八:城内庭園 ――閉ざされる扉――
エライジャがフレイヤに声をかける。
「フレイヤ! 此処から先、弾を切らすな! 連続で行くぞ!」
「分かった!」
右腰のコルトドラグーンの回転弾倉を開いて火弾を仕込む。その手つきと段取りは絶妙であり、フレイヤもその作業にすっかり慣れているのがわかる。
「姐さん! 力、借りやす! 中に入ったらこっちから攻めますぜ!」
「あいよ! まかせな!」
俺も長脇差を抜刀しながらセシリアの姐さんに頼めば、彼女も己の活かし場所を心得ていた。
城の城門をくぐり抜けようとする瞬間、敵も待ち構えてて内側の落とし扉を落下させる。
――ゴォッ!――
格子に組まれた木枠の真下には侵入者を貫くように鋭利な突起が並んでいる。それが俺たちを突き刺そうとするが、俺は長脇差を左から右へと一気に振り回し、刃峰に溜めていた風の斬撃の力を開放する。風の斬撃は弧を描いて大きく広がり、巨大で重厚な落とし扉を一気に粉砕したのだ。
――ドカァアアンッ!――
太い木材は粉砕されて木っ端となり、微塵に散って飛び散る。それを頭に被った三度笠越しに体に浴びながら城塞の中庭へと躍り出る。周囲に一気に目配せすれば、塀の上部の見張り台や、複数の尖塔、敷地の中央に陣取る主館の建物から多数の射手が矢を構えていたのだ。
「射て!」
ウォルフガングの叫びが轟き弓矢の射手たちは一斉に矢を解き放った。まさに雨あられのごとくに矢が頭上から降り注ぐ。しかし俺たちは漫然と逃げるのではなくそれぞれに仕留める相手を見極めてこちらからの攻めに打って出た。
「丈之助! ウォルフガングは引き受けた!」
「なら、あっしはクソ領主を!」
雨のように降り注ぐ矢の中で俺たちはそれぞれに行動を開始した。
――ゴゥン! ゴゥン! ゴゥン!――
エライジャのコルトドラグーンの銃口からフレイヤが仕込んだ火弾が火を吹き、
――ブオッ! ブオッ!――
俺の長脇差が振るうたび、セシリアの姐さんの仕込んだ風の斬撃が宙を舞う。
矢を砕き、石垣を砕き、火弾と斬撃が次々に敵を薙ぎ払っていく。
――ドォオオオンッ!――
鳴り響き石垣が吹き飛ぶ。
――ズザァアアアアアッ!――
高速の斬撃が飛び城壁の上に並んだ弓矢の射手をなぎ倒していく。そして俺たちはそれぞれに〝的〟となる悪党を探したのだった。
とはいえ、そこからが難物だった。ウォルフガングの野郎が部下に命じて入り口という入り口を全て閉ざし始めたのだ。戦争用の砦だ、扉一つとっても分厚く頑丈だ。
「くそっ! 閉じこもりやがった」
とエライジャ、
「吹っ飛ばす?」
とフレイヤが問えば、
「いや、中で待ち構えてるだろう。開けた瞬間に蜂の巣だ」
エライジャがそう答え、俺は、
「悪党っていうのは、妙に用意周到なもんでござんすよ」
状況を打開するにはどうしたらと頭を悩ませていた時だった。
遠くから俺たちに小石を投げてくるやつがいる。
「なんだい?」
風精のセシリアの姐さんが石の飛んできた方向を指さした、
「丈之助! あれ!」
指差した方角には頭に布をかぶった片目のあの男。物陰に隠れて、しきりにこっちに来いと手招きしている。それにピンと来た俺たちは。
「何かあるようですぜ」
「行ってみようか」
「へい」
俺たちは敵の攻撃を避けて、リカルドが手招きをする方向へと歩いていく。そこには砦の地下へと繋がる隠し扉があったのだった。俺たちはリカルドが何を考えているのかわかるような気がしたのだ。




