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六:風呂と酒 ―リカルド語る―

 その日の夜は街の宿屋に体を休めた。 エリザの姐さんが案内してくれたのだ。

 そして、エリザの姐さんが風呂にはいるというと、3人の精霊の女たちも入りたいと言い出した。


「やっぱり、精霊でも風呂に入りたくなるものなのかい?」


 そうエリザの姐さんが尋ねれば3人の精霊の女たちは

 

「うん、服は着る必要ないけど、匂いとか汚れとか、気になるからね。山ではよくキレイな川とか清水で沐浴してたんだ」

「ああ、聞いたことあるよ。精霊の水浴びって言って、滅多に見れないものの(ことわざ)みたいになってるよ」

「ええ、それです。人間に見られないように姿を消したり、魔法の罠を仕掛けたり色々するんですが、たまにどうしても見られたりするんですよね」


 エリザの問にセシリアが答える。すると、フレイヤも答える。


「でも、水浴びをしているときって一番危ないんだよ。精霊を狩りに来た連中が罠を張ってるから」

「気を抜きやすい一瞬だからね」

「うん」


 だが俺はそれにこう告げる。


「大丈夫ですぜ。もう、悪党は消えました」

「そのために俺たちがカチコんだんだからな」

「そうだったね」

 

 そして、エライジャが告げる。

 

「ゆっくり入ってきな。明日の出立に備えてな」


 彼女たちは嬉しそうに風呂へと向かったのだった。

 


§



 4人が風呂に行ったあと、男二人となったがそこに酒瓶下げて意外な男が現れた。

 

「失礼するぜ」

「リカルドの旦那?」

「お前もここに来ていたのか?」

「あぁ、あの酒場に一番近かったからな」


 現れたのは荒波のリカルド、俺達と同じ神落としの男だ。あの時、エマを救い出してくれたやつだ。酒瓶を持ち込みながら俺たちの宿部屋に入ってくると、椅子を探して腰を下ろす。


「この間の戦いじゃ世話になったな」

「いえ、それはこっちのセリフですぜ」

「あんたがエマをかばってくれたから彼女も無事に帰ってこれた、礼を言うぜ」

「まぁ、大したことはしてないがな」


 俺達が陶器の器を見つけて出すと、リカルドは苦笑いしながら酒を注ぎ始めた。そして、3人、同じ酒瓶の酒を飲み始めた。

 

「まぁ、大体わかってるだが、お前らも明日旅立つんだろう?」

「〝も〟――って兄さんもですかい?」

「あぁ、明日、この街を出る。ホルデンズの旦那から路銀をもらったからな」


 リカルドの言葉にエライジャは、あのギルドの紋章のプレートを取り出す。

 

「それじゃ、これももらったのか?」

「あぁ、もらった――、何しろ俺はあのマルクスの所に居たからな、エマの嬢ちゃんを救ったからと言って、これまでの事が帳消しになるわけじゃねぇ」


 悲しむべきかな、それは確実な事実だ。

 

「さっき、飲み屋の脇の裏路地で袋叩きにあいかけたよ。ホルデンズのお身内分が助けてくれたがな」


 そう語るリカルドには後悔がにじみ出ていた。

 

「運がなかったのさ。お前らと違い、俺はマルクスに真っ先に見つかったからな。コルゲ村の連中には悪いことをした。俺をかばってしょっぴかれた若いのは、度重なる拷問で死にかけた。俺がこっそり逃がしたが、故郷の母親に迷惑がかかるといけないからと、別の土地に行くと言ってた」


 その言葉に俺は衝撃を受けた。

 

「いま、なんつった?」

「あ? コルゲ村だが?」

「――俺も最初にたどり着いたのはコルゲ村だ」

「何だって?」


 驚くような事実だ。だが、救いもあった。


「俺が世話になった村の後家さんが、息子が神落としを1人匿ってマルクスに連れて行かれたと言っていたが――」

「そらぁ、おそらくオレだ。その後家さん――マルタって言ってなかったか?」


 俺ははっきりとうなづいた。

 

「なんてこった――、世の中ってのは本当に狭いな。まぁ、マルクスが死んだんだ。そのうち息子さん里に帰る事も有るだろうぜ」

「あぁ」


 俺は脳裏にマルタの姐さんが息子に再開するときの姿をそっと描いていた。リカルドは盃の酒を飲み終えると立ち上がる。

 

「さて――俺は夜のうちにこの街を出る。どこかでまた会うこともあるだろう。その時はまた相手してくれや」

「あぁ」

「その時はまた一献」


 俺たちは互いに握手をすると、リカルドは部屋から出ていった。エライジャが俺に声を掛ける。

 

「人と人との〝縁〟ってのはほんとにどこかでつながってるな」

「へい――、これこそ神様の思し召しってやつです」

「神――か――」


 そう呟く声に、俺たちはこれまでに起きた出来事を噛み締めていたのだった。


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