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霊輝  作者: ガンミ
82/130

邂逅、アカデミーにて

新たな場所、「アカデミー」に足を踏み入れたアレクス。

霊輝を追う中で、彼の前に現れたのは“空を飛ぶ少女”。

そしてその出会いが、謎が絡み合う新たな章の幕開けとなる――。

『8月20日 / 8:43』


昨日の出来事の後、深く考え込んでいた。みんな一人一人が俺にとって大切な存在だということを。エミリーをあんな風に見てしまったことで、今までとは違う見方をするようになった。でも、エミリーの件はもう解決したことだ。あの後、エミリーをみんなのところに連れて行って、あのアカデミーに侵入する計画について話し合った。


今日、その計画を実行に移すつもりだ。飛べるようになったんだから、あの場所の上空を飛んで上から侵入すればいいんじゃないか?エミリーが思いついたアイデアだが、夜にやるのがベストだろう。ほとんど誰にも見られることがない。ただ待つだけだった。


『20:43』


目的地に到着した。三分程度しか飛行を維持できないから、あのアカデミーの中にある霊輝の正確な位置を素早く特定しなければならない。集中して空中に舞い上がり、宙を滑るように進む。上空からは全体が見渡せた。アカデミーは思った以上に巨大だ。時計塔が他の建物より高くそびえ立っているが、それ以外にも塔のような建物がいくつもある。一体この中に何があるんだ?そして何故こんなに古風なデザインなのか?城に近いと言ってもいいだろう。技術が至る所で発達し始めているこの時代に、こんなスタイルの建物を見るのは奇妙ですらある。


ゆっくりと降下しながら霊輝を感じ取ろうとする。感じられる。確実に近くにある。人工的な霊輝の感覚が、あの塔みたいな建物の一つの中にある。何と呼べばいいのかわからないが、その中に感じる。しかし...降下する前に、視界の端で自分の横を飛んでいる誰かの姿を捉えた。


振り返ると、そこには俺を観察しながら飛んでいる少女がいた...一体どこから現れた?そして何故事前にその存在を感じ取れなかったんだ?


そんな時、驚いたことがあった。その少女が俺と同じように空を飛んでいたんだ。どうしてそんなことが可能なんだ?一体誰なんだ?


その少女の霊輝を感じ取ろうとした。感じたのは...とても普通の霊輝だった。まるで普通の人間の霊輝のようだった...一体何が起きているんだ?


彼女は何も言わない。突然現れたこの少女の存在に緊張している。こんな静寂の中で話しかけるのも躊躇してしまうが、飛行時間がもう限界に近づいている。いつでも疲労を感じ始めるだろう...


「おい、お前は誰だ?」


「...私が聞きたいことです...」


「怪しい奴じゃない。ちょっと確かめたいことがあっただけだ」


「...私有地の上空を飛行して、自分は怪しくないと言うあんたの方が余程怪しいです...」


彼女の話し方はどこか小声で、その視線からは何の感情も読み取れない。短くて乱れた紫色の髪、そして服装は...長い白いドレスに長い白いブーツ、そして奇妙なマントを羽織っている。それはマフラーのような機能も果たしているようだ。変わったデザインだ...


「本気で言ってるんだ。この場所にいる女の子を探している。危険な目に遭っているかもしれないんだ」


「...女の子を...?」


「ああ、見つけなければならない。人工霊輝のせいで苦しんでいるはずなんだ」


「...」


完全に黙り込んでしまい、微動だにしない。疲労を感じ始めている。限界がもう来ている。もう飛び続けることはできない...


「行く前に一つ聞かせてくれ...お前はここの守護者か何かなのか?」


「...違います...ただの...特別な学生です...」


「学生?」


もう続けることはできず、その場を離れ始めた。彼女は追ってこず、ただそこに立ち尽くしているだけだった。何もする機会がなかった。一体あの少女は誰なんだ?


とりあえず、他のみんなに今日起きたことを報告するつもりだ。


『8月21日 / 10:19』


アナの家にいる。昨日、全員にメッセージを送って、起こったこと全部を話した。誰も何を考えればいいか分からなかった。当然だろう。あのアカデミーは一体何を隠してるんだ?それに、あの謎の少女は「学生」だと言ったが、見た目からして明らかに特別な何かだ。そして何より...なぜ飛べるんだ?霊輝か何かを持ってるのか?でも、あの謎の少女の霊輝を感じ取ろうとした時、特に普通じゃないものは感じなかった。


そんなことを考えていると、アナが口を開いた。


「あたくし、考えがあるのですけれど、アレクスがやってくださるかどうか...」


「言ってみろよ」


「今日もう一度試して、あの少女とお話してみてはいかがかしら?」


何人かの女子が心配そうに考え込んだ。俺も話しかけることは考えてた。でも、どれだけ安全なんだ?どんな人間かも分からないし、何かされるかもしれない。


アナがまた話した。


「あの謎の少女ですけれど、アレクスがもう一度お話なさったら、何かに辿り着けるかもしれませんわ」


「なんでそう思うんだ?」


「去ったと仰った時、あの少女は追いかけも何もしなかったでしょう?つまり、少なくとも常に警戒してる人ではないということかもしれませんわ。そう思いませんこと?」


もっと深く考えてみた。確かにそうだ。あの少女は警戒した様子も見せなかったし、危険なことは何もしなかった。ということは、話しかけたら何かに辿り着けるかもしれないし、彼女の助けでアカデミーに入れるかもしれない。


「分かった、もう一度やってみる」


本当にそうであることを願うしかない。あの謎の少女について唯一恐ろしかったのは、その表情に一切の感情が表れていなかったことだ...


『20:33』


アカデミーに戻って、また上空を飛んでいると、屋根の上に座ってこちらを見ているあの謎の少女がいた。今回も顔に何の感情も浮かべていない。ゆっくりと彼女に近づいてみた。彼女は何もしない。ついに屋根に足をつけて着地する。それでも彼女は何もしない。こちらを見ようともしない。一体この少女は何を考えているんだ?それすら読み取れない。あまりにも落ち着いているので、隣に座ることにした。


「俺はアレクスだ。お前の名前は?」


「...名前は持っていません...」


「え?」


「...よろしければコードネームをお教えしますが...」


「コードネーム?それってどういう意味だ?」


「...あんたが聞いた通りの意味です...実際、名前は持っていません。ずっと昔に忘れてしまいました...」


本当に変わった少女だが、敵意はない。本当に話をする気があるようだ。


「じゃあ、そのコードネームを教えてくれるか?」


「...私はA.S.です」


「A.S.?」


彼女は頷いて、確かにそう聞いたと確認してくれた。本当に暗号めいた名前だ。「A.S.」って何を意味するんだろう?でも今はそれより重要なことがある。彼女に助けを求めなければ。


「昨日も言ったし、今日ももう一度言うが、このアカデミーにいる女の子を探したいんだ」


「...このアカデミーには多くの女の子がいますね...」


「ああ、でも特別に探しているのは霊輝を持つ女の子だ...霊輝が何か知ってるか?」


「...いえ、今まで聞いたことがありません...」


知らないのか。それなら、なぜ飛べるんだ?


「霊輝が何か知らないなら、どうして飛べるんだ?」


彼女がこちらを振り返った。まだ何の感情も表していないが、その固定された視線は何かを表現したがっているようだった。


「...あんたが言っているその霊輝というものが、私が飛べることと関係があるのですか?」


「え、あ、まあ、そうだと言えるかもしれない」


「...申し訳ありませんが、私の飛行能力はあんたが言う霊輝から来るものではありません...」


「それなら、どうやって飛べるんだ?どんな力を持ってるんだ?」


「...力?あんたはそう分類するのですね...」


「まあ、他にどう呼んだらいいか分からないからな。そう呼ぶべきならそう呼ぶ」


「...私が持っているのは人間ではない力だとだけ言えます。そして、ここにいる者たちも同じものを持っています...」


彼女との会話はどんどん奇妙になっていく。とにかく本題に集中しよう。また霊輝を感じ取って、探している女の子がどこにいるか正確に分かった。


「A.S.、君の助けが欲しい。お願いだ、その女の子を救うのを手伝ってくれ」


「...」


また何も言わない。視線はどこか分からない場所に固定されている。


彼女は俺を見つめていた。相変わらず顔に何の感情も表していないが、何かを決意しているように見えた。


「...まず何が起きているのか教えて...なぜあんたはここの中にいる女の子にそんなに執着しているの...全部話しなさい...」


全てを話すことにした。まだ彼女に話すべきかどうか迷っていたが、信頼できる気がした。人工霊輝のこと、探している女の子にどう影響しているのか、同じ症状を持つ他の子たちのこと、そして今まで何をしてきたのか...全部話した。


話し終えると、彼女は考え込んでいるようだった。いや、何を考えているのか、どんな反応なのかを定義するのは難しい。顔に一切の反応も感情も表さないからな。でもそれが逆に彼女を魅力的にしていた。


最終的に彼女は立ち上がって言った。


「...もしあんたの話が本当なら、手助けできるかもしれないわね。一日時間をちょうだい...一日調査する時間をくれれば...協力するわ...」


彼女を信頼することにした。彼女の提案を受け入れたが、正確に「調査」って何を意味するんだ?そう言われても、あまり深く考えないことにした。とりあえず今日は家に帰ろう。明日また他の皆と話すことになる。やっと物事が動き始めた。


『8月22日 / 20:43』


自分の部屋にいる。明日はまたあのアカデミーに行かなければならない。今日、コードネームA.S.の子に起こったことを皆と話した。でもまだ、彼女が言った『調査』のことが気になっている。


突然、窓から音が聞こえた。嫌な予感がする。窓を確認しようと立ち上がる前に、窓が開いて...彼女が入ってきた。A.S.だ。どうやって入った?何をしてる?


質問する暇もなかった。彼女は素早く俺の手を掴み、引っ張って歩かせ始めた。窓際に立つと飛び始めて、突然の状況に驚いた。


彼女の手を握られながら空を飛んでいる間、急に湧き上がった緊張と恐怖を抑えながら、何が起こっているのか理解する必要があった。


「おい、どうして俺の住んでるところが分かったんだ?それになんで飛んで連れて行くんだよ?」


「...申し訳ないけれど、予想よりも早く調査が終わったの...だから...決めたの...あんたを助ける...」


「はあ!?」


「中に入るのにあんたは助けが必要でしょう?...だからあんたがその女の子を救えるように手伝ってあげる...」


全てが混乱していて急すぎた。明日のはずだったのに、もう彼女は手伝うと言った。だから到着するまで何も言わなかった。


アカデミーに着くと、彼女は古い城の石の塔のような場所の近くに着陸した。遠目には幾何学的な模様にしか見えなかったが、近づくと、それは単なる塔ではなく、中世の城を思わせる重厚な造りだった。


彼女が俺に近づいて言う。


「...ここが特別寮...あんたの言う女の子はここにいるのでしょう?...」


目を閉じて一瞬集中すると、霊輝を感じることができた。確実にここにいる。頷くと、彼女も頷いて後について来るよう合図した。


無限に続くかのような階段を上って、ようやく非常に狭い廊下に着いた。右側だけにドアがある。部屋なのだろうか?彼女は静かに歩いて、この廊下の最後のドアまで行った。


そのドアでさえ古いデザインで、装飾なのか実際に何かを支えているのか、木製に金属の部分がある造りだった。


彼女がドアを軽く叩くと、短い静寂の後、ドアの向こう側から脆いけれど甘い声が聞こえた。


「はい...?」


明らかにこのドアの向こうの女の子は訪問者を期待していなかった。


A.S.が俺の方を振り返って言う。


「...じゃあここからはあんたが担当ね...」


「はあ!!おい、待てよ、どこに行くんだ?」


「...見張りをしないといけないの...その間に...あんたがその女の子を救いなさい...」


窓から出て行った。窓と呼べるのかどうか分からないが、壁にある四角い穴だった。確実にこの場所は中世の城と現地のデザインが混ざったような造りだ。


ドアがゆっくりと開く音が聞こえた。緊張してしまい、ドアが十分に開いて女の子の恥ずかしがりやな顔が覗いた時...


その女の子は少し緊張した様子で言った。


「君は誰ですか?この辺りの学生には見えませんけれど」


「あ!えーっと、実は学生じゃないんだ」


そのことを明かすと、彼女はさらに緊張しているようだった。ドアをゆっくりと閉めようとしているのが分かる。素早く直接的に行動する必要があった。


「待て!ドアを閉めるな!」


彼女は驚いたようで、ドアの後ろに隠れようとした。頭だけがかろうじて見える状態だ。


「お前の持っているものを知っている...今の状況、お前の置かれている状態を俺は知ってるんだ!」


今度は彼女が俺の言葉に驚いているようだった。俺をじっと見つめている。もっと話してくれるのを待っているかのように。


「手助けしたいんだ。お前の中にあるそれから解放してやれる」


彼女は少し頭を出して、周囲の様子を確認した。突然俺の手首を掴み、部屋の中に引き込んだ。素早くドアを閉める。


部屋の中を見回すと、とても質素で小さな場所だった。ベッドと衣装ダンス、そして小さなテーブルが真ん中近くにあるだけで、部屋を飾るものは何もない。


彼女は歩いてその小さなテーブルのところに座った。


「座って、少しお話ししませんか?」


俺もそのテーブルに座る。彼女は緊張していた状態から、より落ち着いて真剣な様子に変わっていた。


「まず君のお名前を知りたいです。ここまで来て、すべての警備を避けてここに辿り着いた方のお名前を知りたいですので」


そんな風に評価されることに驚いた。


「実を言うと、このアカデミーの誰かに手助けしてもらって入れたんだ」


「誰かですって?その誰かとは?」


「名前はないらしい。A.S.と名乗っていた」


「えーーーー!!」


驚きすぎて椅子から立ち上がった。その体勢になって、彼女がどんな人なのか分析することができた。まず、短い髪を右に分けていて、額がほとんど完全に見えている。瞳は輝く緑色をしていて、体格について言うなら、細くない体型が特に目立っていた...


彼女は落ち着きを取り戻して再び座った。


「すみません...彼女はこのアカデミーでとても謎めいた存在として有名なんです」


「なるほど、それには同感だな。話している間、彼女は何に対しても反応を示さないようだった」


「A.S.さんのことは置いておいて、お名前を教えてください」


「俺はアレクス、朝倉アレクスだ」


「初めまして、朝倉さん」


「いいよ、そんなに堅くならなくても。名前で呼んでくれていい」


「本当ですか?」


「ああ、もちろんだ」


「それでは、アレクスさん」


「さん」を付けるのは堅すぎるだろう。なぜまだ丁寧語にこだわっているんだ?


「私はワイルドソウル・スズです。お会いできて嬉しいです」


彼女は手を差し出し、俺は握手した。その手の冷たさが、彼女が人工霊輝に苦しんでいるという現実を改めて実感させた。 今こそ霊輝について、そしてどう助けるかについて話すときが来た。


「スズ、話があるんだが――」


そう言いかけた時、スズが俯いたままでいることに気づいた。また緊張してるみたいだが、なんでだ?


「どうした、スズ?」


恥ずかしそうに俯いた。


「すみません、アレクスさん...急にお名前で呼ばれたものですから」


あぁ、そういうことか。見てても聞いてても分かる。こいつは社交的なものの見方が構造化されすぎてるんだ。だから「さん」を付けるのか。まるで学者みたいじゃないか。


「スズって呼んでも構わないよな?」


「...はい...」


少なくとも許可は得た。これでいちいち別の呼び方をしなくて済む。本題に戻ろう。


「よし、聞いてくれ、スズ。お前が持ってるものについて教えなければならない。それは霊輝って呼ばれるものだ。正確には人工霊輝だ」


少しずつ、いつも話すことを話していく。いつものようにな。もう暗記した台本みたいに、霊輝とは何か、そしてそれに伴うすべてのことを説明する。話し終えると、スズは顎に手を当てて考え込んだ。すっかり思考に没入してて、突然――


「なるほど。霊輝とは私も含めて全ての生命体が持つエネルギーですが、異世界の存在がこの人工版を作り、そのうちの一つが私と共鳴したということですね。客観的に見ると、霊輝とは今まで私が学んできたあらゆる理解を超えた顕現ということになります。この アカデミー にこのようなことの記録がないのは驚きですが...あ!」


すごいスピードで話して、全部理解してるじゃないか。しかも自分なりに分析してる...スズって一体何者だ?


「おい、驚いたぜ。もしかして天才か何かか?」


「え!いえ!私は、ただこれまでできる限り勉強してきただけです...」


謙虚な天才ってやつか。少なくともそう見える。突然、スズがじっと見つめてきた。


「それで、私から霊輝を取り除くために何をするおつもりですか?」


「まず、お前を知る必要がある。霊輝と反応した原因を知りたい。正確には、体が変化したと感じた瞬間だ」


「...体が変化してからですか...そうですね...その日のことはよく覚えています」


うつむいて黙り込んだ。人差し指でテーブルの上に何かを描くように、いや書くように動かし始めた。指だけを使って。


「お話しする前に、君がこの場所がどのような所なのか理解しているか知りたいのですが」


「実を言うと分からない。このアカデミーはどんな場所なんだ?」


「...このアカデミーは特別なんです...理由は、ここには魔術師しかいないからです」


「...はぁあー!!」


魔術師?信じられない。驚きながらこれを処理しようとした。思い返してみると、昔ひかりが似たようなことを言ってたっけ...だから本当に存在するのか...。

次回、アレクスはスズの正体――「魔術師」という存在の真実を知る。

その出会いが何を意味するのか、そして彼女が抱える“秘密”とは一体何なのか。

霊輝と魔術、二つの力が交わるとき、新たな真実が姿を現す。

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