるものだった。
「くそっ!」
グレゴールも身動きが取れなくなってきた。土塁障壁の陰に身を隠しているからこそリカルドの攻撃から守られる。このまま離れれば水の刃の遠当てで狙い撃ちされる。状況は膠着しつつあった。
その時、リカルドは状況を動かすため一気に勝負に出た。
「やるぞ! マリネア! でかいの出せ」
「わかった! 水刃! 行くよ水竜のアギト!」
リカルドはカットラスを最上段に構えると全力で全身を使って振り下ろす。それと同時に巨大な水の刃が一直線にグレゴールの元へと襲ってくる。
それをとっさにガイアナは3倍増しの土塁障壁を作った。
「はは! 残念だったなガイアナの防御力は精霊随一だ! お前たちが力尽きればこっちの勝ちよ!」
するとその時――
「この時を待っていた」
ガイアナが静かにつぶやいた。巨大な水の刃が土の壁に当たろうとするその瞬間。
――ドカッ! ガラガラッ!――
その中央部分だけ突然崩れたのだ。




