協力の力
夢喰いとの戦いが激化する中、俺たちは次の一手を探していた。
力を失った仲間たちにできることはあるのか――。
集まった皆の想いが交差し、小さな希望の光が生まれようとしていた。
そして、止まっていた時間が再び動き出す。
『9月28日 / 12:23』
アナの家にいた。みんなが集まって、これからどうするかを話し合うためだ。
最初に何か言いたがっていたのはアナだった。
「あたくしから申し上げたいことがございますわ。最近、スズの力をお借りして、夢喰いと戦うための武器を開発しておりますの」
「武器って?どんな武器だ?」
「そうですわね...拳銃のようなものと考えていただければ。スズは魔術師でございますから、彼女の魔法の力を武器として使えるようにして、夢喰いと戦えるようにしたいのですわ」
アナとスズは自分たちのアイデアにかなり確信を持っているようだった。でも本当の問題は、その武器を完成させるのにどれくらい時間がかかるかだった。
その時、エミリーが手を上げた。何か言いたいことがあるらしい。
「おじさんと話したの。家族の中で私たちを助けてくれそうな人がいないか聞いてみたいのよ」
エミリーがやっていることに驚いた。彼女は戦いに参加してくれる家族を探しているんだ。正直、エミリーの家族の他のメンバーに会うのは少し怖い気もする。それに、彼女が言及している人たちの中には、俺と関係がある人がいるかもしれない。俺のルーツは彼らの中にあるからな。でも今はそんなことを考えている場合じゃない。
他に何か言いたい人がいるか見回してみた。ルビーは落ち着かない様子で、何か言いたそうだが踏み切れずにいる。何か珍しいことでもあるのか。
ひかりを見ると、腕を組んで目を閉じている。多分考え事をしているんだろう。
次にフィリアを見た。膝の上に置いた手をじっと見つめている。彼女も何か考え込んでいるようだった。
メリッサも何か言いたそうだった。実際、ノートを抱きしめながら、他のみんなが何も言うことがないか様子を伺っている。
ルーシーはただ他のみんなを見ているだけ。
最後にライラを見ると、ここにいたくないような感じだった。ルビー以上に落ち着かない様子だ。
みんなそれぞれ不安を抱えているのかもしれない。アイデアが浮かばないのも無理はない。要求されすぎているんだ。もう力を失ってしまったんだから。今のところ例外はライラとスズだけ。でも他のみんなは力がないから、何かを考えるのが難しいんだろう。
しばらく沈黙が続いた後、ついにメリッサが手を上げて話したいという意思を示した。全員の視線が彼女に集まると、それが彼女を怖がらせ、緊張して抱いていたノートで顔を隠してしまった。
「みんな、アイデアがあるんだけど...どう思うかわからないの」
ノートを開いてみんなに見せた。俺も近づいて何が書いてあるのか見てみることにした。中身を確認すると、なんというか戦略みたいなものが書かれていて、図まで描いてある。ゲームの攻略本みたいだった。
「これは何だ?」
「...夢喰いと戦うために思いついた戦略なの」
俺はメリッサのノートを手に取って詳しく読んでみた。要約すると、霊輝の武器、具体的には彼女が以前使っていた杖を使って、別空間を作り出すという計画だった。その空間内にいる者に影響を与えることができ、杖が物事を変化させて顕現させる能力があるなら、こんなことも可能かもしれない...
その時、俺は何かに気づいた。杖とスズが使っていた本、この二つの霊輝の武器を組み合わせれば、現実を変えて彼女たちに夢喰いを見せることができるかもしれない。
「メリッサ、すげぇじゃないか!」
メリッサは顔を赤くして恥ずかしそうに頭を下げた。俺の褒め言葉に照れているようだった。
今では夢喰いの強力な奴らが現れて、誰でも見えるようになったから、このプランは完全に有効とは言えない。それでも何かしら試してみる必要があった。唯一思いつく方法は、アンジュをモルモットにして、杖と本を同時に発動させたら彼女たちに見えないものが見えるようになるかどうか確かめることだった。
「アンジュ!」
でも姿を現さない。きっと忙しいんだろう。
「セレステ!」
影から彼女が現れ、俺の隣に立った。困惑した表情で。
「何なのですか?なぜ呼んだのですか?」
「実験のためにここにいてもらいたい」
「え―― ?」
皆に家の裏庭に移動するよう指示して実験を試すことにした。胸に手を当てて杖を取り出し、次に本を取り出した。杖で地面を一撃すると周囲の現実が変化し、今度は別の場所にいた。周りには木々の野原が広がっていた。これは能力なので当然皆に見えていた。
次に俺の手にペンが現れ、本に書き始めた。「皆が見えないものを見えるように」と書いた瞬間、本のページが光り、その瞬間メリッサが叫んだ。
「きゃー!」
尻もちをついて地面に倒れ、セレステを指差した。
「み、見える!彼女が見えるの!」
ルーシー、アナ、ひかり、フィリア、ルビー、スズは驚いてセレステを見つめていた。セレステは緊張して他の皆を見回した。
「え...こんにちは、みんな。私はセレステです〜」
みんなに見えるようになったことで本当に緊張していた。実験は成功だった。メリッサのアイデアが本当に機能した。実際にはこれを実現するための基礎に過ぎなかったが、これで見えない存在を見せる方法ができた。
これで彼女たちにも見えるようになったが、まだ別の問題がある。彼女たちに見せることが完全に俺の存在に依存しているという点で、部分的にはまだ問題だった。それでも前進は前進だ。今は訓練あるのみ。これから来るものに備えなければならない。
『9月29日 / 17:21』
アナの家で、みんなと一緒に新しい訓練をしていた。夢喰いと戦えるように、何らかの方法で戦闘力を身につけさせる必要がある。
訓練自体は、戦い方を知ってる奴らにとっては簡単だった。ルーシー、アナ、ルビー、ライラ——こいつらは夢喰いとの戦い方をまだ覚えてる。
中級レベルにいるのはフィリアとメリッサだ。夢喰いとの戦闘経験が足りないのは、ひかりとスズだな。
ただ、スズには特別な事情がある。確かに夢喰いと戦った経験はないが、魔術師だから戦闘は知ってる。自分なりのスタイルでな。実際、魔術師は霊輝を持たない。人間と同じで、俺のように夢喰いを見ることもできない。
戦闘レベルで分類するなら...スズが一位で、ライラとほぼ同じくらいか。その次にルーシーとアナ。動き方をまだ覚えてるし、身体的な戦闘もできる。
ルビーはその下だな。身体能力は高いんだが、よく見てると頭で考えずに突っ込んでくことが多い。だからルーシーとアナより下のレベルだ。
フィリアとメリッサは中級...いや、ほぼ下級レベルか。霊輝の武器に頼りすぎてた面があるからな。
そして一番弱いのが...ひかりだ。夢喰いと戦った経験もないし、拳が強いと言えるような体力もない。
…そういえば、なんでひかりは夢喰いと戦わなかったんだ? アンジュから聞いたっけ? ……いや、正直、覚えてない。理由が何であれ、ひかりが一番訓練を必要としてるのは確かだ。
ただ、ひかりは体力訓練となると途端にやる気をなくす。こういうのが嫌いなんだろうな。今日の午後は長くなりそうだ。
残りの時間は、あらゆる戦闘パターンを想定して訓練した。戦略を練り、これからどう戦うかを決めた。普通の夢喰いが現れた場合も、人間のような姿をした奴らが現れた場合も想定してな。
『9月30日 / 7:05』
学校に行く準備は完了していた。部屋を出ようとした瞬間、アンジュがドアを塞ぐように現れた。
「久しぶりね、アンジュ。どのくらい経ったっけ?」
何も言わない。ただじっと見つめてくる。なんだか怒っているような表情だが、なぜ怒っているんだ?
「アレクス、お願いがあるの」
「何だ?」
「今のところ、夢喰いの件は置いておいてほしいのよ」
「はぁ!?」
「お願い!...もうスズを解放してから一ヶ月近く経っているでしょう...残りは二人だけなのよ...オマエには出て行って彼女たちを探してもらいたいの!」
必死そうだった。少女たちと人工霊輝の件を早く終わらせたがっている。確かに何かを始めなければならないのは分かっているし、本当に時間を無駄にしすぎた。このテーマを脇に置くべきなのか...両方できるかもしれない。そんなことが頭に浮かんだが、アンジュを心配させないよう、そのことは言わなかった。
「分かった、アンジュ。とりあえず残り二人の少女を探すことに集中する」
アンジュが喜んでいるようで、それが罪悪感を感じさせた。まだ夢喰いの問題に立ち向かうつもりでいるからだ。もう無視できない問題だ。
市の南部にある住宅地で次の少女を探し始める計画を立て始めた。問題の一部は、その地域に行くための時間だ。物事を楽にするために何らかの助けが必要かもしれない。とにかく、今日からその住宅地についてより深く調査を始めよう...でも、たとえそうしても、彼女がそこにいるという保証はない。そしてたとえいたとしても、そこにあるすべてのものの中から、どうやって彼女がどこかの家にいるかどうか分かるというのか。
考えることがたくさんある。今のところ、すべての可能性を考慮に入れるしかない。
『10月1日 / ??:00 / アンジュ』
夢喰いについて、あの人間の形をした奴らについて、疑惑というよりも仮説を持っていた。幸いなことに、アレクスはもう残りの二人の少女を探すことに集中してくれる。それなら夢喰いの問題は一人で処理できるわ。
そんなことを考えながら、この涼しい夜の中を屋根から屋根へと飛び移って警戒を続けていた。季節がまた変わろうとしている。間違いなければ、人間たちにとっては秋の季節。地球の位置と現在地を考えれば、確実に秋よ。
突然、視界の端に何かが映った。素早く刀を抜いて身を守る。見えたのは夢喰いの攻撃だった。でも普通の夢喰いじゃない。また人間の形をした奴の一体...
攻撃の準備をしようとしたとき、そいつが指で制止するような仕草をした。
「いやいやいや!なんて醜い構えをする少女だ。我が目には実に痛々しいぞ!」
この夢喰いの話し方はとても演劇的で奇妙だった。自分の身長ほどもある大きな筆を持っている。服装は片肩を露出させたヒマティオンのようで、古代神々の彫像みたいな格好をしていた。
「ふん!よく見れば貴様の髪は美しいな。我に従えば、我が作品の主演にしてやろう」
「遠慮するわ。オマエたちはこの世界の異常な存在に過ぎない。始末してあげる」
「待て待て!戦いに来たわけではない。実際、我はただの使者に過ぎぬ」
この夢喰いが本当に戦う気がないように見える。でも先ほど何かで攻撃してきたのに...
「自己紹介をしよう。我はモルフェ、夢幻十刃の第九位『夢』。貴様にお仕えできて光栄である」
夢喰いにしてはとても優雅で正式な自己紹介をしている。こんなレベルまで進化するなんて信じられない。
「それで?何を言いたいの、モルフェとかいう奴」
「我が名を覚えておくがよい!ああ、貴様の名を言う必要はない。既に知っているからな」
「...!」
「アンジュであろう?」
「どうして知ってるの?」
「先ほど貴様に攻撃を仕掛けた時に分かったのだ」
警戒を緩めるわけにはいかない。この状況は怖すぎる。
「単刀直入に行こう。我も忙しいのでな」
夢喰いが大きな筆を動かし、空中に何かを描き始めた。
「では説明してやろう。我々が何者なのかを...」
この夢喰いが話したことをまとめると...まず、奴らが何なのかから始めよう。
名前を明かさない何者かが、人間の姿をした夢喰いたちのグループを作り上げた。そのグループを『夢幻十刃』と呼んだのだ。その存在のおかげで、奴らは人間を真似ながら進化した。名前が示す通り、十体しか存在しない...ただし、一体はすでに倒されているが。
奴らの種族は厳密には夢喰いではない。『夢』と呼ばれる存在なのだ。
目的は二つだ。一つは、自由になること――ただ貪り食う存在をやめ、人間を追うのをやめること。もう一つは、レイスドールを滅ぼすことだ。私たちレイスドールは長い間、奴らを狩ってきた。だが問題はそれだけじゃない。レイスドールは人間と霊的につながっている。だからこそ、奴らは我々にとって最大の障害なんだ
奴らが種族として『夢』と名乗る理由がある。人間の夢をコントロールし始めたからだ。つまり、人間が眠っているときに見る夢を通して、人間のようになりたいということなのだ。そしてそれを実現するために必要なのは、レイスドールがもう存在しないことだ。
なぜレイスドールが存在してはいけないのか、その理由は言わなかった。しかし、私には分かる気がする。レイスドールは人間の魂を導く存在で、人間の生と死に関わっている。だが、夢の世界は別物だ。人間の心の中のその空間こそが、奴らが到達できない唯一の場所なのだ。
「どうだ?我が明かした真実はいかがか?驚愕したであろう?」
「...全然。むしろ、オマエはバカだと思うわ」
「何と?貴様は随分と無礼だな」
「でも正しいでしょ。オマエたちが何なのか、どう機能するのかを明かしたのよ。この情報を上層部に送ったら何が起こるか分かってるの?」
モルフェは脅しを理解していないようだった。肩をすくめて背を向ける。
「我は去る。貴様に費やす時間などない」
「待ちなさい!」
攻撃の準備をしたが、モルフェは大きな筆を使って次元門のようなものを作り出し、素早くそれを通って消えてしまった。
呆然としてしまった。どうすればいいのか分からない。今はただ、この情報をレイスドールの基幹拠点に送ることしかできない。
『10月2日 / ??:00 / セレステ』
森の周りを警戒していた...恐怖と向き合う時が来た。今度はもっと近くまで飛んでみようと決めた。この街にある数多くの山の一つ、その上空を飛んでいると...何かが私を引きつけているような感覚があった。この山には何か特別なものがある。
突然、山の高い場所で何かが光っているのに気づいた。そこまで降下して着地すると...現実を切り裂いたような次元の亀裂のようなものがあった。これは何かへの入り口なの?でも一体何へ?夢喰いと関係があるのかしら?
変なことはしたくなかったけれど、情報を収集する必要がある。刀を取り出し、その次元の亀裂に刃を当てると...あっけなく開いた。中に入るべき?手が震えている。刀の柄を握りしめながら、なぜまたこんな感情が私の足を止めるの?
振り返っても誰もいない。調査を妨げるものは何もない...決断を下した。この次元の亀裂の中に入ると決めた。
一瞬で向こう側に渡ると、目に入ったのは...人間世界の模倣のような場所だった。でもすべてが廃墟と化している。遠くに街が見え、空は夜を装っている。そして地面は植物や草木で覆い尽くされていた。実際、この場所は人間のものと...そうでないものが意味もなく混在しているようだった。
完全な静寂ではない。遠くからのこだまが聞こえる。でも何より奇妙なのは、遠くからでも見えるほど目立つもの...巨大で不気味な「樹」のようなもの。どれほど遠いのか、どれほど近いのかも定かではないけれど、周りのすべてより大きく、奇妙なピンク色に光っている。時々、より赤みがかった色に明滅している。
一体この世界は何なの?
この場所を調査することにした。恐怖という感情...まさか自分が感じるとは思わなかった感情が、一歩進むたびに私を蝕んでいく...
『10月3日 / 12:03 / アレクス』
昼休み、俺は教室でルーシー、まい、榊と一緒に昼飯を食べてた。他の連中は何かと忙しくて来られないから、今日は四人だけだった。
最近ずっと気になってることがあった。もう十分調べたし、今度は南にある住宅地に行かなきゃならない。でも何も見つからなかったり、道に迷ったりしないか心配で...
ふと、大きなため息をついてしまった。
「どうしたんだよアレクス、なんでそんな落ち込んでるんだ?」
榊が聞いてきた。
「あ!何でもない、ははは」
やべえ、笑い方が機械的すぎた。こんな風にため息なんかついちゃダメだった。
「何があったか話してみろぜ、もしかしたら俺が力になれるかもしれねぇ!」
榊はいつも通り頼りになりそうな感じだった。でも話していいのか?考える時間がない。ある程度なら話せるかもしれない。
「実は...この場所に行かなきゃならないんだ」
スマホを取り出して榊に見せた。画面を見た驚いたような顔をした。
「おい、アレクス、マジでそこに行くのか?」
「ああ、そこに...親戚が住んでるんだ」
「マジで!?」
「あ、ああ...」
「それなら運がいいじゃないか!俺、その辺に住んでるんだ」
「え!?」
信じられない。榊があの辺りに住んでるなんて、こんなにラッキーなことがあるか?
「じゃあ、その辺り案内してくれよ」
「もちろんだ!」
榊はいつも俺が迷ってる時にサポートしてくれる。考えてみれば、こういう時はいつも榊が一番頼りになる。今日、榊と一緒にあの住宅地に行くことに決めた。
でも何故か、まいが不満そうというか、疑わしそうな表情をしてた。
「ねえアレクスくん、本当にその住宅地の道を全部回って家を探すの~?」
「え!まあ...そうだけど」
まいが疑いの目で俺を見てきた。
「変じゃない~?だって親戚を探してるなら、正確な住所を聞けばいいじゃん~?」
「いや、その...サプライズを準備してるんだ」
まいは俺の言い訳を信じてない。確かに住宅地の道を全部回るなんて怪しすぎる。榊は気にしてないみたいだけど。
榊がイライラしてまいに言い返した。
「別にいいだろ?お前だって行方不明の人をどんな方法でも探すだろ?」
榊の理屈にまいは一瞬言葉を失った。でもまいも負けじと榊に言い返した。
「それでもやっぱり変よ~!あんたも変だと思わない~?それともウチが頭おかしいって言うの~?」
ルーシーがまいの肩に手を置いて割って入った。
最近、榊とまいがこんな感じなのを感じる。二人の性格がぶつかり合ってるって言うか。
まあ、二人のことは置いといて、今日ついに九人目の少女を探す作戦が始められる。見つかるかな...一体どんな子なんだろう?
次回、次に待つのは、新たな出会い。
夢喰いの脅威を一時置き、アレクスは九人目の少女を探す旅へと踏み出す。
その出会いが、彼に何をもたらすのか――
まだ誰にも分からない。




