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霊輝  作者: ガンミ
63/130

闇の中の手探り

フィリアとの時間の中で明かされるのは、彼女の抱える葛藤と過去の影。

しかし同時に、アレクス自身もまた感情の変化を感じ取り、周囲の不穏な気配に巻き込まれていく。

教会の謎、そしてコーポレーションの影……見えない糸に導かれるように、物語はさらに深まっていく。

『6月8日 / 10:18』


フィリアの話を聞きながら、何か変な感じがした。フィリアが兄のことを話す時の様子...まるで「執着」しているみたいだった。彼女は兄をライバルだと言っていたが、その感情は本当に兄が何でも自分より優秀だったからなのか?それとも悪意を知らずに育ったからなのか?俺が考えすぎているだけかもしれないが...でも一番奇妙だったのは、フィリアが霊輝をどうやって手に入れたか覚えていないと言ったことだ。それはとても変だった。でも今は、明日約束した通り彼女に会いに来て、できる限り助けてやろう。


「ありがとう、フィリア。お前のことを話してくれて」


「いえ、何でもありませんわ」


ルーシーが先に外へ出て行った。俺とフィリアが部屋から出る前に、彼女に声をかけた。


「フィリア、もう一つだけ言いたいことがある...」


「何でしょうか?」


「霊輝から解放されたいか?」


彼女の視線が俺に釘付けになった。その質問に反応しているようには見えなかった。そして少し視線を下に落として言った。


「はい...これから解放されたいですわ」


少し迷っているようだったが、誠実な答えのようだった。もう疑う余地はない。笑顔で言った。


「じゃあ俺に任せろ。お前を元の姿に戻してやる」


今度は彼女が反応した。驚いているか感動しているように見えた。彼女の表情を理解するのは俺には難しかった。


立ち去りながら、誰かに見られているような感覚があった。振り返って教会の方を見ると、入り口にたくさんの人がいた。ミサというものをやっていたのかもしれない。もう帰り始めているようだったが、教会の扉のところに神父らしき男が立っていて、俺を変な風に見つめていた。もちろんその視線を感じた瞬間、目を逸らしてそこから立ち去った。振り返ることもなく。


あれは何だったんだ?奇妙な不快感が全身を駆け抜けた。残りの日は家で勉強して過ごすことにした。


『6月9日 / 16:06』


ルーシーと一緒に学校から出て、あの教会へ向かって歩いていた。でも昨日のことを思い出す。ルーシーがあそこに住んでるってことを。どうしても聞いておかなきゃならないことがある。近づけば近づくほど、胸の中の不安が大きくなっていく。


「あの教会のことで聞きたいことがあるんだが」


「え?もちろんよ。でもどうして急にそんなことに興味を?」


「別に大したことじゃない。ただ...どんな人たちが住んでるのか知りたくて」


ルーシーは困惑したような顔をしている。まあ当然だろう。言葉を選んで慎重に話してるからな。


「それで、何を知りたいの?」


本当は核心に迫りたいが、あの場所の人間について調べるなら、他の人のことも聞いておくべきだ。


「友達とかいるのか?そこに」


「もちろんよ!ソフィアって言うシスターの友達がいるの。とても優しい人なの」


シスター...他にはいないようだな。


「その人だけが友達なのか?」


「...うん。他の人たちは...とても厳格で、ソフィアだけが話しやすいの」


あそこの環境はあまり良くないらしい。


「他に知ってる人は?」


「...ヴィクトール神父がいるわ。優しい人だけど、時々規則とかにとても厳しくなることがあるの」


ルーシーの話を聞く限り、悪い人間ではなさそうだが...もし昨日のあの男がその神父で、きっとそうだろうが、なぜ俺をあんな目で見たんだ?


何を考えればいいか分からないまま、入り口に着いた。だが入り口にいたシスターが俺を見て声をかけてきた。


「あなた、そこの若い男性、待ちなさい」


「え?何か問題でも?」


「中に入ることはできません」


「何だって!?」


ルーシーがイライラして割り込んできた。


「ちょっと待ってください!この人はあたしの友達なの。あたしと一緒に来たのよ」


「...あなたは私たちの一時的な避難所にいる避難民に過ぎません。友人や知らない人を連れてくる許可はありません」


「何よ!?」


ルーシーはかなり腹を立てていたが、その時誰かが俺たちの方に歩いてくる音が聞こえた。振り返ると、昨日見たあの神父だった。穏やかに歩いてきて、静かで優しい笑顔を浮かべながら俺とルーシーの前で立ち止まった。


神父の姿を見た。髪はやっと白髪が目立ち始めているところで、やや暗めの神父らしい服を着ている。首には首飾り...いや、ロザリオというやつか。


「シスターカレン、下がっていてください。彼らと話しましょう」


先ほどのシスターが静かに立ち去る。視線を神父に戻す。


「わたくしは神父ヴィクトールです。お会いできて光栄です」


「俺はアレクスだ」


ルーシーが会話に割り込んできて、苛立った様子で神父に言う。


「神父ヴィクトール、友達を連れてこられないってどういう意味ですか?」


「...申し訳ありませんルーシー、しかしわたくしにはどうすることもできないのです...」


「え?なぜですか?」


「フィリアの世話が必要だからです。しばらくの間、見知らぬ方の立ち入りはお断りしているのです」


「...分からない。それって変じゃないですか...フィリアの何がそんなに大切なんですか?」


「...申し訳ありませんが、そういうことになっているのです。貴方のお友達には帰っていただけませんかね?」


神父は振り返ると、それ以上何も言わずに立ち去り始める。説明は明らかに曖昧すぎた。ルーシーは俯いて怒っていた。彼女をなだめようと声をかける。


「大丈夫だよルーシー。きっと昨日フィリアが話してくれたことと関係してるんだろう」


「...彼らはフィリアがただの人間だってことを全然分かってない...今は普通じゃないかもしれないけど、それでも人間であることに変わりはないのに」


ルーシーはこういう不公正が嫌いなタイプらしい。でも今、どうすればいい?フィリアに会いに行くことができなければ、約束を破ることになる。


その時ルーシーがひらめいたような顔をした。


「そうだ!あっちの方に隠れてて。あなたが入れないなら、フィリアをここに連れてくるわ!」


フィリアを探しに走っていく。教会の入り口から離れ、教会周辺を囲む外壁にもたれかかった。


確かに神父ヴィクトールには何か怪しいところがあるかもしれないが、ただの普通の人間だ。先ほど霊輝を感じ取ったが、彼には何も異常はなかった。実際、周囲を感知してみても、この場所には本当に異常なものは何もない。もしこれが問題になったとしても、この教会の人間は皆普通の人間なのだから、それほど大きな問題にはならないだろう。いざとなればフィリアをここから連れ出すことだってできる。


そんな時、横から柔らかい声が聞こえた。


「こんにちは、アレクス」


突然の声に驚いて振り返ると、そこにいたのはフィリアだった。


「ここで何してる?中にいなかったし、それに...」


周りを見回したが、ルーシーの姿が見えない。


「ルーシーは?」


「ルーシー?彼女がどうかしましたか?」


「彼女はお前を探しに中に入って...」


「ふふ、貴方が困惑している姿を見るのは面白いですね。実は逃げ出したんです。あの人たちが何か奇妙なことを企んでいるのが分かっていましたから…それに、貴方がいらっしゃるのも。だから、逃げたんです」


フィリアは俺の前で恥ずかしそうにしていて、今何を言えばいいのか分からない様子だった。でも、この機会を使って色々知りたいことがあった。


「突然に聞こえるかもしれないが...この教会から逃げたいと思わないか?」


彼女の目が一瞬輝いた。まるでその言葉に希望を見つけたかのように。でもすぐに俺から視線を逸らした。


「お申し出は有り難いのですが、ここに留まらなければなりません」


「なぜだ?」


「...実際のところ分からないんです。許しを得たいからかもしれませんし、習慣なのかもしれません」


「でも、連中はお前の力について知ってるんだろ?何か変なことが起きるかもしれない」


彼女は自分の信念と在り方に対してとても頑固だった。でも俺は分かっていた。彼女の優しさにも関わらず、自分自身には優しくない唯一の人間だということを。何か楽しい瞬間を与えてやらなければならない。


「じゃあ、これはどうだ?」


フィリアは俺をじっと見つめた。拳を握りしめて言った。


「明日逃げ出して、一緒にデートしないか?」


彼女はその言葉に衝撃を受けた様子だった。


「え...本当にデートなんて?貴方と?」


「ああ、もう一度人生を楽しむってことを思い出してほしいんだ。ずっと全てから離れていて、普通の生活がどんなものか忘れちまってるだろ」


デートの誘いが適切なタイミングかどうか分からなかったが、少しでも楽しい時間を過ごせるようにしてやりたかった。


『6月10日 / 15:36』


学校が終わった後、フィリアに会おうと歩いていた。

昨日ルーシーに今日の計画を話したら、彼女が他の連中をわざと引きつけて、俺たちが会えるようにしてくれると言った。

少なくとも、そういう計画だった——

だが、途中で予想外のことが起きた。フィリアが、もうそこで待っていたんだ。


どうやってこんなに簡単に抜け出せるんだ?と思わずにはいられなかった。近づいて聞いてみた。


「どうしてもうここにいるんだ?どうやって抜け出してる?」


「えっと...力を使ってそうしているんです」


少し考えた。確かにまだ彼女がどんな霊輝を持っているのか分からない。何か変なことが起きても気づけないかもしれない。

まあ、とにかく手を取って、どこかで楽しませてやろうと思った。


本当に目的もなく歩いていた。ゲーセンに連れて行こうかと思ったが、今はそこがベストな場所じゃない気がする。じゃあどこがいいんだ?考えれば考えるほど、目的もなく歩き続けて、彼女と会話もできずにいた。


気がつくと変な場所にいた。周りには大人向けの商品を売る店やホテルがある。最初から来るべきじゃなかった場所みたいだ。


「悪い、フィリア。どこを歩いてたか気をつけてなかった」


でもその時、頭に水滴が落ちてきて、数秒で雨が激しく降り始めた。選択肢もなく、そのホテルに入った。


今度はどうすればいいんだ?突然雨が降って、今ホテルの受付エリアにいる。フィリアを見ると少し濡れていた。病気にはならないとはいえ、このままにしておくのは俺の流儀じゃない。貯金を少し使って、このホテルの部屋を取ることにした。


「そんなに私のことを気にかけていただかなくても...」


「気にするな、問題ない」


「それでしたら、お部屋代を払っていただいた分、いつかお返しさせてください」


「本当に大丈夫だから」


もう支払いを済ませて、鍵を受け取った。でも気がついた...一部屋しか頼んでなかった。つまり二人とも同じ部屋に行くことになる。馬鹿な間違いだったが、もう本当にどうでもよかった。


その部屋に直接向かった。急いでタオルを探してフィリアに渡して乾かしてもらおうとしたが、突然強い雷鳴が響いて、フィリアが恐怖で叫んだ。


「ひゃー!」


突然電気も消えた。ホテル全体が停電してしまったのだ。激しい雨音と雷の音だけが響いている。


フィリアはあまりにも怖がって、ベッドまであと数歩というところで、その場にへたり込んでしまった。震えながら、恐怖で両手で耳を塞いでいる。


雷にここまで怖がる人がいるなんて信じられなかった。

彼女の背中に背を向けるように座り込み、気づけば、互いの背中がかすかに触れ合っていた。

…彼女の震えが、その小さな接触から伝わってくる。


「大丈夫だ、フィリア。俺がここにいる」


暗闇で彼女の顔は見えない。部屋の静寂だけが周りを包んでいる。

俺は背中越しに彼女の存在を感じながら、ふと振り返ろうとした——しかし、闇が邪魔をして、その表情すら捉えられなかった。

…代わりに、彼女の震えが背中から伝わってくる。まるで、助けを求める小さな信号のようだ。


「なんでそんなに雷を怖がってるんだ?」


何も言わなかった。しばらく暗がりにいたせいか、目がだんだんと慣れてきた。部屋の闇は相変わらず深かったが、ようやく輪郭がぼんやりと見えるほどに。そんな時、フィリアが口を開いた。


「怖いのは雷だけではありませんの...暗闇もなんです」


振り返って彼女を見ようとしたが、できなかった。雨で濡れているかもしれないし、見てはいけないものを見たくない。フィリアは続けた。


「小さい頃、とても強い雨が降った日があって、家の電気が止まってしまったことがありましたの...でもお兄様が私を励ましてくれて、怖がらなくていいと言ってくれました」


彼女の背中が再び俺の背中に触れ、続けた。


「今思えば、お兄様は貴方と同じように黙って私の話に耳を傾けてくれていましたの...兄様はいつも私を支えてくれましたけど、それを自分の弱さだと思っていました。兄様より劣っているという事実に耐えられませんでした。同じ兄妹なのに、なぜ劣っているのでしょうか?」


自分を責めているようだった。兄を超えられないことを抑圧しているみたいだが、一体何がそんな状況を引き起こしたんだろう?


「おい、フィリア、俺の質問が唐突に聞こえるかもしれないが...何が原因でお前の兄貴をライバルとして見るようになったんだ?」


「...多分、全てです...」


「全て?それってどういう意味だ?」


「両親はいつもお兄様の方に注目していました。お兄様は何でもできましたから...両親が私とお兄様を比べ始めると、お兄様のように物事ができない役立たずなんだと感じさせられました...」


それは彼女の思い込みだったのか、それとも両親が本当に彼女に対して愛情のかけらもなかったのか。信仰心のある人たちのはずなのに、彼女への扱いを見る限り、本当に最悪な親賞を取れそうだ。


「安心しろ、フィリア。俺は絶対にそんなことは言わない。お前はお前でしかないんだ。何ができるか、できないかは、お前だけの問題じゃない。周りの人たちの助けも借りられるんだからな」


彼女は静寂に包まれ、しばらく何も言わなかった。


そして話し始めた。


「本当に私を置いて行かないでくださいますか?」


「ああ、ここにいる」


「...でも分からないんです。どうして貴方はこんなに私のためにしてくださるんですか?」


「そうだな...霊輝から解放してやりたいだけだ」


「...でも理解できません。どんな方法で私を霊輝から解放してくださるのか教えてくださっていませんし...」


「それは...簡単に言うなら、お前にとって心地よい瞬間を作ることだ。お前が持っている霊輝は本物の霊輝じゃない。人工的なもので、お前を深く傷つけた何かの強い感情によって融合してしまったんだ」


フィリアの背中の冷たさが俺の背中に伝わってくる。彼女のドレスが濡れているからではない。それが今の彼女の状態なのだ。他の子たちと同じように、以前のように感じられないものがある。その感覚に少しの罪悪感が混じった。霊輝から解放することの悪い部分を言えないことに対して。


「アレクス...少し変な質問をしてもよろしいですか?」


「ああ、構わない。変な質問でも何でも」


「...貴方はどのような女性がお好みですか?」


「...!?」


頭が真っ白になった。そんな質問にどう答えればいいんだ?何が一番魅力的なのか詳しく考えたことなんてなかった。でも言葉で表すとしたら、思いつくままに言うしかない。


「そうだな...多分優しいタイプの女性かな」


「他には?」


「...よく分からないが、決断力があって優しくて愛情深くて、ちょっと子供っぽくて率直で、ユーモアのセンスがある女性が好きかもしれない...」


本当に何を言っているか分からなかった。ただ頭に浮かんだことを口にしただけだ。こんなことを彼女に話すなんて恥ずかしくなってきた。彼女が何か言ってくれることを期待したが、沈黙が続いた。


部屋に明かりが戻った。フィリアが立ち上がると、俺も立ち上がる。彼女は微笑んで言った。


「私たちのデートがこんな風に台無しになってしまって、残念です」


「いや、そんなことない。まだここでできることがあるだろ」


「...何ができるでしょうか?」


フィリアは振り返って俺に背を向けた。何か考え事に没頭しているようだった。何を考えているのかわからないが、俺にはアイデアがあった。


「ゲームをしよう!」


「ゲーム?」


「スマホにいくつかゲームが入ってるんだ。これで楽しめるぞ」


フィリアは困惑しているようだった──いや、苛立ちに近いのか?判別がつかなかった。彼女の表情は霞んだガラスのようで、こちらの視界を歪めている気がした。腕を組んで言った。


「あの...私、スマホを持っていませんの。どうやって一緒にプレイするおつもりですか?」


「それは驚きだな。スマホを持ってないって言う人に初めて会ったよ」


「技術に疎くて申し訳ございませ〜ん」


今度は明らかに苛立っているようだった。不安げな笑みを浮かべつつも、眉をひそめながら、俺はスマホの画面を見せてゲームを紹介した。すぐに彼女の興味を引いたようだった。


その間ずっと、フィリアは俺のスマホでロールプレイングゲームをプレイしていた。探索メカニクスがある世界で。本当にスマホに触ったことがなかったんだな。


彼女の幸せそうな表情と興奮した様子を見ていると、とても隔離された生活を送ってきたんだということがわかった。できることがたくさんあるのに...


もう遅くなっていて、家に帰らなければならない時間だった。フィリアに別れを告げる。今回は明日会いに来ると約束できないが、できるだけ早く会いに来ると約束した。でも、それを言うと彼女は言った。


「ご心配なく。貴方が会いに来られなくても、私が抜け出して会いに行けますから」


確かに、彼女は教会から抜け出すのに信じられない能力を発揮してきた。


明日フィリアに会えない理由は、エミリーからメッセージが来ていて、ウィリアムがコーポレーションについての情報を集め終えたと言っていたからだ。明日がもっと詳しく知る時だった。だから明日はエミリーと待ち合わせてウィリアムに会いに行く予定だ。


そのコーポレーションの情報を知ることで、将来もし事態が複雑になった場合に立ち向かえることを期待していた。あの場所にいるのが誰であろうと、俺の中の何かがそのコーポレーションは危険だと告げていた。それについて知ることが、立ち向かうための第一歩に過ぎないだろう。やることがたくさんあって、みんなを守りたいなら、すべてを完璧にやり遂げなければならない...。

次回、さらなる真実が明らかになり、問題と謎が一層積み重なっていく。

教会とコーポレーション、その裏に潜むものとは一体何なのか。

アレクスは何を知り、どう立ち向かうのか――。

そして彼の前には、いくつもの出来事が待ち受けている。

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