祭りの夜の終わりに
アレクスはルビーとの時間を楽しみながらも、彼女の中に隠された強さや想いを少しずつ知っていく。
祭りの夜、花火の下で訪れるのは安らぎか、それとも新たな脅威か――。
『7月23日 / 9:21』
ルビーの家の前に着いて、ドアをノックした瞬間、ガンッと音を立てて彼女がドアを開けた。腕を組んで、俺が何か言うのを待ってる。
「準備できてるか?今日は海を楽しもうぜ」
「ふん」
今日の計画は単純だった。ビーチで彼女と時間を過ごして楽しむこと。砂の上を歩いて、海を眺めて、波打ち際で遊んだ。何か食べ物を誘いたかったんだが、今の状態じゃ味を感じることができないから、食べ物は完全に避けた。
それなのにルビーは焼き肉の屋台をじっと見つめてる。
「まだ焼き肉の味、覚えてるんだ。食べられなくなったのが恋しいな」
何て言えばいいのか分からなかった。明らかに彼女は試してみたいだろうが、できないんだ。
歩き続けてると、また別のトーナメントがビーチで行われてた。今度はビーチテニスだった。
「ボク、やってみたいな」とルビーが言った。
なんで俺はいつもビーチトーナメントに巻き込まれるんだろうな、と思いながらも準備した。ビーチテニスについてはよく分からないが、ルビーはほとんど、いや全部のプレーをこなしてくれた。
決勝まで来たんだが、相手が誰なのか分かった時は驚いた。ライラとメリッサだった。しかも今まで見たことのない水着を着てる。
ライラは袖付きの水着にフリルスカートが付いたやつを着てた。パステルイエローで、腕にはアームフロートまで付けてる。興奮して飛び跳ねてた。
メリッサは薄緑色のシャツを着たハイウエストのレトロビキニ。可愛く見えるが緊張してて、顔が真っ赤だった。
ルビーは彼女たちがどこかで見た顔だと言う。俺に近づいて言う。
「おい、あいつらあんたの友達だろ?」
「そうだ」
「全力で行っても構わないのか?」
「構わないさ。彼女たちだって手加減しないだろうな」
「ふん、強い相手だって言ってるのか?」
「正確には分からないが、決勝まで来たってことは何かあるだろうな」
その瞬間、ルビーが興奮してるのが分かった。彼女の霊輝を感じ取って、何かを理解した。どうやら彼女が興奮したり夢中になったりする時、霊輝が高まるみたいだ。だから前は検出できなかったのかもしれない。彼女の霊輝の奇妙で特殊な特徴だった。
考え込んでる間に、ルビーがライラとメリッサに向かって歩いて行ってるのに気づかなかった。
「待てよ!」
ルビーがライラとメリッサの前に立っていた。メリッサはルビーの存在に萎縮しているようで、ライラの後ろに隠れようとしているが、身長差でそれは無理だった。一方、ライラはルビーの前に堂々と立ちはだかる。
「あなたがお兄ちゃんの新しい友達なの?」
「お兄ちゃん?待てよ!お前、あいつの妹か?」
「そうなの!妹として、お兄ちゃんと同じくらい強いなのよ」
「そりゃ見てみねぇとな」
ルビーが振り返って動機づけられたが、俺のところに来る前にメリッサも声をかけた。
「待って!」
「あ?」
「あの、その...負けないよ!」
ルビーは微笑むだけで、みんな決勝の準備をした。ルビーは全力で始めたが、ライラも引けを取らない。俺と一緒に練習していただけあって、動きがルビーと同じくらい印象的だった。俺はほとんど何もしていない。メリッサもほぼ同様で、ついに試合の決定的な瞬間が来た時、次の動きを決める者が勝者となる。スコアは同点だった。
ライラとルビーが最終的に見つめ合う。目が炎のように燃えているようで、素早い動きでルビーがライラとメリッサに勝利した。ビーチテニストーナメントは俺とルビーが優勝した。
ルビーは興奮して飛び跳ねながらとても嬉しそうだ。ライラに近づいて手を差し出す。
「すげぇ試合だった。また勝負しようぜ」
「うん!」
ライラがルビーと握手する。二人とも強い競争心を持っているようだ。
この後、俺はみんなで一緒に時間を過ごそうと誘うことにした。ルビーが同じような境遇にいた女の子たちと知り合う良い機会になるだろう。
ライラがルビーと普通に話していた。自分の霊輝を持っていた頃の話をしてる。やがてメリッサも加わって、ルビーに自分の体験を語った。二人がこの瞬間を共有することで、ルビーが再び生きてる実感を取り戻すきっかけになればいいんだが。
しばらくして、ライラとメリッサは帰っていった。俺はルビーともう少し歩くことにした。
「信じられないよ...ボクと同じ体験をした子たちがいたなんて」
「今、あの子たちは良くなってる。辛い経験をしたけど、今は安全で、また人生を楽しんでるんだ」
「...ねぇ、あんたがその霊輝とかいうのからボクを解放してくれるまで、あとどのくらいかかるんだ?前の自分に戻りたいよ...あの子たちと話して、なんか変な気分になった」
「早く解放されたい気持ちは分かる。でも、お前の感情と反応する瞬間が必要なんだ」
「うーん、感情が解放される場所が必要ってことなら、今度の土曜日にこの辺りの祭りに行くのはどうだ?海辺祭りって呼ばれてるやつ」
祭りか...悪くない。そこで楽しい時間を過ごせば、彼女を解放する鍵となる瞬間が来るかもしれない。
「よし、決まりだな。土曜日にその祭りに行こう」
「本当に?あんたの予定を邪魔しない?そもそも何日くらいここにいるんだ?休暇中だろ?」
「心配すんな。滞在は七日間の予定だから、日曜の朝に出発する」
「...」
なぜか急にルビーが悲しそうな表情になった。あまりにも突然で心配になる。
「どうしたルビー?悲しそうに見えるが」
「別に何でもない」
日曜日に出発することと関係があるのか?海の近くでずっと暮らしてきた彼女なら、関係を築き始めた相手が去ると聞いて悲しくなるのも当然だろう。俺たちの住んでる場所には大きな距離の違いがある。念のため、何か代替案を考えておく必要があるかもしれないな。
『7月24日 / 10:49』
ルビーの家に再び戻ってきた。彼女ともっと時間を過ごしたかったからな。海に近い場所に住んでる彼女だから、今回は海に関連した何かをしようと思ってた。ルビーがずっと探してるあのネックレスを見つける手伝いをするんだ。
今日これをやる理由は、昨夜アンジュがそのネックレスを見つける唯一の可能性があると教えてくれたからだ。ただし、特定の条件が必要だって言ってた。そのためにいろいろ準備したんだが、まずルビーがその場にいること、そしてアンジュが自身の存在を隠すこと。もう一つはちょっと複雑かもしれない—アンジュはルビーに特別なブレスレットを着けてもらう必要があるって言ってた。でも、ルビーは着けてくれるかな?
「おい、ルビー、泳ぐ前にこのブレスレット着けてくれるか?」
「ブレスレット?別に構わないけど、なんで?」
「まあ、お守りみたいなものだと思ってくれ」
意外にもすんなりと着けてくれた。正直、断られると思ってたから驚いたな。
泳ぎ始めると、遠くでアンジュが刀を抜いて地面に突き刺した。不思議な波動が水全体に広がったが、ルビーはそれに気づいたみたいだ。
「今のは何だった?」
「何でもない、探しに戻ろう」
ルビーは水中での抵抗力が高いし、今の状態なら溺れる心配もない。でも俺の限界に合わせてくれてたから、一緒にいることができた。
しばらくそうしてると、いつの間にかアンジュの姿が見えなくなってた。気がつかなかった。休憩のために岸に戻ると、ヤシの木の陰にルーシーの気配を感じた。
「ルーシー、そんなところで何してるんだ?」
俺の声を聞いて驚いてる。まさか、あれが良い隠れ場所だと本気で思ってたのか?
「あ、アレクス!偶然ね!」
偶然なわけないだろう。完全にスパイしてたか、最初からついてきてたんだな。よく見ると、彼女は鮮やかなオレンジ色の縞模様が入ったスポーツビキニに短いスカートが付いたやつを着てた。
「実はエミリーも一緒なの」
ルーシーが反対側のヤシの木を指差すと、そっちを振り返った瞬間、エミリーの頭がちらっと見えたがすぐに隠れた。そういえば、エミリーはこのビーチ旅行で一番距離を置いてるな。みんなが俺と時間を過ごそうと順番を決めた時も、彼女だけは自分から外れたんだ。なんでだろう?
エミリーの方に近づいていった。
「エミリー、隠れるふりはするな」
椰子の木の陰から、エミリーが緊張と恥ずかしさで顔を赤くしながら出てきた。水着も持ってきていたんだな。競泳選手みたいなワンピース型のスポーティーなデザインで、動きを表現するような流線型のラインが入っている。素材には魚の鱗みたいな真珠のような輝きがあって、深い紫色をしていた。マイクロファイバーのタオルも持っている。その水着が彼女らしい真面目で控えめな雰囲気を演出していた。
「せっかく二人ともここにいるんだから、一緒に来ないか?」
エミリーは神経質そうに動揺して答えた。
「先輩、どうして一緒に行かなければならないんですの?私はただルーシー先輩に無理やり連れてこられただけなんですのよ」
ただの言い訳だったが、質問するより、エミリーに仲間に入ってもらうのが一番だろう。
「来いよエミリー、そんなに控えめになるな。前はもう少し表現豊かになってきてたじゃないか。今さら後退するなよ」
彼女の肩を軽く押してやると、エミリーは緊張しながらも歩き始めた。三人でルビーの近くに座ると、ルビーが言った。
「あんたたちもアレクスの友達なのか?」
エミリーがルビーに一番近くにいたので、質問は直接エミリーに向けられた。それでエミリーはますます緊張してしまった。
「わ、私は、彼は、えっと...」
ルビーは一瞬困惑したような顔をして、エミリーをじっと見つめていた。エミリーがまだ言葉をまとめようとしている間、まるでエミリーの何かを発見したかのように、ルビーが言った。
「おい、あんたのその目、野心でいっぱいだな」
「え?野心です?」
「あんたを見てると、心の奥深くで戦う魂を持ってるのがわかるんだ」
「え?私が?戦う魂を?」
エミリーはとても混乱していた。もしかしたらルビーの言葉が彼女には奇妙だったからかもしれないし、エミリーがルビーの生き方を知らないからかもしれない。でも、ルビーのその言葉は俺の心にも響いた...エミリーにも戦う魂があるのか。
少しずつ、ルーシーとエミリーがルビーと会話を始めた。ルーシーは霊輝と共に生きてきた自分の人生についても話した。でもルビーがエミリーが自分のことを何も話していないことに気づいて言った。
「おいエミリー、あんたの霊輝での生活について聞かせてくれないか?」
「あ!?いえ、その...私はルーシー先輩がお話ししたような霊輝や、あなたが持っているような霊輝は持っていませんの。私が持っているのは自然霊輝で、先輩のものにより近いんですのよ」
「ふーん...」
その詳細を聞いて考え込むような表情になり、まるで俺を再分析するかのように振り返って見てきた。
結局ルビーは何も言わなくなって、今日はもうやることがなかった。ホテルに戻って皆に話さなきゃな。明日ルビーを助ける計画について相談する必要がある。新しい計画があるんだが、少しみんなの助けが必要だ。全員が協力してくれることになった。
『7月25日 / 10:14』
今日はひかりの助けで、みんなで行けるくらい十分大きな船を予約することができた。船で周辺を見回る予定だ。船にルビーが乗った時、こんなにたくさんの人が集まってるのを見て驚いていた。
「おいアレクス、なんであんたの友達全員連れてきたのさ?」
「ただお前にみんなと一緒に楽しんでもらいたいんだ。俺たち全員で楽しい時間を過ごそう」
船が出てから、最初にアナが近づいていった。邪魔したくなかったから、二人を話させておいた。アナが話し終わった後、今度はフィリアが近づいた。また邪魔したくなかったので、二人に任せた。フィリアが去った後、ルビーに近づこうとしたが、ライラ、エミリー、メリッサに先を越された。みんなとても感動的に話しているようだったので、近づかない方がいいと判断した。彼女たちに話させておくのが一番だった。
ルーシーが俺がルビーに近づこうとしているのに気づいて、少し笑った。
「何がそんなに面白いんだ?」
「ううん、何でもないの。ただ、見てよ、ここに集まってる人たち全員。アレクスがいてくれたから、こんなこと起こったんだよね」
確かにその通りだった。でも俺がその功績を独り占めする資格があるとは思えなかった。
ようやくルビーが一人になった時、近づいた。明日はもう海辺祭だ。すべてがあまりにもうまく行き過ぎて驚いていた。あとは彼女を解放するだけだ。
「どう思う、ルビー?」
「何をさ?」
「彼女たちのこと。お前が再び本当の自分に戻れるチャンスがあることについて」
「考えることなんてないさ。そもそも力なんて欲しくなかった。ただ自分らしくいることに努力しただけだ、それだけさ」
本当に彼女は強い意志を持っている。今まで出会った中で、最も冷静でいられるのが信じられない。でもまだ心の中にあの棘がある。ルビーのネックレスを見つけること...まだ何もない。アンジュは何も言ってこないし、セレステがどこにいるかも分からない。明日までに彼女たちが見つけてくれることを願っている。それでも希望は残っている。ルビーにとって、それがとても大切な意味を持つものだから。
『7月26日 / 15:20』
一日中、今夜のルビーとの時間に備えて準備してた。他の奴らは海辺祭をルビーと過ごすことで少しムカついてるみたいだったが、ひかりは家の近くに他の祭りもあるから気にしないって言ってくれた。でも俺はどう対処すればいいかわからなかった...夏の間、もっと祭りに参加することになるのか?一体どれくらいあるんだ?
それはさておき、ルビーを探しに出かけた。アンジュはまだ現れない...一体何をしてるんだ?本当に何か見つけたのか?戻ってきてもらう必要があるが、全然姿を見せない。
ルビーの家に着くと、彼女が出てきた。浴衣を着ている。
「...で、何も言わない?」
「あ、似合ってるよ」
腕を組んで、怒ってるフリでもしてるのか?それから俺の手を取って言った。
「海辺祭の場所、案内してあげる」
頷いたが、案内なんて必要ないだろう。海辺祭は誰でも見えるところにある。どこにあるかわからないはずがない。その時気づいた...これは俺の手を触りたいための言い訳だったんだ。
黙って歩いていると、会場は人でいっぱいになってきた。ここを歩くだけじゃ足りない。ゲームや食べ物の屋台がいくつも並んでいたので、行ってみることにした。特に彼女が試したがってる屋台があった。細い紙が付いた棒で小さな魚を捕まえるやつだ。本当にあんなもので何か捕まえられるのか?
ルビーは試し続けてるが、全然うまくいかない。イライラし始めた。俺が介入して、別の場所に連れて行かなければならなかった。
「なんで止めるのさ!もう少しで取れそうだったのに」
「ああ、そうだな。でも今は別の場所に行こうぜ」
一緒に歩いてる時、電柱の近くに立ってるアンジュに気づいた。俺が見た瞬間、彼女が手を振った。話したがってるサインのようだった。
「ごめん、ルビー。ちょっとトイレに行ってくる」
彼女から離れると、アンジュが公衆トイレの間で待ってた。周りに人がいないようだったから、近づいた。
「どうした、アンジュ。見つけたのか?」
彼女が手を差し出してきた。俺は手のひらを開いて、彼女が渡そうとしてる物を受け取った。手に取ったのは...ネックレスだった。でも、アンジュの表情は喜びじゃなかった。悲しそうに見えた。
「これが、そのネックレスか?」
「ええ、でも問題があるの」
「問題?」
「そのネックレス、写真が入ってるって言ってたわよね?」
「ああ、それがどうした?」
「自分で確かめてみなさいよ、そのネックレス」
蓋を開けてみると、そこにあったのは...何もなかった。ネックレスは空っぽで、写真なんて入ってない。
「多分水でネックレスの中の写真が駄目になったのよ。でも間違いない、これが彼女のネックレスよ」
失望した。そんな気持ちになるべきじゃないのに、そう感じてしまった。ルビーに一番大切な思い出を返してやりたかった。アンジュとセレステのおかげで見つけることができたのに...でも、ネックレス自体よりも、中に入ってた家族の写真こそが重要だったんだ。
「自分を責めるなよ、アレクス。まだ渡すことはできるわ。きっとこういうものでも喜んでくれるはずよ」
アンジュの言葉は心に響いたけど、受け入れられなかった。これを渡しても失望させるだけのような気がした。それでも、彼女がずっと探してたネックレスには違いない。強く握りしめて、ポケットにしまった。
「ありがとう、アンジュ」
まだ心に迷いを抱えたまま、海辺祭の出口付近で待ってるルビーのところに戻った。なぜ彼女はあそこにいるんだ?
何も言わずに、突然俺の手を取って言った。
「走ろ!もっと二人きりになれる場所があるんだ」
驚いたが、ルビーと手を繋いで走った。どこに向かってるかわからなかったが、高台に着いた。ここから海岸と周辺の海岸線全体が見える。
「ここから花火が見える」
花火?そんなショーがあるなんて知らなかった。彼女は草があるのに気にせず地面に座った。俺も同じようにした。夕日を眺めながら、空を見て、人々や道路を通る車を見ていた。すると...空に何かが現れた。開いた。俺はそれが何かわかってた。前に見たことがある...夢喰いだ。
次回――夢喰いとの激しい戦いが幕を開ける。
ただの衝突ではなく、アレクスとルビーにとって大きな転機となる一戦。
二人で立ち向かうその瞬間、何が変わり、何が残るのか。




