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霊輝  作者: ガンミ
53/130

握られた手の行方

アレクスは迫り来る危険を前に、仲間たちと共に行動を開始する。

自らの手で守ると決意し、霊輝の力を鍛えながら策を練るが――その先で待ち受けていたのは、想像を超える事態だった。

すべては彼の覚悟と行動に委ねられる。

『5月23日 / 17:03』


手に霊輝を集中させ、あの狂った奴を攻撃する準備を整えていた。だが何かする前に、急ぎ足の音が聞こえてきて俺の側に到着した。ダリオ、アナ、そして他の皆が助けに来てくれたんだ。


ダリオが最初に口を開いた。


「お前は誰だ?それを放せ!」


続いてアナが俺の少し前に出て言った。


「これ以上誰かに触れることは許しませんわ。身のためを思うなら離れることをお勧めしますわ」


その男はただ皆を見つめているだけで、表情は全く変わらなかった。ため息をついて、手に持っていた折りたたみナイフを下ろし、しまい込んだ。そして後ずさりしながら言った。


「お前らクズどもに俺を止めることはできない。あの女が何者かは完璧に分かっている。俺だけのものにしてやる...聞いたか女、お前を迎えに来るからな!」


男は走って逃げていった。アナが追いかけようとしたが、俺が止めた。今一番大切なのはレイヴンのことだった。彼女に近づくと、彼女はこの出来事にただ動揺し混乱しているようだった。


皆で先ほどの漫画喫茶に戻って、この件について話すことにした。


漫画喫茶で、あの男がどう現れて突然脅してきたかを説明した。


「こうやってあの男が現れたんだ。この件について何か言えることはあるか?奴を知ってるのか?」


誰も何も言わなかったが、ダリオのような何人かの視線が拓海に向けられた。アナも彼を見ていた。誰も何も言わないので、アナが話すことにした。


「実は、あたくしたちがあなたたちを追いかけていた時、拓海さんがあの男の存在に気づいたのですわ。どうやら拓海さんは何かご存知のようですわ」


拓海を見て答えを待った。レイヴンも振り返って彼を見たが、拓海は何も言わなかった。


するとレイヴンが口を開いた。


「さくや、話すのじゃ!我が命令するぞ!あの狂人を知っておるのか?奴は何者で、なぜ我を攻撃しようとしたのじゃ?」


拓海はレイヴンを見て、それから他の皆を見た。背筋を伸ばして、レイヴンが聞いているにも関わらず、驚くべきことに中二病モードではなく真剣に話し始めた。


「実は...あいつのことを知ってるんだ。知り合いというか、父の教え子だった」


一同が驚きの声を上げる中、俺も思わず身を乗り出した。みんなの声が混じり合って騒がしくなったが、拓海が手を上げて静かにするよう求めた。


「聞いてくれ...数回会っただけで、話したことはない。遠くから見ていただけだ。確か理学部の学生だったはずだが、なぜレイヴンのことを知ってるのか、なぜあんな態度を取るのかは分からない。もしかしたら元々ああいう性格だったのかもしれない」


拓海は拳を握り締め、視線を下に落とした。


「もっと力になれなくて悪い。だが、あいつを見た瞬間、前に見たことがある奴だって分かって動揺してしまった」


この男についての手がかりは曖昧だった。理学部の学生で、拓海の父親が教授をしているらしい。だが拓海は彼と会話を交わしたことがなく、父親の知り合いとして認識していただけ。あの男の動機は謎のままだ。


すべてが異常すぎる。


突然レイヴンが立ち上がり、両手でテーブルを叩いた。


「おい貴様!なぜそのような弱気な物言いをするのじゃ!?貴様はさくやであろう!?我の前で弱さを見せるなど...」


レイヴンが言い終える前に、拓海が感情を爆発させた。


「黙れ!こんな馬鹿げたことにはもううんざりだ!あいつが正体不明の意図を持ってお前を狙ってるのに、まだそのお姫様ごっこを続けるつもりか!いい加減現実を見ろ!!」


レイヴンは怯えた表情で拓海を見つめ、唇を震わせながら何か言おうとしていた。深い悲しみが彼女の顔に浮かんだ。そして次の瞬間、走って逃げてしまった。


立ち上がって追いかけようとしたが、アナが手で制止の合図を送った。


「あたくしが行くわ」


その場に残り、この状況がこれまで積み重ねてきた進歩をすべて台無しにしてしまったことを考えていた。疑問は山積みだが、一つだけ明確なことがある。あの男が今最大の問題だ。この厄介事を片付ける迅速な計画を考えなければならない。


みんなと話し合った後、もう遅くなってきていたから自分の家の住所を教えて、明日みんなに来てもらうことにした。そこで話し合って、あいつと対峙するための計画を立てるんだ。あの場所に通い続けるのは危険すぎる。あの男はレイヴンを監視している。だからレイヴンにもあの辺りには近づかないようにしてもらわないといけない。


そんなことを考えながら、みんなそれぞれ家に帰っていった。俺はレイヴンとアナが戻ってくるのを待っていた。数分後、二人とも戻ってきた。


「レイヴン、計画を立てるまでの間、この辺りには来ない方がいいと思う」


レイヴンは頷くだけで何も言わなかった。本当に問題の深刻さを理解してくれたのか、そして俺の言うことを聞いてくれるのか疑問だった。それでも、そんな不安を抱えながら家に帰った。


あまりの疲労で、ベッドに倒れ込んだ瞬間に眠りに落ちてしまった。


『5月24日 / 7:10』


土曜日の朝早く、昨日の出来事をアンジュに話した。完全には理解していないようだったが、危険だということははっきりと分かったらしい。


「それで今日はみんなと話し合うのね...それなら他の子たちも呼んだらどうかしら?彼女たちも助けてくれるでしょうよ」


「でも危険なんだ。あいつは本当に他人を傷つけることができる。誰も危険にさらしたくない」


「でもオマエが一人で危険に飛び込もうとするなんて...本当に時々頭が空っぽなのねえ」


アンジュが部屋の窓から外を見て、驚いた様子を見せた。


「ねえアレクス、誰かがオマエより先に動いたみたいよ」


「どういう意味だ?」


その直後、俺のスマホが振動した。アナからのメッセージで

『アレクス、出てきてもらえる?外にいるの』と書かれていた。


驚きながら外に出る準備をして、ドアを開けると、アナだけでなくルーシーとひかりもそこにいた。


「みんな、ここで何してるんだ!?」


アナが反抗的な少女たちのグループの代表のように一歩前に出た。


「ごめんなさい、アレクス。でも昨日のことの後、あたくし手をこまねいていることはできなかったの。それで彼女たちに起こったことを話したのよ。みんな助けたいと思っているわ」


額に手を当てて考え込んだ。彼女たちを巻き込みたくはなかったが、選択肢がなかった。彼女たちは助けたがっているし、黙って見ているつもりはないのだ。諦めて彼女たちの助けを受け入れた。


アナが集合場所を自分の家に変更することを提案した。俺はダリオたちを待って知らせることにした。アナたちが自分の家に向かって歩き始めたが、去る前にアナがもう一つ付け加えた。


「あ、そうそう、忘れる前に言っておくけれど、エミリーにもこのことを知らせたの。でも彼女は後で来るわ」


俺はもう驚かなかった。エミリーまで巻き込んだのか。でも彼女の助けは不可欠だということは認めざるを得なかった。


アンジュが俺の隣に現れて言った。


「さてと、オマエの計画がどんなものか想像がついてきたわよ。いつもとんでもない計画を立てるものねえ」


少し時間が経ってから、ダリオたちと待ち合わせ、アナの家へ向かった。リビングに座り込むと、俺はあの男に対する計画を練り始めた。情報収集が必要だった。奴の動きを監視し、直接対峙するつもりだ。だが脅しを効かせるためには、まずあいつの弱点を調べ上げる必要がある。


ルーシー、アナ、ひかりに頼んだ。ネットで調べるか、あいつが通っているはずの理学部で情報を集めてくれと。三人はすぐに動き始めた。


一方で俺は、ダリオ、ニーナ、拓海の協力を得て、あの男を探すつもりだった。あの辺りを徹底的に捜索する予定だ。本当は拓海の父親に話を通したかったが、拓海が言うには「父の忙しいスケジュールじゃ無理だよ」とのことだった。


みんなそれぞれやることがあった。エミリー以外は。エミリーは何もすることがなくて機嫌を悪くしていたが、実は今まで言わなかっただけで、エミリーこそがこの状況で一番有利な立場にいる。


「エミリー、お前の叔父さんに話してくれ。調査を頼みたい。それと...霊輝の速成訓練を受けたいんだ」


あの時、エミリーの叔父が使ったあの不思議な霊輝の障壁――外部からのダメージを防ぐバリアを思い出した。あの技術を身につければ、あの男と恐れることなく戦える。これが俺の計画だ。みんなの協力があれば、きっとうまくいく。


ただ一つ気になることがあった。レイヴンだ。あいつは黙って見ているタイプじゃない。何か危険なことをしでかすんじゃないかと心配だった。


俺とエミリーはウィリアムに電話をかけた。あの技術を教えてもらうためだ。驚くほど早く到着した。教えることに興奮しているようだったが、同時に理由も知りたがっていた。


「おい、アレクスくん、なんでうちにその技術を教えてほしいんだ?何を企んでるんだい?」


「えーっと...実は、問題が起きてるんだ...」


話すべきかどうか迷ったが、結局全部打ち明けることにした。ウィリアムは注意深く話を聞いていたが、あの男のことや俺の計画について完全に納得しているようには見えなかった。


「アレクスくん、正直に言うとな、君の話を聞く限り、その男はいくら話し合おうとしても理解してくれるタイプじゃなさそうだ。少なくとも、そんな風に行動する理由があるはずだよ」


ウィリアムはまだ考え込んでいたが、最終的には俺に技術を教えることに同意してくれた。二人で午後いっぱいをかけて、その技術の習得に励んだ。さらに、霊輝を威圧感として使う方法も教えてもらった。この技術があの男を威嚇するのに役立つだろう。


そんな風に、この一日が過ぎていった。


夜遅くまで起きてるのはきつかったが、あの本を読み終えなければならなかった。もう少しで終わりだし、今夜で片付けてしまおう。スマホを取り出して、ファイルを開いた。


『レイヴン姫と無名騎士』


物語の中で、姫が杖を手にした瞬間、幼い頃の記憶が蘇った。ここ、この家で本当の家族と暮らしていたんだ。さくやが明かした真実は衝撃的だった。姫は王の秘密の結婚の子供で、それを隠すために連れてこられた。本当の王妃が亡くなった後、正当な王女として迎え入れられたのだ。王を取り巻く嘘と偽りの数々、隠された結婚と子供たち。それでも姫は父を憎むことを選ばなかった。受け入れて、ただ一つの目標に集中した。無名の騎士を追うこと。


最後の目的地へと向かった。全ての王国の最北端、そこでは魔物との戦争が続いていた。無名の騎士と再び共にいたい。その一心で辿り着いた戦場は、まさに混沌と破壊の嵐だった。それでも希望だけは捨てなかった。その希望があったからこそ、無名の騎士をまだ生きている状態で見つけることができた。二人は力を合わせて戦いに挑んだが......


気がついたら眠ってしまっていた。最後まで読み終えることができなかった。


『5月25日 / 7:00』


朝早くから、あの漫画喫茶に再び向かった。待ち合わせていたのはダリオたちだ。ルーシーやアナ、ひかりはまだ何の手がかりも見つけられていないらしい。今日は彼女たちなりに動くようで、俺はあえて口を出さないつもりだ。こっちはこっちでやることに集中する。


遠くにいるダリオを見た。心配というか、むしろ動揺しているようだった。


「どうした?」


ダリオは額に手を当てて俺を見た。動揺のあまり汗をかいているようだった。


「大変な問題があるんだ...」


それを聞いた瞬間、恐ろしい感覚が体を駆け抜けた。良いことを意味するはずがない。


「レイヴンがあの野郎を探しに行っちまった...この手紙を残してな」


レイヴンが残した紙を受け取った。そこには彼女が敵を探しに行くとだけ書かれていた。心の奥で、こんなことが起こると予感していた。


急いでみんなに散らばって周辺を探すよう指示した。俺にはレイヴンを探す方法があった。レイヴンの霊輝を感知するんだ。


目を閉じて、彼女の存在を探すことに集中した。まだ早い時間で日曜日だったが、都心にいることが分かった。あの辺りには多くの人がいた。


その時、遠くでレイヴンの霊輝を感じた…あの野郎と出会った場所よりもずっと向こうで。…なぜあいつがそんな遠くに?


他のみんなに知らせることなく、急いでその場所に向かって走った。走り続けた。レイヴンの霊輝の存在を見失うことなく。


ついに、いくつもの高いビルがある場所に着いた。その建物の間の路地で、レイヴンが壁にもたれて立っていた。俺を見ると驚いたような表情を見せた。


「貴様、何故ここに?」


「それは俺のセリフだ」


レイヴンは何も言わず、俺から視線を逸らした。近づこうとすると、彼女は声を上げた。


「来るなと言っているであろう!我自らがあの狂人を始末するのじゃ」


「馬鹿なことを言うな。お前を守るのは俺だ!」


彼女は手を拳に握りしめた。あまりに強く握ったため、指の関節が白くなった。


「我は弱き者にあらず...我とて戦うことができるのじゃ...」


涙を堪えているのか、彼女の目が輝いていた。


レイヴンのことが理解できなかった。なぜこんなにも一人でやろうとするのか。なぜこうなのか。彼女について何も知らなかった。中二病のせいだと責めたくはないが、それが彼女をもっと知ることを妨げているのは確かだった。


「レイヴン、聞いてくれ。お前のことを知りたい。お前と知り合いたい。助けたいんだ。なぜ俺の助けを拒むんだ?」


彼女は何も言わず、ただ地面を見つめていた。


「ここから出よう、レイヴン。あの狂った野郎に見つかる前に」


レイヴンに手を差し出したが、彼女はただそれを見つめるだけで何も言わなかった。


このままでは彼女を少しでも説得できなければ何も変わらない。彼女は同じように頑固なままだろう。そう思い、レイヴンの手を取って言った。


「行こう!ここはお前がいるべき場所じゃない...」


レイヴンは突然手を取られたことに驚いたような表情で俺を見た。二人の手が繋がれていることに、何と言えばいいのか分からないようだった。


「少しでいいから聞いてくれ、レイヴン。たった一度でいいから、俺に助けさせてほしい。それだけをお前に頼む。頼むから...」


レイヴンの手を離すことなく、頭を下げた。彼女は何も言わず、俯いた顔も見えないが、それでも俺は必死に思いを伝えようとした――『本当に、お前を助けたいんだ』


レイヴンの声が響いて、顔を上げて彼女を見た。


「我は...実はその男と昨日遭遇したのである...」


「なんだって!?」


俺の大きな声にレイヴンはびっくりした。彼女は俺の方を見ていない。


「その男が今日ここに来て戦うべきだと我に告げたのじゃ...我もまた自分の役割を果たしたいだけなのである。なぜ戦わせてくれないのじゃ?我は...弱くありたくないのである...もう弱い者でいたくないのじゃ...」


涙を流し始めた彼女を見て、どう反応していいかわからなかった。ただ抱きしめることしかできなかったが、何かが起こる前にあの男が現れた。


「おいおい、何してるつもりだクソが」


またあの男だ。俺はレイヴンを自分の後ろに隠した。奴は前と同じように、サッと折りたたみナイフを取り出した。


「今すぐその女から離れろ!」


「断る!お前は何様のつもりで彼女の所有者気取りだ」


「貴様も同じだクソが、何様のつもりで彼女に近づく」


この男は本当に口が悪いが、その表情は言葉を反映していない。その空虚な表情だけが俺にはあの男から見えるものだった。


「力ずくでやりたいようだな、ならばそうしてやる」


突然、折りたたみナイフを手に俺に向かって走ってきたが、ウィリアムとの効率的な訓練のおかげでその攻撃をどう防ぐかわかっていた。霊輝の障壁を作り出すことに成功し、瞬時にあの男を弾き飛ばして背中から地面に強く叩きつけた。


「何だと!?...貴様、力を持っているのか?」


「驚いたか?まだ俺ができることを見せてもいないぞ。お前なんて俺にとって脅威じゃない。ここから出て行くべきなのはお前の方だ!」


手に霊輝を込めて前方に放ち、埃と土を巻き上げた。素早くレイヴンと手を繋いで走り出した。追ってくる様子はなかったが、逃げる前に一つ確認したいことがあった。


霊輝を感知した時にできることを思い出した - その霊輝を記憶して距離に関係なく再び見つけることができる。そうやって俺はあの男の霊輝を記憶し、居場所を知って逃げる方法を覚えた。走ってバス停を見つけ、そこに乗り込んで完全にあの男を撒いた。


このバスがどこに向かっているかはわからなかったが、大切なのは彼から逃げることだった。


レイヴンは何も言わずに席に座り、俺は彼女の隣に座った。彼女の表情は苛立ちか、もしかすると怒り、あるいは単に俺にはどう定義していいかわからない多くの感情の混合を示していた。


何も話さず、彼女はただ窓の外を見ていたが、その沈黙の中で突然俺の手を取った。驚いて彼女を振り返ったが、何も言わずに同じ姿勢を保ち、ただ手を繋いだまま何も言わずに未知の場所へ向かっていた。

次回、ついに敵との直接の対峙が迫る。

レイヴンの運命、そしてアレクスの決断が交錯する中で、物語はさらに加速していく。

仲間を守るための選択、そしてレイヴンが見せる「進化」とは――。

待ち受けるのは試練か、それとも希望か。

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