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六:亡骸は待っていた ―精霊たちの後悔―

 だがやることはもう一つ残っていた。


「もう一つ、尋ねたいことがありやしてね」

「なんだい?」


 セシリアが不思議そうに聞き返してくる。


「10年前、若い男が1人、精霊の力を得ようとしてここにやってきて、返り討ちりあって命を落とした――って出来事、ご存知じゃありやせんか?」

「10年前――? あっ! あれか」

「ご存知で?」


 俺の問いかけにセシリアはバツの悪そうな表情をした。


「やったのは私じゃないけど、殺さずに追い返すべきだったって、みんなで後悔している一件があるんだ」

「やっぱり死んだんで?」

「ああ、街を守るために精霊の力が必要だって必死になってた若い子がいたよ。でもそいつと鉢合わせたのが、凶暴で有名な水霊でね、まったく歯が立たずあっという間にやられた」


 予想した通りだ、腕前が足らずあっさりと返り討ちにあったのだ。イリスの姐さんが危惧した通りになっちまったのだ。

 そして、俺たちを誘導するようにセシリアは歩き出す。


「こっちだよ、骨を埋めた塚がある」


 俺たちは彼女についていく、そしてその先には少しこんもりとした土を持った塚がある。そこがイリスの姐さんの弟さんが眠っている場所だった。


「ここだよ、みんなで埋めて供養したんだ」


 それは、大きな木陰の下で安らかに眠りについていた。人の遺体を埋めたと思しき盛り上げた土のような場所があった。既に草で覆われていて長い年月をその状態で過ごしていたのかよくわかる。


「骨を少し、もらっていきやす」


 骨を持って帰る。それが何を意味するのか精霊たちにも分かったのだろう。申し訳なさそうにそっとつぶやいた。


「家族がいたらすまなかったと伝えてやってくれ」


 そして俺は塚を掘り起こすとその中から人の骨を見つけた。骨のかけらの部分を持ち帰れるだけを拾い上げ白い布に包んで懐に入れる。そして塚を元通りに戻すとそれに向けて改めて両手を合わせた。


 周囲を見れば他の精霊たちが不安げに俺たちの方を見ているのがわかる。突然やってきて戒めを解いて、骨を拾って帰っていく――、そんな奇妙なやつと俺たちのことを不思議がっているようだった。

 俺はそいつらにも目配せしつつも、立ち上がり皆に声をかけた。


「それじゃあ行きやすかい」

「ああ」とエライジャ、


 そこに俺にはセシリアが、エライジャにはフレイヤが、寄り添っている。


「それじゃよろしく頼むよ」

「もちろんですぜ」


 俺とセシリアはお互いの顔を見つめながら頷く。そして精霊の森をあとにして下界へと帰るのだった。


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