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霊輝  作者: ガンミ
61/130

純白の異邦人

体育祭を通して仲間との絆を強め、ルーシーとの距離も大きく縮まったアレクス。

だが、喜びの裏で不安や疑念が胸に渦巻いていく。

そして物語はルーシーの視点へと移り、教会での日常の中で「純白の異邦人」と出会うことに――。

偶然か、それとも運命か。この出会いが新たな幕開けを告げる。

『6月6日 / 10:00』


リレー競走の準備ができた。ルーシーが俺の横を通り過ぎながら、背中を素早く叩いてくれる。離れていく彼女は自信に満ちた笑顔を浮かべていた。何も彼女を動揺させるものはないようだった。ルーシーのその同じ自信が俺にも伝わってくる。全力で走ってやるぞ。


スタートラインに位置につく。少し周りを見回すと、多くの生徒たちが友達を応援している様子が見える。この競技に熱狂的に叫んでいるのが聞こえる。今まで感じたことのない感覚が内側から込み上げてくる。この感覚は何だ?なぜこんな風に感じるんだ?完全には分からないが、もしこの感覚を表現するなら...興奮だ。走ることにすごく興奮している。


すべての準備が整った。合図の音が響く。足が勝手に反応した。一歩一歩全力を出したい。足が地面に触れる感覚一つ一つ、この競走で流す汗の一滴一滴。初めて、他のみんなと同じ場所に属しているという感情を見つめている気がした。周りの音、全力を出す足、前方に固定された視線でバトンを渡すために。すべてが夢のようだった。


周りを見ることなんてどうでもよかった。ただ走った。追い抜かれようが最下位だろうが関係なかった。バトンを渡し、次の仲間が走り始める。その仲間はカズミだった。


「お疲れ様!」


カズミが素早く声をかけてくれる。

疲れながらカズミが走り去るのを見つめる。

競走エリアから離れ、残りの競走を見守る。

カズミがバトンを渡すのが見える。今度は仲間に。それは岡田だった。話したことはないが、速く走っていた。

彼はルーシーにバトンを渡す、最後の走者だ。


岡田がルーシーにバトンを渡した瞬間、ルーシーが驚くべき速度で走り始める。あまりにも印象的で、観客の多くが興奮して彼女を見ている。生徒たちの会話すら聞こえてくる。


「あの子の走り方見て!」

「もう勝負は決まったわね」

「あの速さって本当に人間?」


ルーシーが速いのは よく知っていたが、彼女が全く手を抜かなかったことにもっと驚いた。勝つために全力を出し切った。そして、俺のクラスがリレー競走で勝利した。


ルーシーが俺に近づいてくるのが見えた。少し疲れているようだったが、笑顔を絶やさなかった。俺はただ一つのことしか言えなかった。


「おめでとう、勝ったな」


「何言ってるの?あなたも参加したじゃない。あたし達みんなでやったのよ」


また同じ気持ちだった。こうやって時間を過ごすのは初めて本当に学校生活を送っているって感じがした。


先生が予選の得点について発表した。俺のクラスは今のところ三年生全体でトップに立っているらしい。これから騎馬戦に参加することになるが、それはまだ先の話だ。まだ時間はある。ルーシーと一緒に過ごせるかもしれない。


でも、その時遠くの学校の屋上に誰かがいるのに気づいた。一人じゃない、二人の人影がそこに立っていた。


少し歩いてみた。ルーシーが隣にいたので俺についてきたが、何も説明しなかった。ただ校舎に近づいていった。十分近づいてみると、その二人の人影がアンジュとセレステだということが分かった。


何をしているんだ?何を見張っているんだ?


そんな質問はできなかった。二人とも遠くの何かに視線を固定していたからだ。


ルーシーも学校の屋上を見上げて、困惑した表情で俺に聞いた。


「上で何が起こってるの?何かあるのかな?」


「いや、ただアンジュとセレステがいるだけだ」


「セレステって?誰なの?」


そういえば、エミリー以外にはセレステについて話していなかったことに気づいた。この機会を利用して、彼女がどう現れたのか、アンジュの仲間だということを説明した。


セレステについて話し終えると、ルーシーは考え込んでいた。


再び上を見たが、今度は二人ともいなくなっていた。いつ去ったのか気づかなかった。


他にすることもないので、ルーシーと一緒にみんながいるところに戻ることにした。


何かが起こっているようだった。彼女たちがあんな風に現れるのは偶然じゃない。あの二人は何かをしているんだ。


ルーシーが俺を心配して手を取った。この行動で俺ははっと我に返り、今は問題について考えるのをやめて、俺の手を握っているルーシーの手に意識が集中した。


「心配するのはやめて。体育祭を楽しみましょうよね」


何も言わずに頷いた。彼女の言う通りだった。今はそんな問題について心配するのはやめるべきだ。みんなと一緒に楽しむべきなんだ。


『13:30』


騎馬戦の準備ができていた。カケルも竜児も榊も同じように準備万端だった。


その時、カケルが俺に近づいてきて、腕を俺の首にかけながら、にやりと笑って言った。


「おい、さっきルーシーとお前がイチャイチャしてるの見たぜ」


心臓が跳ね上がった。誰かに見られていたなんて...恥ずかしさで顔が熱くなる。でもカケルは止まらない。


「そんなに仲良しなら、もう付き合っちゃえばいいじゃんっす」


「もうやめろよ!困らせてるだろうが」


竜児が割って込んできた。カケルは肩をすくめて離れていく。どう反応していいか分からなかった。カケルを悪い奴だとは思わないし、悪意があるようにも見えない。


榊はその会話を黙って見ていた。観察するというより、何か考えているようだった。突然口を開く。


「そうだ!アレクス、ルーシーみたいに勝ってみたらどうだ」


「勝つ?他のやつらを倒すってことか」


「他に何があるってんだよ。他のクラスを倒せばいいだけだろ」


榊は簡単そうに言うが、これは他の参加者からハチマキを奪うことだ。クラス対抗戦だから、4つのクラスと戦わなければならない。榊は俺が勝てると確信しているようだった。カケルも自信満々に笑っている。竜児は特に反応しなかったが、親指を立てて「大丈夫」というサインを送ってくれた。


覚悟を決めて全力で挑んだ。ズルはしたくなかった。霊輝の知覚能力を使って皆の位置を把握し、不意打ちを避けることもできたが、そんなことはしたくない。自分の力だけで勝ちたかった。


不可能に思えたが、諦めずに続けた結果、騎馬戦で勝利を掴むことができた。


終わった瞬間、クラスメイトたちが祝福しに来てくれた。ルーシー、まい、カズミ、ヤヨイ、そしてカケル、竜児、榊も。こんなに大きな友達のグループに属していると感じたことは今まで一度もなかった。走った時と同じように、喜びと興奮が全身を駆け巡る。


本当にこんなに人生が変わったのか?この瞬間は間違いなく一生忘れられない思い出になる、そう思わずにいられなかった。


しばらくして体育祭が終わった。クラスが優勝して、みんなが帰り始めた。すべてが終わってしまうという感情が突然俺に襲いかかった。


みんなが去っていくのを見ながら、学校の制服に着替えて出口でルーシーを待つことにした。二人でデートする約束をしていたからな。


一日中、アンジュやセレステを見かけなかった。それが良い兆候なのか悪い兆候なのかわからないが、それ以上考える前にルーシーがデートの準備を整えて現れた。


まずファストフード店に行き、その後ゲーセンに向かった。一緒に楽しい時間を過ごした。最後に、ルーシーに記念になるものをあげたかった。自分の力で必ず手に入れるって決めて、クレーンゲームのぬいぐるみに挑戦した。


クレーンゲームの景品は軍服姿の猫の擬人化キャラのぬいぐるみだった。ルーシーのキーホルダーと同じシリーズだと気づいたから、『絶対取ってやる!』と10回も挑戦して、ようやくゲットした。その瞬間、俺は思った――戦いも異能もない、ただの『普通』の生活を、掴んだんだと。


別れの時間が来た時、ルーシーは緊張せずに微笑んで言った。


「あたし、アレクスのことが好きなの。今度は恥ずかしがらずにちゃんと言いたかったの...」


今度の彼女の視線はしっかりしていて、迷いがなかった。自分の気持ちをはっきりと示したいのだと。


そこで俺は疑問に思った。最近見てきたすべてのこと、本当にこの愛情に値するのか?本当にこんな生活を送る価値があるのか?それを持つ資格がないような気がして、期待も願望もしなかった...いや、もしかして心の奥底では望んでいたのかもしれないが、その部分を見ようとしなかった。


ルーシーが歩き始めた。


「それじゃあ、またね」


俺はただ彼女が去っていくのを見ていた。今度の彼女の歩調は確実だった。本当に自分の気持ちがわかっているのだ...でも、もし俺が助けたすべての女の子たちが感じていることが、単に俺が助けたことによる偏見に過ぎなかったらどうする?


なぜこんなに疑問ばかり抱くのかもわからない。それ以上考えずに、ただ家に帰った。


『6月7日 / 8:00 / ルーシー』


土曜日の朝早く、目を覚ましたとき、昨日のアレクスとのデートのことを思い出していた。その思い出だけで、嬉しくて仕方がなくて、にっこりと笑みを浮かべてしまう。彼がくれたぬいぐるみを見つめて、嬉しさのあまりぶんぶんと振り回してしまった。こんなに気分がいいなんて、どうしようもない。ベッドの上に座って、両腕を伸ばしてストレッチをした。


今日は、住んでいるこの一時保護施設でお手伝いをしなければならない。本当の家がないから、この教会が家のない人たちのために場所を提供してくれているのは、本当にありがたいことよ。ここに住むようになってから、いつもヴィクトール・サングレア神父やシスターの皆さんのお手伝いをしている。掃除をしたり、用事を頼まれたりして、それがあたしの生活なの。


シスターの中でも、特に親しくなった人がいる。それがシスターソフィアよ。


ベッドから起き上がって、急いで着替えをして、ソフィアを探しに行った。何かお手伝いできることがないかしら。


中庭に着くと、そこで他のシスターたちと話をしているソフィアを見つけた。近づいて声をかける。


「おはようございます、ソフィア!」


「おはよう、ルーシー。もうお手伝いの準備はできているのね?」


「いつでも準備万端よ!」


二人で共同食堂に向かい、朝食の準備を手伝うことになった。卵とご飯を作ったけれど、やっぱり一番得意なのは甘いパンを作ることなの。でも今はその時間がないから、仕方ないわね。


やってくる人たちに食事を配っていく。そんなにたくさんの人がいるわけじゃない。あたしを含めずに、大体6人くらいがこの避難所にいるの。みんなそれぞれ違う事情で家を失ってここにいる。でも、家を持たない理由は、他の人たちとは少し違うのよね。


ソフィアが近づいてきて言った。


「ヴィクトール神父様がもうすぐ司祭館からお出になるの。聖具室の準備をしておいてくれるかしら?」


急いで走って、ヴィクトール神父のために聖具室の準備をしに行った。聖具室に着くと、いくつかの物を取り出した。でも、習慣で取り出しているだけで、これらの儀式に使われる物が何なのか、実はよく分からない。


ここが教会だっていうのに、神様の存在とかそういうことについて、本当にどう思えばいいのか分からないの。かといって、信じていないって言い切れるわけでもない。ただ、よく分からないだけ。100年も生きるっていう異常な体験をした後では、「神様」なんて神聖だとされる言葉について考えることが、余計に混乱してしまうのよ。


ヴィクトール神父が中央身廊に入ってきた。座席の間を急いで歩いて、祭壇の前で止まったの。何かを急いで書いているみたいだった。それからあたしの方を見て言ったわ。


「おや!ルーシー、そこにいたのに気づかなかった。すまない」


「いえいえ、大丈夫ですよ。でもどうしてそんなに急いでいるんですか?」


「予期しないことが起きたのです。街の東にある別の教会で、わたくしの存在が一刻も早く必要になりましてね」


ヴィクトール神父の心配の度合いがよく分からなかったの。ただ、とても切羽詰まって見えるということだけは確かだった。


「何かお手伝いできることはありますか?」


「いえ、大丈夫でしょう。今日受けた連絡によると、新しい仲間が加わるかもしれませんからね」


新しい仲間?その言葉に眉を上げた。ヴィクトール神父は書いていた紙をあたしに渡して言ったわ。


「お願いします、ルーシー。これをシスター長に渡してください。彼女が何をすべきか分かるでしょうから」


そう言うと、走らずに、でも急いで行ってしまったの。紙を見たけれど読まなかった。よく考えてみると、シスター長が誰なのか分からなかったのよね。


だからヴィクトール神父があたしに残していった紙を、ソフィアに届けてもらおうと彼女を探しに行ったの。中庭で植物に水をやっているところを見つけてお願いしたら、ソフィアはあたしの不注意にちょっと憤慨したみたい。


「ルーシー、シスター長が誰か知らないなんてどういうことなの?」


「ごめんなさい、言い訳はありません」


ソフィアは諦めたようにため息をついて、辺りを見回してから教えてくれたわ。


「シスター長はヴィヴィアナよ。知ってるでしょ?」


考えて、彼女のことを思い出した。もう一度紙を手に取って、届けに行くことにしたの。


「ありがとう、ソフィア!誰か分かったわ」


彼女を探しながら、ヴィヴィアナはとても厳格で規律正しい人だということを思い出したの。何か言われなければいいけれど。彼女はシスターたちの中で上の立場にいるから、きっとオフィスにいるはずよ。そこを探してみたら、運良くいたわ。指示通りに紙を渡したの。


その後、他の仕事を続けた。掃き掃除、モップがけ、洗濯物の手入れなどをしたわ。


その日はそんな風に過ごしてた。時々、アレクスは今何をしているのかなって考えちゃう。


まだやることがたくさんあるのを覚えてる。あたしみたいに霊輝に捕らわれた女の子たちを探さなくちゃいけないし。


一週間ずっと何も言わなかったけど、アレクスが助けようとしてくれてるのは分かってる。でも、どうしても不安になっちゃうの。


アレクスがその女の子たちの誰かを好きになって、もう私のこと忘れちゃうんじゃないかって… そんなの怖いの。だって本当にアレクスのこと愛してるんだもん。アナやひかり、それに最近のメリッサまで、みんなライバルに思えちゃう。


あの時霊輝を探知する訓練をしてから、もう実践してないけど、やり方を忘れたわけじゃない。考えれば考えるほど、アレクスがみんなを助けるためにどれだけのことを経験しなくちゃいけないのか驚いちゃう。何か自分でできることをして、アレクスの負担を軽くしてあげたい。でも、何ができるかな?霊輝を探知することしかできないの。


目を閉じて周りに集中してみた。でも何も変なものは感じられない。まあ、普通よね。この教会には変なものなんてないもの。


朝からずっとヴィクトール神父の姿が見えない。もう夕方になりそうなのに、一向に現れる気配がない。ソフィアも少し心配そうで、あたしのそばに来て言った。


「ヴィクトール神父様はどうされたのでしょうね?一日中外におられるなんて」


その時、シスター長のヴィヴィアナがやって来て、ソフィアに話しかけた。


「シスターソフィア、ちょっと来ていただけませんか?」


二人が話してるのを見てるだけで、何を話し合ってるのか聞こえなかった。そして説明もなく、二人とも教会の奥の方へ向かっていった。どうやら二人だけじゃなくて、シスターたち全員が教会の方へ向かってる。きっと中央身廊で集まるつもりなのね。


気になって近づいて何が起きてるのか見て聞こうと決めた。


物の陰に隠れて、何が起こってるのか聞こうとしてた。シスターたち全員が中央身廊に集まってて、何人かは話し合ってるみたいだけど、よく聞き取れない。そんな時、正面の扉が開いて...ヴィクトール神父が入ってきたの!


今日一日、全然姿を見せてなかったから、本当にびっくりした。数歩歩くと、神父の後ろに、誰かがこっそりついてるのをかすかに見た。姿はほとんど隠れてたから、誰だか分からなかった…。それから神父が突然声を張り上げて、シスターたち全員に話し始めたの。


「ご注目ください、シスターの皆さん。重要な発表がございます」


数秒の沈黙の後、続けて話されたわ。


「ご存知の通り、隣人に仕える使命は、わたくしたちの多くの務めの一つに過ぎませんですかな...」


なぜか、急に緊張してきちゃった。何かおかしい...雰囲気が変なのを感じ取れるの。でも、もっと考える前に、神父の声がまた聞こえてきた。


「皆さんを集めたのは、本日、とても大切な方をこの教会でお守りするという重大な任務を頂いたからでございます...」


神父が横に移動して、後ろに隠れてた人を見せようとしたの。よく見ようと身を乗り出して...その人を見た瞬間...


女の子だった...でも...普通の女の子じゃない気がする。その子、霊輝を持ってる...間違いないわ。感じ取れるもの。他の誰とも違う、何か特別で変わった感じ。信じられない...アレクスが救わなきゃいけない女の子の一人を目撃してるのよね...


こんな偶然って...信じられない。詳しく見てみると、長い金髪に白いドレス。視線には恥ずかしそうな感じがあって、「純粋」って表現がぴったりな子ね。


もっとよく見ようとして...結局転んじゃった。音を立てちゃって、みんながこっちを向いたの。恥ずかしくて、みんなを見回して...


「えへへ...ごめんなさい...」

次回、ルーシーが出会ったその少女――彼女は本当に味方なのか、それとも……?

一方、アレクスが知ることになるのは、想像を超えた新たな現実。

運命に導かれるように、彼の日常は再び動き出す。

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