歪む現実、這い寄る悪夢
アレクスの日常は一見すると穏やかに続いていた。仲間たちと過ごす時間や試験勉強に追われる日々の中で、彼は確かに成長を感じていた。だが同時に、夢喰いにまつわる異常が少しずつ姿を現し始める。不可解な現象、そして誰も気づかない奇妙な影……。静かな日常の裏側で、何かが再び動き出そうとしていた。
『6月26日 / 17:19』
ベッドに横になりながら、昨日フィリアと起きたことを思い出していた。あの子は『全てを処理するのに時間が必要』とだけ言った。彼女自身の霊輝が、なぜかごく限られた記憶――具体的には、俺の存在だけを――取り戻させた。アンジュでさえもその時は説明できなかった何かだった。
フィリアは今もあの教会に留まっているが、あの教会のことを思い出すと、あの時の謎は全ての出来事の中で最も奇妙なものとして残っている。あいつらが持っていた力は何だったんだ?あの物体は?そして、あの男は一体...
ベッドから起き上がると、セレステが怒った顔で立っていた。俺に近づいてきて、俺の影を触ると、そこからアンジュを無理やり引っ張り出し、猫のように持ち上げた。
「おい、離せよセレステ!先輩にこんな扱いをするなんて、どういうつもりよ!」
アンジュが怒って言った。
「夢喰いと一人で戦わせておいて、先輩だなんてよく言えるわね」
「仕方なかったのよ、アレクスが私の助けを必要としてたから」
「その人間と任務、どっちが大事なの?それとも私に何か隠してることでもあるの?」
アンジュは視線をそらし、口笛を吹こうとしたが失敗した。それがかえって怪しく見えただけだった。セレステは諦めたようにアンジュを床に落とした。これ以上議論しても無駄だと思ったようだ。
でも、これは二人と話すチャンスだった。もしかしたら、あの物体や力、あの男について何か知ってるかもしれない。
教会で起きたこと、そこで目撃したことを二人に話した。両方とも考え込んでいたが、最初に口を開いたのはセレステだった。
「そういえば、訓練時代に似たような話を聞いたことがあるわ」
「どんな話だ?教えろ」
「間違ってるかもしれないけど...キミが見たものがその通りなら、あの人間たちは神の力の欠片を手にしてるのかもしれない」
「何だって?!」
セレステが明かしたことはあまりにも衝撃的で、処理できなかった。神に似た力と正面から戦ったなんて信じられない。
「本当にそう思うのか、セレステ?アンジュみたいに冗談じゃないよな?」
「ちょっと!」アンジュが抗議した。
「全然冗談じゃないわ。でも言ったように、確信はない。自分の目で見るか、報告書を送って誰か知ってる人がいるか確認しないと」
アンジュがセレステの肩を掴んで揺さぶり始めた。
「それはダメよセレステ!誰にも報告しちゃダメ!今は見過ごしましょう」
「え?どうしてそんなことを?」
考えてみると、セレステはアンジュとは正反対のようだ。彼女の方が知識がありそうで、自分たちの世界で起きることに忠実に見える。でもアンジュは明らかに自分たちの世界の何かを疑っている。じゃなきゃ、こんなことはしないはずだ。
でも、神のような力にあんなに近づいていたなんて、まだ信じられない。そこで頭に浮かんだ質問を躊躇なく聞いた。
「じゃあ、そんな力が存在するってことは、神も存在するって言ってるのか?」
セレステとアンジュは俺を見て、その質問が変だというような困惑した表情を浮かべた。そして二人同時に答えた。
「そうよ」
もう何を考えていいのかわからなかった。二人の真剣な顔を見れば、冗談を言っているわけじゃないのは明らかだった。フィリアを救ったばかりだが、もう次の子を探し始めなければならない。でもセレステがここにいて、アンジュの真実を知らない以上、難しくなりそうだ。それに、彼女たちが一体何をしていたのかもまだわからない。夢喰いと戦っていたのはわかるが、それだけなのか?
「おい、なんでそんなに長い間外にいたんだ?あいつら、夢喰いに何かあったのか?」
セレステが一歩前に出て言った。
「大きな問題があるの。最近、夢喰いの行動がおかしくなってる。調査中よ」
「悪いが、よくわからない。『おかしい』って、どういう意味だ?」
セレステはアンジュを見てから、また俺に視線を戻した。
「夢喰いが人間をより激しく攻撃してるの。何かが彼らを『操っている』みたいだけど、何が起きてるのかわからない。とにかく異常すぎて、うまく説明できないほどよ」
彼女の話し方からすると、夢喰いがより凶暴になっているらしい。これは深刻で、理解できない不自然な行動のようだ。
「手伝えるなら、手伝うぞ」
セレステは俺がそう言うのを聞いて驚いた様子だった。アンジュを見て、何か言ってもらうのを期待しているようだったが、アンジュは何も言わなかった。
「まあ、いいわ。キミが役に立つかもしれないけど、まず状況を理解するために報告書を読んでもらう必要があるの」
セレステが何枚かの紙を俺に渡した。受け取って見てみたが、今まで見たことのない奇妙な言語で書かれていた。
「読めない...」
セレステが苛立って言った。
「なんて面倒な人間なの」
彼女は再び紙を取り、それを折りたたんでから腰に手を当てて言った。
「私が直接説明してあげるわ。状況の要約をね」
セレステの説明に注意を向ける準備をして、彼女が続けた。
「夢喰いが群れで現れてる。普通はそんなことしないのに。今回は感情的に不安定な者なら誰でも狙ってる。複数が攻撃して霊輝を奪ってる。夢喰いは考えないし意識もないから、この全てを操っている何らかの存在がいると疑ってるの。これが要約した報告よ」
アンジュが拍手した。からかっているのか、本当に良くやったと思っているのか、どちらの理由であれ、セレステはそれを良く思わなかった。
「なんで拍手するのよ?」
「別に〜」
ただ謎が深まるばかりだった。これからは夢喰いの気配を感じたら、もっと注意深くいないといけない。
『6月27日 / 12:09』
昼休みの時間、まいに誘われて彼女たちと一緒に昼食を取ることになった。大きなグループで教室で一緒に食事をするのは少し変な感じがした。榊も一緒にいて、最初に話し始めたのは彼だった。
「おい、何か思いついたんだが、もうすぐ夏休みが近づいてるだろ?みんなで一緒に何かやらないか?」
まいは榊の提案を聞いて興奮した。
「すっごくいいじゃな~い!ウチも参加したいよ~。で、どんなアイデアがあるの~?」
「まあ、特に何も思いついてないんだが...たぶん海とか?」
「うーん...でもすっごく遠いじゃない。1、2時間かかるかもよ~」
ルーシーが口を挟んで言った。
「遊園地に行くのはどうかな?」
「いいねルーシーたん~!」
まいは本当に何でも楽しそうで、話題を出した榊よりも一番興奮しているようだった。カズミが手を上げて話そうとした。
「ごめん、みんな。でも私は夏休み中ずっとは無理なの。彼氏と過ごしたいから」
それを言った瞬間、まいと榊は驚いて同時に叫んだ。
「えっ?!」
まいが最初にカズミを問い詰め始めた。
「ちょっと待って、いつそんなことになったの?え?よくわからないよ~、教えて~!」
カズミは少し緊張と恥ずかしさで微笑んだ。俺にとっても、彼女が自分の関係について公然と話すのは驚きだった。カズミは言った。
「2ヶ月前に告白されたの。彼の気持ちを聞いて...1年生の時からずっと男子バスケ部にいる子なのよ。いつも競争してて、地区大会に行けたら付き合い始めようって約束したの」
まいは困惑して眉を上げた。
「でも男子バスケ部は今年も去年も何にも到達してないじゃない~」
カズミはその矛盾した発言に少し笑った。
「うん、確かに私のチームだけが勝ったの。でも彼は告白して謝ってくれて...この3年間、たくさんの思い出を共有した人だから...単純に受け入れたのよ、ヘヘ」
まいは友達のために喜んでいるようだった。ルーシーも同じく。でもヤヨイだけがこのことに無関心だった。
「そんな恋愛なんて馬鹿馬鹿しいの」
みんながヤヨイを見たが、彼女はもう何も言わず食事を続けた。壊れそうな雰囲気を修復するために、まいは他の話題について話し続けた。俺はただこの瞬間を楽しんだ。その日は何も起こらなかった。夢喰いの出現もなく、何もなかった。とても静かな一日だった。
『6月28日 / 10:29』
昨日、みんなからメッセージが届いた。『アナの家に集まろう』って。理由は単純で、ただ俺に会いたいかららしかった。で、今……アナの家でみんなと一緒にいるけど、フィリアだけは来ていない。
「アレクス、もしフィリアがどこにいるか気になってるなら、彼女はテーマカフェでアルバイトを始めたのよ」
ルーシーがそう説明してくれた。
フィリアがアルバイト?それを聞いて驚いた。今、一生懸命頑張ってるんだな。そう思うと、なんだか嬉しくなった。でも、その思考はひかりに遮られた。
「ねぇアレクス、何か大きなことをやってみたいの。わたしたち二人が興奮するようなことを」
「何の話だよひかり、そんなこと言われると怖いぞ」
「怖がらないでよ、すごいプランがあるんだから、ククク」
ルーシーが怒った顔でひかりを俺の視界から引き離した。
「彼から離れなさいな!変なことをするのは許さないわよ」
「わたしがいつ変なことをするって言ったのよ。そんな変なことを想像してるのはお前でしょ?」
また始まった。二人とも喧嘩ばかりしてる。
メリッサが俺の隣に座って、漫画を渡してくれた。
「これは何だ、メリッサ?」
「最近読んでる漫画よ...面白そうだから、お前にも読んでもらいたくて...」
そう言って立ち上がると、別のソファに移って顔を隠そうとした。俺は少し困惑しながら笑った。メリッサは人がたくさんいると恥ずかしがるんだな。二人きりの時はもっとオープンで表現豊かなのに。
周りを見回すと、フィリアの他にエミリーもいなかった。なぜか、みんなで一緒に楽しい時間を過ごすべきだと感じた。そこで、ある考えが浮かんだ。明日の日曜日に、みんなを集めよう。
「おい、みんな聞いてくれ。明日、ここでみんなを集めるのはどうだ?」
みんなが俺を見つめた。アナは台所からお菓子を持ってきたばかりで、なぜみんなが俺を見ているのか分からない様子だった。
でも、俺の考えははっきりしていた。みんながもっと仲良くなってほしいんだ。みんな霊輝を背負う運命を共有している。お互いを理解し合えるはずなのに、もっと親密になる必要がある。そして、エミリーにも他の人たちともっと打ち解けてほしい。だから、みんなを呼びたいんだ。
そのアイデアを説明すると、みんな賛成してくれた。こうして、明日はみんなで集まることになった。俺の目標は、みんなが一緒に楽しく過ごすことだ。
『6月29日 / 11:40』
今日はアナの家にみんなが集まってた。今回は誰も欠席していない。みんなで仲良くできればいいんだが...なぜか俺が注目の中心になってるみたいだった。どういうわけか、みんなが俺がリーダーシップを取って何かを提案するのを待ってるように見える。みんな霊輝について知ってるし、それが俺たちを結びつけたテーマでもあるからな。そこから始めることにした。
「みんな、急で悪いんだが、裏庭に出て霊輝の練習をしようぜ」
みんな困惑してるみたいだったが、俺にはこれがみんなで自分を表現し合うきっかけになるって確信があった。
外に出ると、太陽の暑さがもう感じられた。俺はエミリーに近づいた。彼女が今回の主な目的だ。彼女はとても内向的で、もう少し自分を表現してもらいたいと思ってる。
「おいエミリー、この訓練の指揮を取ってくれ。大多数はもう霊輝を感知できるが、まだできない子たちを手伝ってもらえると助かる」
「...先輩、どうして私がやらなくちゃいけないの?」
「俺がお前を信頼してるように、お前にもみんなを信頼してもらいたいからだ」
そう言うと、エミリーは迷いがあるようだった。
しばらく練習してると、少しずつみんなが霊輝と共に歩んできた人生について、どんな気持ちでいたかについて話し始めた。基本的な練習を続けながら、会話は止まらなかった。みんなそれぞれ個性的だ。当然ルーシーとひかりのように違いもある。だからこそ、少なくともお互いをよく知ってもらいたかった。俺を友達として見るだけじゃなく、みんな同士も友達になってほしいんだ。
しばらくして、俺は練習のし過ぎで疲れて汗をかき始めた。その時、ひかりが変な表情で俺に近づいてきた。あまりに変な表情で、誘惑的にすら見えて俺を動揺させた。
「ねえアレクス、腕を見せて」
ひかりが俺の腕を取って触り始めながら言った。
「わあ、もしかして筋肉質になってきてる?この感触見て」
ひかりの指が腕の上を滑る感覚に俺は完全に動揺して、何も言えなくなった。だがその時、ひかりに近づいてきたのはルーシーじゃなくてエミリーだった。
「ちょっとひかり、先輩から離れてよ。人形じゃないんだから、そんな風に触っちゃダメでしょ」
「お〜弱虫がついに牙を見せたわね」
「弱虫なんて呼ばないで!私はエミリーよ。先輩から今すぐ離れなさい」
エミリーがひかりを引き離そうとしたが、ひかりは俺にもっと密着してきて、彼女との接触で俺はますます動揺するばかりだった。
ひかりが突然俺を見上げて、まだ体にぴったりくっついたまま言ってきた。
「アレクス〜汗の塩分濃度が霊輝に与える影響が心配なのよ」
そして突然、ひかりが俺のシャツの袖をまくり上げて、舌を出して舐めようとした。
「おい、ひかり!みんなの前でそんなことするな!」
エミリーも他のみんなと同じくらい驚いていて、除菌シートを取り出してひかりの顔に押し付けた。
「あら、ばい菌まみれさんは消毒が必要みたいよ」
エミリーの目がナイフのようにひかりを刺していた。ひかりは除菌シートを取って、わざとらしく唇を尖らせた。
「え〜エミリーってば意地悪。アレクスの塩分をお前が独り占めしたいだけじゃん〜」
エミリーはひかりの挑発的な口調にさらに怒って、拳を握りしめて言った。
「実験をしましょうよ。あなたの脳みそを被験体にして」
エミリーの様子とひかりの攻撃性を見て、頭がうまく回らなかった。でも他の女の子たちも介入してきた。ルーシーがひかりを俺から引き離して、残りのみんなが心配そうな表情で俺を囲んで、同時にいろんな質問を浴びせかけてきた。そのペースについていけなかった。
これって成果なのか?どうなんだろう。とにかく、みんなと時間を過ごせて、前より親しくなった気がする。それは間違いなく心を温めてくれた。
『6月30日 / 8:15』
授業中、藤原先生が俺をちょっと動揺させる発表をした。
「聞いてちょうだい、みんな。今日で六月も終わりね。そして期末試験が近づいてるから、来週に備えて準備しなさい」
来週は期末試験か...かなり勉強しなきゃいけないな。夏休みまではあと二十日ほどの距離だ。まだ長く感じるが、時間なんてあっという間に過ぎる。今から準備しないと。
ルーシーの方を振り返ってみた。試験のことで全然動じてないように見える。たぶん何度も繰り返してるから心配してないんだろう。そういえば、ルーシーは高校三年生を何度も繰り返してる。きっと成績もかなり高いはずだ...今まで考えたことなかったけど、後で聞いてみよう。
その「後で」は昼休みにやってきた。ルーシーに近づいて成績について聞いてみることにした。
「ルーシー、成績どうなんだ?」
「あんまり良くない成績よ、正直言うと...な」
前の試験を取り出して見せてくれたが、平均ぎりぎりの点数だった。なんで?何年も何年も学校を繰り返してるのに、なんで成績が普通なんだ?
「あたしの成績がこんなだって、そんなに驚いた?ひどいのね...」
「いや、ごめんルーシー!そうじゃなくて...その...長い間やってたから、もう全部知ってて高い成績取れてると思ったんだ」
「エヘヘ、ごめんね。でもあたし、そんなに優秀じゃないの。何度も繰り返したかもしれないけど、そんなに真剣に授業聞いてなかったし、情報も本当に覚えてなかったのよ...少なくともその頃は、ね」
もしかして一緒に勉強したらいいかも。情報はまだ彼女の中にある、ただ思い出せないだけかもしれない。
「今日、俺の家で一緒に勉強しよう!」
何でもないように言ったが、ルーシーを驚かせた。でも彼女はすぐに承諾してくれた。
放課後、俺の家で試験勉強をした。ルーシーはとても上手に説明してくれる。やっぱり予想通りだった。ルーシーはこれらのことを知ってるが、全部知ってることを見せたくないみたいだ。
「あ、間違えちゃった。それが答えじゃなかったのね」
少なくともそう見えた。もう少し勉強を続けた。こんな平穏な日々があるのも悪くない。
『7月1日 / 16:37』
今日はアナの家でエミリー、ルーシーと一緒に試験勉強をすることにした。アナは頭がいいし、試験のガイドとして役に立つかもしれない。
リビング中に開いた本が散らばっている――テーブルの上も、ソファの下も、甚至テレビの前さえ、参考書やノートで埋め尽くされていた。そんな中、アナが言った。
「勉強するには、クラシック音楽を聞きながらお茶を飲むのが一番よくてよ」
ルーシーはアナを眉をひそめて見つめる。まるで「それは嘘でしょ」と言わんばかりに。
「え〜?あたしはバラエティ番組を見ながらお菓子を食べる方がいいな♪」
エミリーが信じられないという顔で割って入る。
「それは逆効果ですよ、ルーシー先輩!勉強に集中してください!」
俺はただ三人を見ているだけだった。それぞれ自分なりの勉強方法があるようだ。
しばらくすると、物事は順調に進んでいるように見えた。いや、むしろカオスと言った方がいいか。みんな好き勝手に勉強し始めた。
ルーシーは適当な歌を口ずさみながら言っている。
「こうやって歌えば覚えられるのよ〜♪ ララ♪」
アナは反応することができず、手で目を覆っている。エミリーはルーシーがうるさくて集中できず、耳に消しゴムを詰めている。
「みんな、ちゃんと勉強できるように組織立てた方がいいんじゃないか」
全員が俺を見たが、正直どう組織立てればいいかなんて分からない。
突然ルーシーが立ち上がって言った。
「そうだ!いいアイデアがあるの!」
ルーシーは鞄の中を探って、どら焼きの包みを取り出した。
「これでエネルギーを取り戻すのよ!このどら焼きがあれば、微分積分なんて朝飯前よ♪」
一人一つずつ配ったが、ルーシーがどら焼きの包みを開けた途端、そこには数学の公式が書かれていて、彼女をキレさせた。
「ああああ!!どら焼きにまで入ってる!」
一口かじりながらゆっくりと言う。
「このどら焼き、きっと教科書を食べちゃったのよ…」
俺は飲み物を少し飲んでいると、アナが自分のどら焼きに一口かじって言った。
「…ラプラス変換の味がするわ」
その言葉を聞いて俺は飲み物を喉に詰まらせた。本当に全てがカオスに終わったようだ。
「お前ら、勉強で脳みそ溶けちまったのか?!」
さらにしばらくして、みんな勉強に疲れ果てた。ルーシーは床に倒れ、たくさんの本とノートが上に乗っかって、ただこう言っているのが聞こえる。
「…これが知識の重さってやつ?」
勉強したと言えるのかどうか? まだ日にちはあるし、悪いことは起きていない。とにかく、今は勉強に集中することにした。
しかし…その時、何かを聞いた。外から奇妙な音が聞こえる。何かが這いずっているような音だ。誰も気づいていないようだ。エミリーさえ立ち上がって見に行かない。
俺が見たものは、道の真ん中で這いずっている何か暗いもの。蛇の体のように這いずり、巨大で道全体を占めている。滑るように這いずっている。
あれは…夢喰いか?
次回、夢喰いに関する謎がさらに深まり、アレクスを不安と恐怖へと導いていく。 それは偶然か、必然か――彼の前に迫る新たな異変。 ただの噂か、あるいは見過ごせない真実なのか。 全てはこれから明らかになっていく。




