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六:河岸問屋

 ホルデンズの身内の若い衆、その後を俺は距離を取りながらついて行く。

 アルヴィアの街の南側、貧しい者たちが暮らす下手の街の中を歩き、枝道へと入ると川岸の方へと辿り着こうとしている。

 

「ここは――、船着場? 河岸(かし)か?」


 河岸(かし)とは、川岸で船の荷物の上げ下ろしする場所のことだ。魚を扱うなら魚河岸、材木を扱うなら材木河岸、米を扱うなら米河岸と言う具合だ。そこでは屈強な男たちが、アルヴィアの街を横切るヒース河沿いに設けられた船着き場の周りで様々な船荷を下ろし、また船に乗せていた。当然、あたりは倉庫と呼ばれる蔵のような建物が建ち並び、取引される荷が次々に運び込まれていた。

 そうした、河岸の建物と人混みの中をホルデンズの若い衆は歩いていく。そして、その先に見えてきたのは一件の屋敷だった。

 リーザングレイムスに来てから見かけるようになった石造りの建物――レンガ造りと言うそうで、堅牢そうな屋敷の方へと若い衆たちは歩いていった。

 庭の無い2階建ての大きな館で、館の表には馬止め場が設けられて、数頭の馬が繋がれている。館の向かって左隣は、商いのためだろう倉庫となっており、ホルデンズと言う御仁も、こうした船荷の扱いを商いとしているらしかった。

 

「河岸問屋か――」


 俺が日ノ本の世界で最後に世話になった平蔵親分も河岸問屋だった。世界は違えど、腕っぷしの強い屈強な男たちを束ねるという意味では、こうした商売は、親分衆の旦那には似合っているのかもしれなかった。あらためて周囲を見回せば、荷の上げ下ろしの人足たちは夕餉(ゆうげ)前の仕事終いをはじめており、空は夕方の茜色(あかねいろ)に染まり始めていた。

 俺の視線の先ではあの4人の若い衆が館の入口の戸を開けて入っていく。中からは威勢の良い迎えの声が返ってきていた。


「このまま、夜を迎えるよりは――」


 明日もう一日様子を見るか、それともこのまま踏み込むか、俺は一瞬迷ったが、ここがホルデンズの親分に関わりのある場所だという事はわかっていた。しかも、ホルデンズの旦那の直臣の若い衆が数人まとめて入っていったとなれば、ここがホルデンズ親分の寝蔵(ねぐら)で間違いないだろう。


「よし、行くか」


 俺は腹をくくった。そして、俺がこの世界で、俺自身の生き様と流儀を通せるのかどうか、一世一代の戦いが始まった。


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