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異世界三度笠無頼 ―凶状持ちの渡世人が、精霊の異郷へ旅立った―  作者: 美風慶伍
〈第十二章/決起〉朝焼けに狼煙を上げた
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七:馬と風 ―突入開始―

 ウォルフガングが高らかに哄笑とともに叫んだ。

  

「精霊の力はただ借りるだけじゃない、自分の武器や肉体に導いて、自分自身の力として使うこともできるんだよ! カイラが動かなかったから気づかなかったようだな! はっはっは!」

「ぐっ! ぐぐうぅ!」


 馬から落ちてのたうち回り、それでもしっかりと立ち上がった。その手から剣を手放さなかったのは見事である。だが――

 

「オレは一旦引くぞ! ここはまかせた!」

「はっ!」


 ウォルフガングは負傷を理由に撤退するつもりだった。だが、それを許すわけには行かない。ホルデンズの両脇を俺とエライジャが通り過ぎた。


「こっから先はあっしらが!」

「旦那はこっちを頼むぜ」

「すまねぇ!」


 駆け出す俺たちをホルデンズの旦那は見送った。エライジャはホルデンズの旦那がまたがっていた馬に飛び乗り巧みに操り、俺はセシリアの生み出す風に身を預けて一気に舞い上がる。ふたりとも瞬く間にウォルフガングの後を追う。その姿にホルデンズの旦那から声が聞こえた。

 

「頼んだぞ――ふたりとも――」


 その言葉に軽く視線を投げつつ、俺とエライジャは悪漢マルクスの居城へと走り去った。そして、背後のアルヴィアの街の大通りで繰り広げられてい戦いの喧騒を聞きながら、戦いの本丸へと殴り込むのだった。



§



 逃げるウォルフガングを前にして、俺とエライジャは追跡の手を一歩も緩めることはなかった。エライジャはホルデンズの旦那が手放してしまった馬に軽やかにまたがると、何の迷いもなく乗りこなした。

 かたや俺はセシリアが風の精霊の本領を発揮して生み出す風に身を任せていた。


「旦那、馬乗れたんですね」

「まぁな、アメリカの西部じゃ馬がねぇと移動もままならねぇからな」

「やたらと広い国だったんでござんしょうね」

「あぁ、だだっ広さだけなら、自慢できるがな」


 俺とエライジャは軽口を叩きながら視界の中にウォルフガングを捉えていた。その姿は瞬く間にマルクスの居城へと近づいていく。その城は建物の周囲を高い石造りの塀に囲まれていて、その四隅に尖塔が立っている。さらに城の周囲には深い水堀がめぐらされている。当然ながら、その内部に至るには僅かな跳ね橋を使う以外にはなく、警戒役の衛兵たちが弓を手に近づく者たちを待ち構えていた。

 

「俺だ! 門を開けろ!」


 そう叫ぶウォルフガングの声が聞こえ、呼応するように閉じられていた跳ね橋が降りて絶妙なタイミングでウォルフガングだけが中へと入る。そして即座に跳ね橋は起き上がり、俺達の侵入を拒んでいた。

 

「そうはさせるかよ!」


 低く叫んだエライジャが背面の隠しホルスターに収めておいたホールカービンライフルを抜き放ち薬室を開いた。

 

「フレイヤ!」

「うん!」


 エライジャの背中に留まっているフレイヤがホールカービンライフルの薬室に火弾を仕込む。薬室を閉じて撃鉄を起こして引き金を引いた。

 

――ゴォウンッ!――


 凄まじい爆炎が吹き上がり、火球が飛んで跳ね橋の板を吹き飛ばす。

 

「一気に行くぞ!」

「おう!」


 手綱で馬の背にムチを入れて更に加速する。俺もセシリアに目配せして更に勢いを増した。

 

「ハイヤァ!」


 気合一閃、馬を跳躍させて堀を一気に飛び越える。そして、破壊した跳ね橋の板の向こうの入口へと飛び込む。俺もエライジャと共に敵の居城へと滑り込んだのだった。


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