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霊輝  作者: ガンミ
65/130

見つめる視線

フィリアとの時間は、どこか不自然な静けさと奇妙な違和感に包まれていた。

そして現れる「夢喰い」、さらには彼女の言動の数々が、謎を一層深めていく。

アレクスの周囲で起きる小さな出来事が積み重なり、やがて大きな真実へと繋がっていくのかもしれない。

『6月15日 / 10:51』


フィリアも座ってるが、俺との距離を保ったままだった。緊張した様子で俺を見つめ、視線があちこちに泳いでいる。突然、彼女が口を開いた。


「それで、アレクス、どうやって入れたんですか?教会の警備が厳しくなって、私でさえ外に出るのが大変になったんです」


肩をすくめて微笑んだ。


「霊輝を感じ取って、警備を避けただけだ」


フィリアは髪を弄びながら、どこか別の場所を見つめていた。何か考え込んでるのか?


「本当に凄いですね...色々なことができて...本当に信じられません...」


「大したことじゃない。会いに来るために努力してるだけだ」


突然、彼女の視線が俺に固定された。まるで俺以外何も見えないかのような、そんな見つめ方だった。座卓の下で、膝を俺の方に少しずらしてくる。声が「好奇心」に満ちて響いた。


「あの...ルーシーから他の女の子たちのことを聞いたんです...」


フィリアの膝が俺に触れるのを感じたが、それよりも重要なのは、なぜルーシーが他の女子たちのことをフィリアに話したのかということだった。もうフィリアが知ってしまった以上、言及するしかない。


「全員、お前と同じ人工霊輝の持ち主だった」


沈黙が流れ、フィリアは俺を見つめ続けた。そして彼女は少し前に身を乗り出して言った。


「それで...よくお時間を一緒に過ごされるんですか?」


眉をひそめた。これは変な方向に向かってる。


「いつもってわけじゃない。どう言うか...時々だな」


「ええ〜」


なぜかフィリアが俺にもっと近づいてきた。肩が触れ合うほど近くに。


「それぞれどんな方なのか教えていただけますか?」


「なんで知りたがるんだ?」


「ただ…私と同じように人工霊輝を持った皆さんが、どんな方だったのか知りたいんです」


「うーん、どう説明したらいいか...みんなそれぞれ個性的だ。ルーシーは例えば優しくて、いつも他人を助けることを考えてる。アナは思いやりがあって、姉さんみたいに面倒見がいいと言える。ライラは妹みたいに子供っぽくて無邪気で、見てて微笑ましい。ひかりは荒っぽくて直接的、何も遠慮しない。メリッサはちょっと不器用だけど、いつも向上しようと考えてて、彼女なりに面白い奴だ...」


フィリアが俺にもっと近づいてきた。目が俺に固定されている。なぜか俺が彼女の目を見た時、他の女子たちの話題が出た途端、フィリアの瞳が虚ろになった――まるで魂が抜けたように。一体、あの話題の何が彼女をそうさせたんだ?


その瞬間、窓から奇妙な音が聞こえた。本能的に俺とフィリアは窓の方を振り返った。


急いで立ち上がって、慎重にカーテンを動かした。もしかして俺たちが見つかったのかと思ったが、そこにいたのは...夢喰いだった。すぐに窓から離れる。これはやばい。部屋に閉じ込められて、あの化け物が外にいるなんて。戦うしかない。


胸に手を当てると、青い光が輝いて、ひかりの鞭を取り出した。ひかりのものとは違って、俺のは濃い青色で、鞭の柄が拳銃のグリップみたいな形になっている。


夢喰いが壁を突き破って部屋に入ってきた。フィリアが俺の後ろに隠れる。


「アレクス、私もあの悪魔と戦うことができますので、お任せを――」


だが、遮るように言った。


「だめだ、俺に任せろ。俺が...お前を守る!」


目の前の夢喰いは小さく、手足の先は鋭く尖っていて、「顔」らしき部分には歪んだ表情のようなものがあった。素早く鞭を動かして捕まえようとする。記憶通り、鞭は勝手に動いて夢喰いを追いかけるが、奴は避けて部屋の中の物を投げ始める。


捕まえようとすればするほど、混乱が広がって、とんでもない騒音を立ててしまう。誰かがドアを叩く音が聞こえる。きっとあの変な護衛の一人だろう。


「フィリア様、どうなさいましたか?その騒ぎは何ですか?」


「何でもありませんの...ただお部屋から虫を追い出そうとしているだけですの」


「お手伝いいたしましょうか?」


「いえいえいえ!大丈夫ですの!」


護衛は去ったが、まだあの夢喰いに当てることができない。


「くそっ、なんで当たらないんだ?」


夢喰いが俺に飛びかかってきたが、その瞬間、鞭を動かすことができて、夢喰いを縛り上げた。カチッという音が聞こえて、夢喰いは黒い煙となって消えた。


疲れ果てて座り込む。訓練不足なのか、なぜあんなに苦戦したんだ?


フィリアが近づいてきて言った。


「本当に貴方は思いやりがありすぎますわ。私もお手伝いできましたのに」


「ありがとう、フィリア。俺が起こしたこの騒ぎのせいで、もう行った方がいいな」


同じ方法でその場から誰にも気づかれずに出て行ったが、フィリアを訪ねたことで、答えのない疑問がたくさん湧いてきた。


『6月16日 / 15:52』


アナからメッセージが来ていた。会いたいと言っていたが、理由は特に言わなかった。学校への道にある公園の近くで会おうとだけ。


到着すると、もうそこで待っていた。ベンチに座ると、アナが口を開いた。


「アレクス、来てくれて良かったわ。お話したいことがあるの」


「何についてだ?」


「君が助けているあの女の子のことよ」


「フィリアのことか?どうした?」


「あの子と知り合いになりたいの」


「なんでだ?」


「特別な理由はないけれど、君がひかりを解放してから考えていることがあるのよ。君が霊輝から解放した女の子たちが、もっと安定した基盤を持てるんじゃないかしら。つまり、君以外の誰かが君について話すことで、解放された時に記憶への影響が少なくなるかもしれないと思うの」


変な方法だと思ったが、アナは頭がいいからな。何ができるか見てみるか。


その時、誰かに見られているような気がした。周りを見回したが何も見えない。霊輝を感じ取ろうとしたが、特に変なものはない。


立ち上がろうとした瞬間、アナの後ろからフィリアがこちらに歩いてきた。驚いた。信じられなかった。


「こんにちは、アレクス!こんなところでお会いするなんて偶然ですわね」


「フィリア!?抜け出せないって言ってたじゃないか」


「そうなんですけれど、今日はなんとか出てこられましたの」


笑顔を見せたが、なぜかその笑顔がいつもより無理やりに見えた。振り返ってアナを見る。


「貴方は?」


「あたくしアナスタシアよ。よろしく」


「よろしくお願いいたします、アナスタシア様。とても上品でいらっしゃいますのね。いつかお話しできればと思いますわ」


アナがフィリアを見て少し不快そうにしていた。俺も変な感じがした。この奇妙な状況は本当におかしかった。


フィリアが歩き始めて言った。


「それでは、また後でお会いいたしましょう。もう行かなければなりませんの」


現れた時と同じように、それ以上何も言わずに去って行った。


アナを見ると、困惑しているようだった。何かがおかしい。何かが合わない。でも何だ?


『6月17日 / 16:32』


今日はひかりに引っ張られて、どこか分からない場所に連れて行かれた。どこに行くのか聞いても教えてくれないから、ただ付いて行くしかなかった。そして着いたのは...バー?でも完全に廃墟みたいになってる。


「なんでこんな場所に?まさか酒でも飲むつもりか?それって違法だぞ」


「違うわよ!それに見てないの?完全に廃墟じゃない」


「まあ、確かにそうだけど...それでなんで俺をここに?」


「この店を茜が買ったのよ。ここで一緒に商売を始めるつもりなの」


「へえ、おめでとう」


ひかりは茜との将来の計画を話すとき、本当に誇らしそうだった。でも気づいてしまった。俺はまだそんなこと考えたこともない。時間が経てば大事な試験が来て、大学に行くことになるけど...この時点で何をしたいんだ?俺みたいな奴は、人生のこの時点でもうやりたいことが分かってるはずなのに、まだ何も...


ひかりが俺の変化に気づいたみたいで、近づいてきて俺の足を踏んだ。


「おい、なんで足踏んでるんだよ?」


「あ!ごめん。なんか暗い顔してたからムカついちゃって」


「...悪い」


「謝罪なんて聞きたくないわ。何考えてるか知らないけど、あの時言ったこと、覚えてるか?」


拳を軽く俺の胸に当てながら、真っ直ぐに見つめてきた。


「『いつでも待つ』って言ったの、覚えてるか?」


拳をぎゅっと握り、こめかみに青筋を浮かべて言い放った。


「何があっても、お前の側にいる。たとえ地獄の底に落ちても、わたしが引きずり上げてやる…!」


手のひらを広げて、俺の心臓の上に押し当てた。


「お前が迷ってるのを見るのは…腹が立つ。だからな、このわたしがお前の『軸』になってやる。ぐずぐず言わずに、わたしを頼れ、アホ!」


やっぱりひかりはひかりだ。この言葉で俺も元気が出てきて、将来のことを考え始めようと思った。何か言おうと彼女に近づいた時、誰かに見られてる感じがした。でもこの通りはほとんど人が通らないし、何も見えない。霊輝も感じられない...


ひかりの方を振り返ると、その向こうからゆっくりとした足取りで歩いてくる人影が。フィリア...


「こんにちはアレクス。偶然ですね、ふふっ」


ひかりが眉をひそめて振り返り、それから俺を見た。


「で、この『いい子ちゃん』は誰?」


俺が答える前に、フィリアがひかりの前に出た。


「私はフィリアです。よろしくお願いします。貴方のお名前は?」


「...ひかり...ちょっと離れてくれる?」


「はい、すみません。ご迷惑をおかけしました」


ひかりはフィリアを見て困惑してるみたいだったけど、それより重要なのは、なんでフィリアがここにいるんだ?偶然?でも昨日も同じことが...


「フィリア、ここで何してるんだ?もう逃げる方法があるなら、明日会うのはどうだ?」


「ふふっ、すみませんアレクス。でも今日は他の場所で用事があるんです。それでは失礼します」


振り返って去ろうとした瞬間、フィリアがひかりを一瞬見つめた。その視線は何か読み取れない感じで、あまりに短かったからひかりはただ眉をひそめたまま何も言えずにいた。


「変な奴ね」


何か変なことが起きてる。間違いない。明日フィリアに会わないと。でももし見つからなかったら?いったい何をしてるんだ?頭の中を整理できないまま、まだ彼女の霊輝について何も知らないということだけは分かった。もしかして、それが関係してるのか?


『6月18日 / 17:22』


今日はフィリアを探しに行く勇気が出なかった。何か変なことが起きてるし、アンジュとセレステもまだ現れる気配がない。これで気を紛らわそうと、今日はライラと公園にいる。あっちこっち走り回って楽しそうにしてるライラを見てる。一緒に走りたいけど、疲れちまうだろうな...いや、でもこれはチャンスかもしれない。


立ち上がってライラに声をかけた。


「ライラ、鬼ごっこでもするか?」


「うん!遊ぼう遊ぼう!」


俺とライラは互いを追いかけっこして走り回った。体を動かすのも、体力をつけるためにはいいかもしれない。前にあの夢喰いと戦った時、格闘能力が落ちてると感じたからな。あんなことは二度と起こさせるわけにはいかない。


しばらく走って疲れたが、ライラとの時間をもっと有効活用したかった。


「おい、ライラ。今度は違うことをやってみたいんだ」


「何なの?ジャンプ?それとも霊輝の練習のこと言ってるの?」


「...さすがだな、何でも見抜きやがる。そうだ。戦闘用の霊輝について知ってるだろ?練習を手伝ってくれ」


「いいよ!お兄ちゃんと一緒にいる時間が長い方がいいの!」


俺とライラは午後いっぱい、様々な霊輝の戦闘技術を練習した。コントロール、形を作ること、弾丸のように放出すること。ライラは霊輝を「チャージ」する方法まで知ってたが、その技術は使えないらしい。ただ知識として知ってるだけのようだ。霊輝を使いすぎた時、消費したエネルギーをある程度回復させる技術があるが、疲労は残り続ける。つまり、持久力がこの力には重要ってことだ。


ついに日が暮れかけてきた。家に帰った方がいいだろう。でも帰る前に、また誰かに見られてるような感覚を感じた。もう暗くなりかけてるし、何も見ないことにして、ライラと一緒に急いで家に帰った。


あの感覚は何だ?一体何なんだ?答えが必要だが、誰に助けを求めればいいんだ?


家に向かって歩いてる途中、メリッサからメッセージが来た。明日会いたいとのことだ。受け入れるかどうか分からなかったが、最終的に明日会うことにした。


『6月19日 / 16:47』


あの漫画喫茶に戻ってきた。メリッサと過ごした数え切れない時間を思い出す場所だ。店に入ると、彼女がそこに座っていた。手には使い古したになった本を持っている。


隣に座ると、メリッサはこちらを振り向いた。そして、その本をテーブルの上を滑らせて俺の方へ押しやった。表紙を見た瞬間、息を呑んだ。そこには見覚えのあるタイトルが書かれていた。「レイヴン姫と無名騎士」—あの本だった。


「待てよ、メリッサ。この本をどうやって手に入れたんだ?」


「手に入れたんじゃない...取り戻したの」


「どういう意味だ?」


「お母さんが...あの日、わたしたちが喧嘩して、二人でこの本を破いてしまった時、お母さんが拾って保管してくれていたの。できる限り修復してくれて...そして今、ここにあるのよ」


彼女は哀愁を帯びた笑みを浮かべながら、自分と父親を繋いでくれたその本を見つめた。コピーでも新しい本でもない。いつも彼女と一緒にいた、本物の本だった。


「よかったな」


「ありがとう...もう一度、ありがとう。お前のおかげで勇気をもらえたの。わたし自身、ちゃんと覚えてないかもしれないけど...それでもありがとう」


彼女の心からの感謝の言葉に、俺は何かしら役に立てたんだという気持ちになった。メリッサは本の表紙に手を置き、視線で俺にも同じようにするよう促した。緊張しながらも、彼女の手の上に自分の手を重ねた。沈黙が流れる中、彼女は目を閉じた。何かを思い出しているのか、それとも考え事をしているのか...


しばらくして目を開けると、彼女は言った。


「お前には話したことがあるかもしれないけど、前はこれの新しいコピーを手に入れようと思ってたの。この本はもう価値がないって思ってたから。でも、また手に取ってみると...わたし、本当にバカだったなって...あああ!」


突然、彼女は自分の頬を叩き始めた。何かを感じ取ろうとしているのか?俺には彼女の急な行動が理解できなかった。


「なんて子どもっぽいんでしょう...もう子どもっぽいことはやめるわ。アナスタシアさんみたいに大人になるの」


アナの名前を聞いて、初めて二人が出会った時のことを思い出した。あの時、メリッサはアナを見て怯えていた。好奇心が湧いてきた。


「そういえば、お前がどう覚えているかは分からないが、初めて会った時、お前はアナを見て怯えてたよな。なぜだ?」


彼女は緊張したように、視線をあちこちに向けながら答えた。


「それは...どう言えばいいかしら...」


指を絡め合わせながら、説明しようと努めている。


「簡単に言うなら...アナスタシアさんは、わたしをいじめてた同級生を思い出させたの...だから怖かったのよ」


本当のことなのか、それとも嘘なのか?彼女の中二病時代は高校まで続いていたから、アナのような人に出会ったことがあるのかもしれない。しかし、どういう意味で?彼女の反応から判断すると、メリッサはアナの外見について話しているようだった。それが最も明らかな理由だろう。しかし、それを確かめようとした時...


誰かが俺を見ているような気配を感じた...


周りを見回すと、遠くからフィリアがこっちに向かって歩いてくるのが見えた。また...どうして彼女はこんなに近くにいるんだ?一体何が起こってるんだ?


「こんにちは、アレクス...何という偶然でしょう〜」


フィリアの顔を見ると笑顔を浮かべていたが...今まで見たことがないほど作り物の笑顔だった。そして瞳は魂が抜けたように空っぽに見える。何が起こっているんだ?何も言葉が出てこない。


フィリアがメリッサの方に歩み寄って話しかけた。


「こんにちは、初めまして。私はフィリアです。貴方のお名前は何でしょうか?」


「...メリッサ...よ」


「あら〜素敵なお名前ですね。それで、貴方はアレクスとどういう関係なのでしょうか?」


「...親友だよ...」


「あら〜そうなんですね、ただの親友なのですね、ふふっ」


なぜかフィリアの態度がおかしかった。何かが噛み合わない。メリッサと話している時、彼女の中に敵意のようなものを感じた。歩き始めながら振り返ると言った。


「それではまた後で、アレクス〜」


何も理解できなかった。論理的に考えることすらできない。メリッサがシャツを引っ張ってきたので振り向くと、彼女が言った。


「あの人...怖いよ...」


フィリアに関して何かしなければならない。ルーシーが彼女に一番近いから、きっと助けてくれるだろう。明日ルーシーと会って、何か対策を話し合うつもりだ。フィリアに何か異常なことが起こっている...。

次回、フィリアにまつわる“何か”がついに動き出す。

彼女が抱える秘密は、ただの偶然か――それとも運命に組み込まれた必然か。

アレクスの目の前で、全てを変えるかもしれない出来事が明らかになろうとしている。

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