漢ホルデンズ立ち上がる
俺たちが邸宅を旅立った後、日の出前の邸宅の中ではある騒動が持ち上がっていた。
中庭の修練場で俺たちを見送ったホルデンズの旦那――、そのもとに旦那の子分や側近たちが集まってきたのだ。
「頭!」
「ホルデンズの旦那!」
焦った顔をしながら現れた部下たちを落ち着き払った顔でホルデンズは眺めた。
「どうした? 騒々しい」
「旦那! 丈之助たちの姿がありません! どこに行ったんですか?」
「まさかエライジャと2人だけでマルクスの野郎のところに殴り込んだんじゃねえでしょうね?」
彼らも分かっていた。この2ヶ月間、同じ釜の飯を食い、ともに汗を流し、一緒に困難にも立ち向かった。気心が知れたと思っていたからこそ2人の身を案じているのだ。
そして、子分衆の中で一番の側近であるソーンスがホルデンズに詰め寄った。
「頭! 丈之助たちにすべてを被せて黙ってみてるつもりですかい! このまま指を加えてみてるつもりですか!」
集まった大勢の子分や側近たちはホルデンズの言葉を待っていた。
すると腹から力のこもった声が轟いた。
「馬鹿野郎! だれが黙って指くわえてみてると言った!」
その言葉に全員が色めき立つ。そしてホルデンズはソーンスに問いかける。
「ソーンス、全員分の具足と馬は揃ってるか?」
「はっ、この日のために揃えておきました。武器も鎧も馬も!」
「鍛錬は怠りなく続けてきたな?」
「抜かりありません」
「よし!」
ホルデンズは子分や側近たちの方を向いて力強く叫んだ。
「野郎ども! 戦いの始まりだ!」
その言葉に全員の気合が入った。握りしめた拳で力が入り、しっかりと両足で大地を踏みしめた。
「騎士身分の者は鎧装束を身に着けろ! 騎士身分で無いものは今この場を持って準騎士として取り立てる!」
「はっ!」
全員が一斉に足を揃えて直立する。長い忍従の時を過ごしてきた彼らだ。立ち上がるのは今だ。だが、慌ただしく動く中で、そこにさらに集まってきた影がある。
「ホルデンズの旦那!」
人足たちのまとめ役であるグスタフだった。彼の背後にはやはり同じように人足たちの姿があった。
「マルクスの野郎のところに殴り込むんですか?」
「ああ、俺も腹をくくった」
「だったら俺たちもお供させてください! 表に40人以上、人足たちが集まってます!」
「よし、そいつらは荷馬車に載せて隊列を組め! 剣を使い慣れてないものには槍を持たせろ! 準備急げ!」
「お任せください! 槍や剣以外にも、人足ならではの手数を揃えますぜ!」
「おう、期待させてもらうぞ!」
グスタフたちも慌ただしく準備を始めた。
ホルデンズも隠しておいた鎧装束一式を取り出すと、手慣れた手付きで身につける。そして、馬場へと姿を現し馬にまたがった。邸宅の外へと向かうと部下たちや、人足たちがすでに準備を終えていた。彼らを見据えてホルデンズは叫んだ。
「新生、雷鳴騎士団! 旗揚げだ!」
「おおお!」
早朝の南側の町にホルデンズたちの声が轟いた。
「行くぞ!」
そして彼らもまた、戦いの場へと向かったのである。




